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都合のいい女

 振り返ると、シーラ達はこの部屋から脱出できたようだった。よっしゃ。


 と、喜ぶのも束の間。

 武器が一斉に射出され、俺に迫り来る。すごい量の武器だ。


「うおお!」


 俺はとにかく走った。どう見ても避けきれる数じゃないが、絶対に避けてやるという強い気持ちで広い部屋を走りまくった。

 意外と回避は成功していたが、一振りの剣が俺の心臓を貫き、確実に絶命させた。


(ふーむ。どうにもわからないね。間違いなく、いま死んだはずだけど)


 倒れた俺の胸に刺さった剣はいつの間にか消えてなくなっており、俺はやっぱり無傷でそこにいた。

 自分でもわからない。どうして俺は生きているのか。


 まじで分からないのだ。スキルが発動している風でもない。

 だけどこれは嬉しい誤算だ。時間を稼ぐにはもってこいじゃないか。


 とりあえず立ち上がろうとする。すると、ズタズタになった俺の服の裂け目から、拳大の何かが床に落ちた。ひとりでに光って振動しているこれは、念話灯。実は機関に忍び込む時に懐に忍ばせていたのだ。


 光って震えているということは、着信か。

 電話がかかってきたら出ないとな。俺は反射的にそれを耳に当ててしまう。


『おお! ロートスか。今どこをほっつき歩いておるんじゃ。屋敷を訪ねてもおらんというし……うちの坊ちゃんがおぬしと遊びたいとごねておるのじゃぞ』


 おいおい。なんてタイミングだよ。


「今それどころじゃねぇんだ……」


『なんじゃ、忙しいのか?』


「死にかけてる。つーか、何回も死んでる」


『ロートス。今どこにおる?』


 急に神妙になったアカネの声に、俺は殊勝にも真実を打ち明ける。


「ヘッケラー機関のアジト。臨天の間ってとこだ」


 もうどうにでもなれ。最後に情報を漏洩させてやるぜ。


『あいわかった。少々待っておれ』


 それを最後に、通話は切れる。


 待っていろだと? 助けにでも来てくれるのか?

 無理に決まってる。こんな空の上に、どうやって来るというのか。


 直後。臨天の間の壁が猛烈な勢いでぶち破られた。凄まじい破壊音。粉塵が舞い、瓦礫が飛び散っている。


「待たせたの。ロートス」


 ぽっかりと空いた壁の穴に、のじゃ美女モードのアカネが立っていた。

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