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反撃開始

「足手まといだなんて……ひどい物言いですわ、マスター」


 こんな時でも、アイリスは微笑みを崩さない。

 押さえていた脇腹の傷は、すでに塞がりつつあるようだ。


「アイリス?」


「なにもお一人で背負い込む必要はありません。最初に申し上げたではありませんか。わたくし達は家族だと。わたくしの愛は、すべてマスターのものですわ」


 背後からアイリスに抱きしめられる。背中に温かく柔らかな感触が広がる。


「わたくしはマスターのおそばを離れません。今マスターをお守りできるのは、わたくしだけですもの」


「なにを……」


 敵のスキルがある以上、アイリスは戦力にならない。それなのに自分の身を危険に晒してまで、俺を守ってくれるというのか。

 俺達のやり取りを見ていたルージュが、手を叩いて笑っていた。


「ははん。泣かせてくれるやんか。強い信頼で繋がった主従って、ステキやん? でもな? そういう関係の男女をみてまうとな?」


 ルージュの声が、途端に暗いものに変わる。


「意地でも引き裂きたくなんねんなぁ!」


 なんだよそれ。

 ギルド長といいルージュといい、人の幸福を壊そうとしやがって。


 だが、やばい。ルージュは槍を構えて一直線に突進してくる。S級の戦闘力を相手に、どうやって戦えばいいのか。考える暇もない。

 アイリスに抱きしめられた俺は、動くことも出来ない。


「ご安心を。相手の力を逆手に取ればよいのですわ」


 どういうことだ。と聞く前に、アイリスの体から閃光が迸る。

 人の姿から、スライムへと変化。不定形のアイリスは俺の全身を薄く覆っていく。


「はっ! スライムやったんかい! ザコモンスターやなぁ!」


 ルージュの刺突が俺の心臓に迫る。


 だが。


 薄く柔らかいはずのスライムの膜が、ルージュの攻撃の衝撃と殺傷力を全て無効化していた。


「なんやて!」


 不気味な手応えだったのだろう。ルージュは慌てて飛び退いた。


「なんや。なにやったんやワレ!」


 そうか。そういうことか、わかったぞアイリス。

 そもそもアイリスのスキルは、他人のスキルをコピーする能力だ。今までずっとアデライト先生の『千変』をコピーしていた。俺に喜んでもらうために人の形をとったと言っていたな。


 だが今は、それを捨てたのだ。

 そして、ルージュの『リリィ・フォース』をコピーし、俺を守る鎧となった。

 アイリス。やっぱりお前はできる子だった。最高だ。


「ルージュだっけ? お前が女でよかったよ。まったく」


「どういうことや」


「動く度におっぱいが揺れて眼福ってことだよ!」


 俺は迷わず前進する。アイリスの鎧に守られている今、ルージュの攻撃など無にも等しい。


「舐めんなやガキがぁ!」


 ルージュの槍が俺の腹を狙うが、当然ダメージはない。

 俺は拳を握り締め、ビキニアーマーならではの丸見えのお腹に渾身のボディを放った。


 インパクトの瞬間だけ、俺の拳からアイリスの鎧が剥がれる。

 防御を一切考えない全力の一撃が、ルージュの鳩尾を見事に捉えた。


 決まったな。

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