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まだ続くよ

「運命を補強する? なんだそりゃ」


 補強というからには、もともとあるものを強化するってことなんだろうけど、そんなことをする必要があるのか。


「もとより人は、自らの行いによって運命を変える力を持っとるのじゃ。そりゃそうじゃの、そもそも運命とは自分の行動が決めたものなのじゃから。行動によって変えることができて当然と言える。しかしじゃ、そこに神の介入があったとしたら、どうなると思う?」


「ああ。そりゃ変えるのは難しいだろうな」


 俺はなんとなく納得する。


「そういうことじゃ。神によって運命が定められているように感じる所以もそこにあるのじゃよ。鑑定の儀において、剣術のスキルと『剣聖』の職業を手に入れたらどうする? その者はまず間違いなく剣の道に進むじゃろう。魔法なら? 建築なら? 料理なら? 指揮能力ならどうじゃ? それぞれ自分のスキルを最大限活用しようとする。それはある意味、運命に縛られているとも言えるのではないか?」


 馬車の中は束の間の沈黙に包まれる。皆それぞれ考えを巡らせているようだ。


「それが本当だとして、神は何故そんなことを?」


 セレンが当然の疑問を漏らす。


「そういうものじゃから、としか言いようがないのぅ。神は意思を持たず、ただ己の役割を遂行するだけの存在じゃ。神とは、力の働きを示す言葉に過ぎん。言ってしまえば、自然現象と同じなのじゃ」


 何か目的があってやっているわけじゃないってことか。

 だがその影響力は凄まじい。スキルのおかげで力や財産、社会的地位を手に入れる人がいる反面、スキルのせいで周囲から蔑まれ、疎まれ、不幸に叩き落される者もいる。


 ふむ。

 しかしどうだろう。


 エレノアは『無限の魔力』という最強のスキルを持ち、『大魔導士』という恵まれた職業だ。社会通念の上では、栄光は決まったも同然。バラ色の人生が約束されている。だが、あいつはアイリスと出会ったことで挫折と苦悩の日々を送っている。


 逆に、俺なんかはクソスキルばっかりたくさん手に入れて、最弱劣等職の『無職』になった。けれど、美少女に囲まれ、なおかつ眼福おっぱい星人だ。このスキル至上主義の社会では、もっと不幸になっていてもいいはずなのに。


「本題に入ろうかの」


 アカネがこれまでよりも真剣みを帯びた張りのある声で言う。


「ピストーレの坊やは、この仕組みを利用して世界を意のままに操ろうとしておるのじゃ。人が運命に逆らえぬのをいいことにの。まったく、けしからんガキじゃ」


 たしかにけしからんな。クソ野郎にもほどがある。だが、いつの世もどの世界にも、世界征服を狙う輩はいるもんだ。


「すこし気になったんだけどよ。運命を操るって、どんな運命だったらそんなスキルが手に入るんだ?」


「そこまではわかっておらん。じゃが、奴のスキルが先天的なものではないのは確かじゃ。世界の真実を知り、人の身を捨てることで手に入れたスキルじゃろうな」


「ウチの『ツクヨミ』も後から付与されたスキルっすけど……そういう感じなんすかね」


「『ツクヨミ』も大概ぶっとんだスキルじゃが、坊やのあれとは異なっておる。そも、『ホイール・オブ・フォーチュン』はその他のスキルとは根本的にものが違うのじゃ。スキルと呼んでいいものかも怪しいの」


 なるほど。つまりは、チートだな。まさにイカサマだ。

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