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エレノア、怒る

 俺は思わず首を竦める。


「ご主人様? どうなされました?」


「いや……」


 できれば彼女には見つかりたくない。

 別に見つかってもどうということはないけど、怒られるのは確実だろうからな。なんで黙ってたのって。


 俺は人垣の隙間からエレノアを覗き見る。彼女は勇ましくもイキールの前に歩み寄っていた。


「学園に入学した以上は、学園の規則に従うべきじゃないの。それができないなら、今からでも入学を取り消したらどう? 貴族だからってなんでもかんでも思い通りにできると思わないことね」


 おお。エレノアつよい。


 周囲は騒然となっていた。とんでもない美少女がいきなり登場である。そして、傲慢な貴族に物申している。これが湧かずにいられるか、ということだろう。


「なんだねキミは。急にしゃしゃり出てくるとは不愉快だな! いま僕は先生と話をしている。無粋な横槍はやめたまえ!」


「何をえらそうに。あなたのせいで新入生全員が迷惑しているのがわからないの? アデライト先生だって困ってるじゃない」


「ふん。僕は貴族だからいいのだ。下の人間が上の人間に合わせる。それが世の理だろう」


「なんですって?」


 エレノアがきっとイキールを睨みつけた。


「なら言わせてもらいますけどね。私のスキルは『無限の魔力』。職業は『大魔導士』よ。これでも私があなたよりも下って言うつもり?」


「なに……?」


 エレノアのスキルと職業を耳にしたイキールは、途端に表情を引きつらせた。周りの新入生たちもどよめく。当然だ。エレノアのスキルはマジでやばいのだから。


「キミは、どこぞの貴族かい? 見たところ平民の装いをしているが」


 エレノアの服装は藍色のワンピース。それなりに上等なものだが、貴族が着るほどのものではない。


「いいえ。アインアッカ村出身の、正真正銘の平民よ」


 一つも恥じることなく、エレノアは強く言い放った。


「なるほど。まぁ、それほどのスキルならすぐに陛下より爵位を賜るだろう。キミが貴族になる日を楽しみにしていようか」


 それきりエレノアに興味をなくしたのか、イキールはアデライト先生に向き直る。


「悪かったね先生。今回はこのお嬢さんの美しい顔を立てることにするよ。さぁ、話の続きをどうぞ」


 とんでもないドヤ顔だな、イキール君。


「はーい。どうもありがとー! それじゃあ説明を続けまーす」


 引き続きアデライト先生が試験内容を事細かく話していく。

 しかし、すでに俺の耳には先生の話は入っていなかった。


 なんというか。イキールもエレノアも、あんなに目立っちゃって大丈夫なんだろうか。もうすでに新入生全員に名前とスキルを覚えられたぞ。いいのか?


 いや、それこそがイキールの狙いだったのかもしれない。自らの地位と力を見せつける。貴族には箔が必要だ。

 エレノアの叱責で素直に引き下がったところを見るに、すべて計算づくなのかもしれない。自己顕示欲が強いのは間違いなさそうだが。 

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