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戦いが始まろうとしている

「いくぞ。後を追う」


「ご主人様、帰るんじゃないんですか?」


「事情が変わった。あいつを見殺しにはできない」


「あの人たちが……美人さんだからですか」


 拗ねた表情をするサラの額を、俺は軽く小突いた。


「それもあるが、それだけじゃない。あいつは俺の幼馴染だからな」


 いくら神スキルを持っているとはいえ、まだ十三歳の女の子だ。魔法を学んですらいない。勝ち目がないと逃げてくれればいいけど、正義感の強いエレノアのことだ。イキールを助けようと無茶をするかもしれない。いや、確実にするだろう。


「行くぞサラ。行ったり来たり面倒臭くて悪いな」


「何を仰います」


 拗ねた表情から一転、サラはふんすと鼻息を荒くした。


「ボクはどこまでもご主人様のご命令に従います。この首輪に関係なく、一生ついていくと決めてますから」


 そう言ってくれるのはありがたい。

 でもちょっとチョロすぎるな。風呂に入れて良い服を買ってあげただけでここまで忠誠を誓うなんてよ。


 でもそんなものなのだ。奴隷というのは本来、生き物としてまともな扱いを受けないみたいだからな。サラにとって俺は神にも等しき存在なのだろう。


「頼りにしてるぜ、サラ」


「はいっ!」


 俺達はエレノアの後を追いかけ、あのスライムがいる広場の近くまで舞い戻った。

 そして、広場が見える茂みに身を隠す。


「イキールの奴、まだ耐えていたのか」


 ぱっと見た感じ、もうやばそうだけどな。


 広場の状況を見たエレノアの表情が、途端に強張った。


「なによあれ……?」


「スライムだな。あんなでけぇ個体は今まで見たことねーが」


 マホさんは背負っていたグレートメイスを握り、軽々と素振りをすると、白い歯を剥き出しにして構えた。


「こいつが通用するとは思えねぇが、まぁやってみるか」


「マホさん。あれ、さっきの貴族じゃない?」


「あ?」


 苦戦するイキールを見とめて、二人は顔を見合わせた。


「やられちまいそうだな。どうする? エレノア」


「助けるわよ! ここで死なれたら後味が悪いわ!」


「あいよ!」


 おお、かっこいいぞ二人とも。


 エレノアの手に白い光が灯る。魔法を発動しているようだ。


「フレイムボルト!」


 鋭い発声。エレノアの手から火炎で形成された短矢が撃ち出される。目で追うのがやっとの速さで着弾したフレイムボルトは、爆発を起こしてスライムの一部を焼き払った。

 すごい。エレノアの奴、あんな魔法が使えたのか。


「やるな」


 俺が呟くと、サラも小さく頷いた。


「フレイムボルトは誰もが最初に覚える初級の攻撃魔法ですね。威力は大したことないですが、発動が早く連射が利くのが特徴です。魔力消費量も少なく燃費がいいので、上級の魔法使いになっても使い続ける人は多いようです」


「どうした急に解説なんか始めやがって……やけに詳しいなサラ」


「えへへ。奴隷になる前は魔法を研究している機関にいましたから」


「へー。すげ」


 あれか。奴隷商人がワケありとか言ってたことと何か関係があるのかもしれないな。

 まあいいや。どんな事情があろうと、俺にとってサラは大切な従者であることに変わりはないしな。


 また今度聞いてみよ。今はそれどころじゃないし。

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