火より蘇る不死鳥の如く
死。
俺の頭にその一文字がよぎる。
こんな面制圧みたいな炎を避けられるわけがない。
俺は確実に死ぬだろう。
危機的状況に陥り、俺の視界はスローモーションみたいにゆっくりになる。べつにスキルじゃない。これは元来人間が持つ潜在能力のようなものだ。
だからといって何ができるわけでもない。
俺は微動だに出来ないまま、猛火を一身に浴びることとなった。
熱い。熱すぎて、逆に熱くないかもしれない。
圧倒的高温に晒された俺の肉体は、瞬時にして燃え尽き、炎もろとも消滅する。
だが。
「ほう……? 今のを防ぐか。とっておきだったんだが」
男は感心したように俺を見上げる。
防いだ? 俺が?
確かに俺の体は無傷だ。いや、さっき燃え尽きたはずだぞ。そんな感覚もあった。
実際は、着ていた服だけが灰となってなくなっていた。
どういうことだ? いや、本当にわかんない。
俺は全裸で仁王立ちをしたまま、ヘッケラー機関の男達を見下ろす。
背後ではエルフ達が騒然となっていた。
「今のが人間の魔法だと?」
「我らエルフの攻撃魔法の威力にも匹敵するぞ……!」
「いや、人間ごときがあれほどの魔法を連発できるはずがない」
どうやら目の前の男はエルフも恐れるほどの実力者らしい。あの男が率いる連中が同じレベルなら、これはまじでやばいんじゃないか。
「しかし、あの魔法を正面から受けて無傷とは……あの男もただものではないナリ」
「た、確かに……」
「本当に加勢をしてくれるというのなら、大いに助かるナリね」
なんか、副長からの株が上がっている気がする。
俺、全裸だけどいいの?
「ロートス! ちょっと! 服! 服はどうしたのよ!」
エレノアが喚く。これが少女の反応だよな。
だが、この状況は好都合だ。
「今のでわかったろ。あんたの攻撃は通用しない。今日のところは大人しく退いたらどうだ?」
完全にはったりだが、今はこう言うしか他に方法がないように思えた。
「そうはいかない」
だめだった。
「先程オレは言ったね。ヘッケラー機関だと。我々にとって自らの所属を明かすということは決意の表れ。いわゆる儀式みたいなものだ。所属を明かした以上、知った相手は必ず殺す。根絶やしにする。それがヘッケラー機関の理念なんだよ」
クソだな。
そういえば、ウィッキーと初めて会った時も所属を明かしていたな。ヘッケラー機関の刺客でーすって。あれってそういう意味で言っていたのか。
さて、ここからどうすればいいかな。




