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この先、合流にご注意ください

 全速力で飛行するアイリスの上。

 俺は念話灯を握り締めていた。


「出ない……」


 発信してしばらく経つが、応答はない。

 胸騒ぎが俺を襲う。


「親コルト派は神族を狙っていると言っていました。もしや、ソルヴェルーチェ殿にも刺客が差し向けられているのでは」


 シーラの推測はたぶん正しい。

 おそらく奴らは、国内外で一斉に動き出しているはずだ。


「エルゲンバッハくらい強い奴が他にいたら……ウィッキーとルーチェだけじゃやばいかもしれん」


「護国の英雄ほどの強者がそう多くいるとは考えたくありませんが、最悪の事態は常に想定しておいた方がよろしいかと」


「……急ぐぞ」


 早く合流するんだ。

 もしあいつらに何かあったら、俺は冷静でいられる自信がない。


「場所はわかるんだよな?」


「はい。昨日まで彼女達はメレディス宿場町に滞在していました。王都から約一日の距離にある小さな町です」


「あとどれくらいかかる?」


「この速度なら、あと三十分もかからないかと」


「長いな」


 といっても、アイリスの速度は常軌を逸している。おそらく時速千キロは出ているだろう。俺達が何事もなく乗っていられるのは、守護隊の魔法によるものだった。

 そして、やがて俺達はメレディス宿場町上空に到達する。


「あれは……」


 眼下を見下ろしたシーラは、驚いたように赤い目を見開く。


「なんだ? 遠すぎて見えないんだけど」


「町が……燃えています」


「なんだと」


 遅かったってのか。


「アイリス! 急げ!」


 俺が言い終わる前に、アイリスは急降下を始めていた。

 強烈な下降感を浴びて、町へと着陸する。


「まじかよ……なんてこった」


 メレディス宿場町は壊滅状態だった。

 ほとんどの建物は倒壊し、あるいは燃え尽きている。

 通りには瓦礫と死体の山が散らばっていて、悲惨な光景が広がっていた。


「この死体は王国兵……いえ、親コルト派のようです」


 守護隊はさっそく周囲を検めていた。


「激しい戦闘が行われたようです。住民の死体は見当たりませんね。どこかへ避難したのでしょうか」


 状況を把握するのは大切だ。

 だけど俺の心は、ウィッキーとルーチェが無事かどうかだけを案じている。


「主様。隊長。あれを」


 守護隊の一人が前方を指差した。

 直後、その先から閃光と爆音が轟いてくる。


「行くぞ!」


 俺は真っ先に駆け出した。

 あいつらが戦っているのかもしれない。

 そして辿り着いた街はずれ。

 そこには、死屍累々とした親コルト派の成れの果てと、その中心で背中を合わせて佇むウィッキーとルーチェの姿があった。


「あ。ロートスが来てくれたっすよ! おーい! こっちっすー!」


 ウィッキーがぴょんぴょんと跳ねながら、こちらに手を振ってくれる。

 ルーチェはすこし疲れた表情で笑みを浮かべていた。


 俺は胸をなでおろす。

 よかったぜ。すこぶる元気そうじゃないか。

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