表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
134/1001

万事休す

「あ、あなたは……?」


 慌てて俺から離れたエレノアが、幼げなエルフを見る。


「あっしはオーサっていうでやんす! 人間を捕らえたっていうから見にきたでやんすよ。ん~、実に尊いでやんすね!」


「尊い? そうかしら?」


 エレノアが俺を見る。

 知らん。


 俺は咳払いをして、考えながら口を開く。


「えっとな、オーサちゃん。俺はロートス。こいつはエレノアっていうんだ。よろしくな」


「ロートスにエレノアでやんすね。よろしくでやんす!」


 オーサは無邪気な明るい笑みを咲かせる。ぱっと見サラよりも幼く見えるが、たぶんエルフだからもっと年上なのかもしれない。

 ああ、やっぱりそうだ。『イヤーズオールドアナライズ』によれば、オーサは四百五十二歳。まじかよ。


「なぁ。実は俺達から頼みがあるんだが」


「なんでやんす?」


「ここから出してくれないかな?」


 オーサは他のエルフに比べて好意的に接してくれている節がある。ちゃんと頼めば解放してくれる可能性はゼロではない。


「それは無理でやんす」


 無理だった。


「そこをなんとか!」


「無理なものは無理でやんす。エルフの掟はオリハルコンより固いでやんすよ」


 ふざけやがって。

 そもそもエルフのくせに語尾にナリとかやんすを付ける時点でどうかしている。まるで納得がいかねぇ。許せねぇんだよ。


 けどそんなことを言っても仕方ない。俺は頭をフル回転させる。


「俺達はエルフに危害を加えに来たんじゃない。それは信じてくれるよな?」


「ん~、そうでやんすね。信じる要素もないし、信じない要素もないでやんす。だから捕えておくのが安定でやんす」


「いや、俺達を解放してくれたら、エルフの役に立つことをしよう。それなら解放した方がメリットがあるだろ?」


「ん~?」


 頼む。聞き入れてくれ。


「大変だ!」


 そんな時、遠くで大きな声が聞こえてきた。危機感を孕んだ声色。


「人間が攻めてきたぞ!」


 なんだって?


 俺とエレノアは揃って顔を見合わせた。


「ロートス、どういうこと?」


「わからん」


 そんな俺達を交互に見比べて、オーサは青い瞳を細くする。


「あんたらの差し金でやんすか?」


「そんなわけないだろ」


「私達は何も知らないわ」


「ん~、それを信じろって方が無理があるでやんすね」


 そりゃそうだ。


 こんなタイミングで人間が攻めてきたっていうんなら、絶対俺達を疑うに決まってる。誰だってそうする。俺だってそうする。


 くそ、どうしてこんなことになっちまうんだ。

 万事休すだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ