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セカイ系やん

 マクマホンはにんまりとした笑みを浮かべて、背後の夜道を指した。


「では……いかがでしょう? すこし散歩でもしながら、私の話を聞いてはいただけませんか」


「話?」


 正直なところ、願ってもない申し出だ。帝国とこの男のことを少しでも知らなければならない。

 だが、それを口に出すのはなんか憚られる。


「ま、しゃーねーな」


 俺は後頭部をかきながらテントを出た。


「感謝いたします。さすがはロートス様だ」


 マクマホンは慇懃な態度で頭を垂れるが、それが本心からの行為とは思えない。


「待って。私も行く」


 ルーチェもテントから出てきた。


「ええ。ソルヴェルーチェ嬢も是非」


 そういうわけで、俺達は夜のカード村を歩くことになった。

 こんな夜更けに散歩と洒落込むなんて、この世界の価値観的にも普通じゃないぜ。


「話っていうのはなんだ」


 しばらく黙ったままのマクマホンに痺れを切らし、俺は苛立ちながら切り出した。


「……ロートス様は、この国の現状についてどうお考えであられるか」


「この国の現状? 一体なんのことを指しているのかわからないな。もっと詳しく話せよ」


「王国を中心とするスキル至上主義の社会。スキルに恵まれた者が優遇され、そうでない者は蔑まれる。スキルを持たない亜人などは下等生物と見なされ、迫害され奴隷の身に落とされる。これを、良しとされるか否か」


 マクマホンの大きな目が、俺をじっと見る。


 ふむ。


 まぁ、この世界に生まれてからそういう文化の中で生きてきたからな。スキル至上主義が浸透していることを受け入れられないわけじゃない。

 だけど。


「良いか悪いかで言えば、悪いよな」


 現代日本的感覚でいくなら、生まれ持ったスキルで社会的地位が決定づけられるのはなんとも理不尽に思える。

 いくらスキルが運命によって決まるとはいえ、他人や社会からの扱いまで決めつけられるようじゃやってられない。逆転の目すら出ない可能性もあるじゃないか。


 マクマホンは深く頷く。


「ロートス様ならそうおっしゃると信じておりました」


 歩きを止めず、カード村の外周を進む。


「我が帝国は、そんな現状を変えたいと思っているのです。王国を中心とするスキル至上主義の通念を払拭し、亜人を含む全ての人類がみな平等であれるように」


 なんだと。


 大層な理想を掲げるじゃないか。

 それだけ聞くと、まっとうな主張のようだぞ。


「王国を中心としたっていうけどな……スキル至上主義を広めたのはヘッケラー機関の連中だろう。王国に直接関係があるのか」


「ありますとも。王国と機関は密接につながっております。厳密には、いまの王家は、ヘッケラー機関が置いた傀儡政権です。王家が機関の言いなりなのは、あなたもご存じでしょう」


「だったらなおさら王国より機関を倒す方が先決じゃねぇのか」


 俺の言葉に、マクマホンは歩みを止める。

 そして、ゆっくりと振り返った。


「機関を打倒するわけにはいきません。それは、この世界の破滅を意味するのです」


 真剣な声。冗談を言っているようには聞こえなかった。

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