表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
179/1001

みんなだけチート

 ルージュは槍の石突で床を打ち、構えをとろうともしない。

 なんだ、あの余裕は。嫌な予感がする。


「はんっ。なんでわてがここに呼ばれたか、わかってないようやなぁ!」


 アカネとアイリスの拳打が、ルージュの丸出しの腹に叩き込まれた。

 だが。


「しゃあァッ!」


 気合と共に振るわれたルージュの槍が、二人をいとも容易く弾き飛ばしたのだ。

 なんだと?


「フリジット・メガキャノン」


 直後、セレンの魔法が発射される。『ロックオン』によって必中となった上級魔法が、攻撃後の隙を晒したルージュに直撃。轟音。周囲に盛大な結晶をまき散らす。


 流石にこれは効いたはずだろ。

 だが次の瞬間、俺は自分の目を疑った。


「効いてないのか……?」


 確かにみんなの攻撃は直撃したはずなのに、ルージュは涼しい顔で一歩も動いてはいなかった。 


「なんじゃあの手応えは! 普通ではないのじゃ!」


 アカネの上腕は出血していた。かなり深い傷だ。


「わらわの『恵体剛力』に傷を負わせるとは……S級、これほどのものじゃったとは」


 まさかアカネが劣勢? そんな馬鹿な。


「なかなか不思議なスキルですわね」


 アイリスも右の脇腹に傷を負っている。赤い血が出ているところを見るに、痛手なのだろう。スライムでも血は赤いんだな。人に化けているアイリスが特別なだけか。

 ルージュはというと、完全に無傷であった。


「まぁ、こういうことやわ」


 どういうことだよ。


「なんやそのアホ面は。全然わかってないよーやな。しゃーないから教えたるわ」


 なにをだよ。


「わてのスキルは『リリィ・フォース』いうてな。女からの攻撃を無効化するねん」


「女からの攻撃を?」


「せや。人間やろうと亜人やろうとモンスターやろうと、女の攻撃は一切効かんのや。つまり、無敵ってことやな」


 なんてふざけたスキルだ。そんなんがS級なのかよ。


「ふはは。これはまさしく、形勢逆転というやつに違いない」


 ギルド長が大声をあげる。


「ロートスよ。貴様の仲間がみな女であることは調べがついておるのだ。それも、美女、美少女ばかり様々なタイプのな。まったく、けしからん」


 ギルド長の顔が、怒りと妬み、そして嫉みに歪んでいく。


「貴様のような羨ましいやつは、死んでしまえばいいのだ」


 殺意の理由おかしいだろ。気持ちは分からんでもないけど。


「ま、そういうことや。悪いけどこれも仕事やからな」


 ルージュが槍を振り回し、切っ先を俺に向ける。


「いかんぞ! わらわ達ではロートスを守り切れん!」


「マスター。ここはお逃げください」


「馬鹿言え。俺がいなかったら、誰があいつと戦うんだよ」


「あなただけじゃ勝てない」


 みんなの意見ももっともだ。


 けど、ここで退くわけにはいかんだろう。

 どうせ俺は不死身なんだ。いくら死んでもかまわないんだよ。


「サラとルーチェの居場所を聞き出すまでは退く気はねぇ! ここは俺がなんとかするから、みんなこそ逃げろ!」


「ですがマスター」


「足手まといだってんだよ! いいから行け!」


 正味の話、あの『リリィ・フォース』を相手に女がいたら不利になる。

 ここは俺だけでやるしかねぇ。


 俺だけの力で、立ち向かわないといけない時がやって来たってことなんだよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ