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四次元ポケなんとか

 それからどうした。


 十数分の後、俺達はカード村からほど離れた小川のほとりに辿り着いていた。

 馬車を下ろし、俺達を降ろすと、アイリスはドラゴンから人間の姿へと戻る。服も元通りになっているあたり、魔力的なサムシングが働いているのだろう。


 それはともかく、馬車はえらく静かである。普通、こんなことになったら中の人間が騒いでもよさそうなものだが。


「誰も乗ってないってことはないよな」


「確かめてみるっすか」


 ウィッキーが怖いもの知らずを体現したかのような勢いで馬車の扉を開く。


「おっと」


 その瞬間、車内から放たれた攻撃魔法がウィッキーに直撃した。あれはたぶんフレイムボルトだろう。

 ウィッキーは危なげなくバリアを張って防いでいた。


「見え見えの奇襲っすね。そんなのに当たるわけないっす」


 ウィッキーすごい。


「くそっ」


 馬車の窓から逃げ出そうとしているのは、やはりというべきかマクマホンだった。


「アイリス、捕まえろ」


「お任せあれですわ」


 窓から転がり落ちたマクマホンは、あっけなくアイリスに捕縛されてしまう。


「はなせ! 小娘が!」


「やめとけ。無駄な抵抗だぞ。アイリスに捕まったら天地がひっくり返っても逃げられないぜ」


「なにを……! 帝国の外交官である私にこのような仕打ち……いくらロートス様とはいえゆるされることではない! 国際問題になりますぞ!」


「しらん」


 なにやら喚いているマクマホンはとりあえず放っておこう。


「ウィッキー。中にサラはいるか」


「いや……なんもないっすね」


「なんだと?」


 バカでかい馬車だから、てっきりあのクリスタルごと載っていると思っていたのに。


「おいマクマホンのおっさん。サラはどこだ」


 俺の問いに、マクマホンの顔が引きつる。


「そんなもの――」


「答えなくていいわ」


 声を遮ったのはルーチェだった。


「彼の首にかかったペンダントがあるでしょ。それ、取って」


 ルーチェの指示に、アイリスが従う。マクマホンの首から毟り取ったペンダントを、アイリスはルーチェへと投げ渡した。


「どうぞ、メイド長」


「ありがとアイリス」


 ペンダントを受け取ったルーチェは、それをじっくりと検めてから、俺の横まで来て見せくれた。


「これはね、マジックアイテムの一種だよ」


「マジックアイテムとな」


「帝国ではマジックアイテムの作成が盛んなの。魔法産業に関しては世界一の技術をもってる」


 なるほど。それが帝国が大国である所以かもしれないな。


「そのペンダントは、何に使うんだ?」


「アイテムボックス。魔法で作り出した疑似空間に、物体を収納できるんだよ」


 ああ。いわゆる四次元ポケなんとか的なやつか。それは便利すぎるな。


「すげぇな。マジックアイテムがありゃ、スキルいらずじゃねぇか」


「スキル至上主義を否定する帝国らしい技術っすね」


「たしかにな」


 ウィッキーも興味津々なようだ。


「じゃあ、あれか。その中にサラが収納されてるってことなのか」


 ルーチェは頷く。

 これは腹が立つ。サラをアイテム扱いしやがるとか、やっぱりマクマホンの野郎はいけすかねぇぜ。


「早く出してやってくれ」


「まかせて」


 ルーチェがペンダントの中心に指を置くと、そこから強めの光が漏れる。

 そして、目の前に巨大なクリスタルがどこからともなく現れた。

 サラが全裸で封じられている、あのクリスタルであった。

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