魔法学園に入学だ
「次の方、どうぞ」
そんなこんなで、俺の番が来た。俺はカウンターの前に立つ。
「あ、すみません。手続きは従者の方ではなく、ご本人がお願いします」
「へ?」
なんということだろう。
どうやらサラが新入生で、俺が従者だと思われているらしい。
「あ、そっか。ボクの格好……」
サラの服は高級品。それに比べて俺の装いは綿のズボンとシャツのみ。どう見ても田舎者だ。確かにこれでは、逆に思われても仕方ない。
けど、なんとなく癪だな。
「俺がご本人だ。なんか文句あるか」
「あ、そうだったんですか。すみません。私はてっきり……」
「ああ、いや。分かってくれたらいいんだ」
こんなことで騒ぎを起こしては目立ってしまう。穏便に済まそう。
「では改めて。ご入学おめでとうございます」
事務員の女性は丁寧に一礼する。
「学籍情報を登録しますので、この魔水晶に触れてください」
「わかりました」
俺はカウンターの上の水晶玉に触れる。鑑定の儀でお世話になったものによく似ているが、こちらの色は濃い紫である。
「これは……」
魔水晶が光り、俺の情報を吸い上げていく。
「氏名、ロートス・アルバレス。性別、男。年齢、十三歳。出身、アインアッカ村。スキル、んん? え? なにこれ? 多すぎ……? 一体幾つあるの? ええっと……職業、『無職』……『無職』ぅ!?」
俺の情報を読み上げていた事務員が、素っ頓狂な声を上げた。
「ええ、どういうこと? 王国の最高学府である魔法学園に『無職』って、なにかの間違いじゃないの? こんなことあるわけない……」
「よせ。そこまでだ」
これ以上俺をディスるのをやめろ。周りの注目が集まってきてるだろ。
「終わったらもういいだろ。もう行くぞ」
「あ、はい……」
唖然とする事務員をよそに、俺はサラの手を引っ張ってその場を離れる。
登録を終えた新入生達は講堂の外に集まっており、俺はその中に紛れ込んだ。
「さっきの人、失礼でしたね。ボクの敬愛するご主人様のことを『無職』『無職』って。ほんと腹が立ちますよ」
「お前も人のこと言えないけどね」
「ボクはいいんです! ご主人様をお慕いしていますから!」
ああそうかい。
まぁそれはちゃんと伝わっているよ。サラを買った日から毎晩、入浴シーンを見せてくれてるからな。見るだけだけど。
「ところでご主人様。クラス分けの試験って何なんですか?」
「ああ、入学のしおり見てみるか」
俺はろくに読んでいないしおりを開く。どうやら学年のクラスは能力によって五つのクラスに分けられるらしい。
最上級のスペリオルクラス。
上級のマスタークラス。
中級のエリートクラス。
下級のベースクラス。
最下級のボトムクラス。
入学時の試験によってどこに入るかが決まり、進級時に一年の成績を考慮して上がったり下がったりするようだ。
「どんな試験なんだろうな」
「気になりますよね」
試験の項目を見ると、そこにはこう書かれていた。
「詳細は当日試験官から説明があります。だとさ」
「じゃあ、試験の内容はみんな知らされていないんですね」
「みたいだな」
公平でいいじゃないか。ま、俺はどうせ最下級のボトムクラスだわ。
あ、でもそれだと逆に目立つから、やっぱり下級のベースクラスあたりを狙えたらいいかな。




