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一瞬ビビった

「……参ったな」


 頭がついていかない。

 ただ、プロジェクト・アルバレスが機関でも重要な計画だったことを考えると、俺に対するこの扱いもわかるかもしれない。


「待て……まさかお前」


 フェザールが立ち上がる。

 すると、喋っていたローブの女も立ち上がり、頭を覆っていたフードを外した。


 白金のような艶やかなポニーテール。瞳は燃えるような紅。陶磁器の白い肌は、どこか妖精のような雰囲気を醸し出していた。

 すぐさま『イヤーズオールドアナライズ』を使う。

 だが、何故か発動しない。なんでだろ。


 フェザールが震える声を紡ぐ。


「シーラ……!」


 うそやん。


「パパ。ロートス様を連れてきてくれてありがとう。おかげでやっと、自分の使命を果たすことができるわ」


「ああ、そうか。アルバレスの守護隊。お前は……そうだった。そういうことか」


 え、どういうこと。

 なにがなんだかわからない。皆目見当もつかん。


「シーラ……『ツクヨミ』の中で何があったかは知らんが、父の知らぬところで立派に成長していたようだ。さすがは俺の娘だな」


 フェザールとシーラはにこりと微笑む。親子の再会である。

 たぶん感動の再会なんだろう。

 俺には一切の事情が不明だから、よくわかんね。


 まぁいい。俺には俺の事情がある。

 俺はシーラを観察する。この子がフェザールの娘さんで、サラの担当だった研究員か。


 大体十七、八歳くらいだろうか。すらっとした長身で、美少女というよりは美人と形容した方が適切なくらいの色気だ。おっぱいは、良くも悪くも平均くらいだけど。


 俺は口を開く。


「シーラ」


「はっ」


「頼みがある」


「なんなりと」


 シーラは再び跪き、頭を垂れた。


「サラとウィッキーっていうマルデヒット族の姉妹を覚えてるか。ここに実験台にされてたらしい」


「はい。憶えております。サラはあたしが担当しておりました。ウィッキーは別の者が担当しておりましたが、スキル『ツクヨミ』を手に入れ、我ら守護隊の精神を次元の狭間に閉じ込めてしまった。不覚を取りました」


「ここにいるのがウィッキーだ。こいつを恨んでいるか?」


 俺はウィッキーのフードを外す。ウィッキーは驚いていた。


「……正直に申し上げれば。彼女のせいで我らは使命を果たせずにおりましたから」


「今すぐ許せ」


 俺の言葉に、シーラは顔を上げる。

 ウィッキーも驚いたように俺を見ていた。


 この場合、俺の頼みは機関のトップに会わせろというのが妥当だろう。だがそれよりもサラとウィッキーの仲直りが先決だ。俺にとっちゃそっちの方もちゃんと大事なのだ。


「ロートス……」


 ウィッキーが感極まったような声を漏らしている。


「ご命令とあらば、恨みを忘れます」


「それでいい。それからシーラ。サラはお前のことを慕っていたようだ。お前に『ツクヨミ』を食らわせた実の姉に二度と会いたくないと言うくらいにはな。だから、姉妹の仲を取り持ってほしい。仲直りさせる手助けをするんだ」


「仰せのままに」


「よし」


 これでいい。一つ懸念が減ったな。

 やったぜ。

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