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古いものは捨てよう

 ちょうど円を作るように俺を含め十人の人型の光が浮かぶ。それらはすぐに人そのものに変化する。


「みな揃ったか?」


 長いふかふかの白髭を蓄えた老人が笑い混じりに尋ねる。まるでサンタクロースだ。


「エンディオーネが来てないね」


 誰かがそんなことを言う。


「ほっほ。あやつはまた遅刻か。まあよいわ。主賓はすでに来ておる。さっそく始めるとしようかの」


 俺は神族たちを見渡す。マホさんと同じく、普通の人間と変わらない外見だ。

 マホさんに準ずるなら、みな普通の人間より長生きしているみたいだけど。

 『イヤーズオールドアナライズ』を失ったのは痛いな。クソスキルだと信じて疑わなかったが、なければそれはそれで困る。


「ん?」


 驚いたことに、神族の中に見知った顔があった。

 マホさんじゃない。


「ルーチェ?」


 今ウィッキーと共に王都に向かっているであろう我が家のメイド長も、この場に集っていた。


「や、ロートスくん。まさかこんなところまで来ちゃうなんてね」


 ひらひらと手をふるルーチェ。どことなく気まずそうだ。


「おまえ、神族だったのか」


「うん。黙っててごめんね」


「それは別にいいけど」


 自己紹介の時に神族だと言われても、中二病だとしか思わなかっただろうし。

 するとルーチェが使っていた魔法でもスキルでもない能力は、神族の持つ権能ってやつだったのか。それならなんとなく合点がいく。


「それよりそっちは大丈夫か?」


「うん。問題ないよ。今は疲れて宿で休んでる。夜が明けたらすぐに出発するけどね。あと五日もあれば王都につくと思う」


 普通なら半月かかる道のりをたった一週間足らずで踏破するとは、やっぱりみんなすごいな。

 白髭が大きな咳ばらいをする。


「積もる話もあるだろうが、今はこの会議でしか話せないことを話そう」


 たしかにそうだ。

 といっても、何が何やらって状態だけど。


「小難しい話はなしにしよう。今夜の議題は、ロートス・アルバレスの使命を果たすために何が必要か、ということだろ」


 神族の一人がはっきりと物を言った。


「うむ。その件ならば、すでに答えは出ておる。最高神エストを封印、ないし消滅させるがよかろう」


 エストを消滅させるだと。

 どういうことだ。


「自分は反対だな。ご先祖が命をかけて創り出したものを破壊するなんてとてもとても」


「気持ちはわかるけども、時代が求めるものは常に変化する。太古に創造されたエストは、もはや今の時代にはそぐわない。古臭く、進化の余地がない。今では人間に利用されてしまう始末だ」


「意見は様々ある。多数決には従うさ」


 いろいろとみんな喋っているけど、俺の使命というのはなんだろうか。


「お前さんが戦争を止めたいっていうから、それが議題にあがったんだよ」


 俺の疑念を察してか、マホさんが補足してくれる。


「戦争を止めるために、エストを消さなきゃならないのか。世界の運命を変えるために」


「そういうこった」


 なんとなくわかる気がする。

 おそらくエストが補強する運命は、個人にとどまらないんだ。人類全体の運命を補強するということは、結局世界そのものの運命を補強することにつながる。

 まずはそれを壊さなきゃならないってことかよ。

 話が壮大になってきたな。

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