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鑑定の儀

 異世界に転生した俺は、密かにあることを決意していた。


 もう二度と目立たない。


 それは俺が守るべき戒律のようなものであり、目立ったが最後、また前世のように死神にうっかり間違えて大切な命を刈り取られてしまうかもしれないからだ。


「目立つとろくなことがない。絶対に目立たず生きていくぞ」


 それが転生後の俺、ロートス・アルバレスの口癖だった。

 物心ついた頃からそんなことを繰り返し口にしていたせいか、両親を含め周囲の人間からは変な目で見られることが多かった。


 いや、言ったそばから目立ってるじゃねぇか。


 ということに気付いた俺は、他の子どもたちに溶け込んでいきることを学習した。

 みんなに合わせておけば、一般的かつ平均的な人間になれるだろう。そんな努力が功を奏し、十三歳になる頃にはどこから見ても普通の男の子に成長していた。


 普通の容姿。普通の学力。普通の運動神経。

 ザ・普通。ミスター平均点と呼ばれてもおかしくないほどの完成度だ。


 今日は俺の十三歳の誕生日。

 この世界では、十三歳になると神よりスキルというものが授けられる。スキルは人によって様々だが、与えられるスキルによってこれからの人生が決まるといっても過言ではないらしい。


 というのも、得たスキルによって職業というものが決まるのだ。

 例えば、剣術スキル「ソードブレイカー」を持つ父は職業「剣士」であるし、「神の調理師」のスキルを持つ母は職業「料理人」である。

 ここでいう職業とは、生業のことではなく、それについて非常に得意である、ということを示す称号のようなものらしい。だから父は剣士だけど木こりだし、母は家でしか料理を作らない。まぁ、剣で大木をバッタバッタと切り倒す父も、毎日がフルコースな母も、この世界ではさほど珍しくない存在のようだ。前世では考えられないがな。


 ともあれ、俺は目立ちさえしなければどんなスキルでも構わないのだ。

 だから俺は毎日のように神に祈ったね。

 どうか、目立たなくていいスキルを下さい、と。


「ロートス・アルバレス! 前に出よ!」


 鑑定の儀。


 村にある小さな教会で、それは執り行われていた。

 祭壇に立つ神父の前に、俺はゆっくりと歩みを進める。

 俺の後ろには、総勢百人余りの村人が並んでいる。全て俺の十三の誕生日のお祝いと、儀式の見学の為に集まった人達だ。鑑定の儀には家族や親しい友人が立ち会うものだが、俺の生まれた村は小さく村人全員が家族のような関係であるため、こんなに人が集まったというわけだ。

 まぁ、これは目立つうちに入らないだろう。俺も以前、他の住人の鑑定の儀に立ち会ったことがあるくらいだから。


「それではこれより、鑑定の儀を行う! ロートス、この水晶玉に触れるのだ。我らが最高神エストが、汝に尊い贈り物を授けてくださる」


「わかりました」


 俺は水晶玉に手を置いた。

 まるで澄んだ水のように透明だった水晶に、きらきらと金色の輝きが生まれる。


「これは……」


 俺のスキル。一体何なんだろうか。

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