めっちゃええ子やん
「んー? ロートスじゃないっすか。どしたんっすか? 先輩ならまだ帰ってきてないっすよ」
開口一番、ウィッキ―がきょとんとした顔でそんなことを言う。
ホテル・コーキュー。
訪れた俺とセレンを交互に見て、ウィッキ―は首を傾げていた。
「今日は先生じゃなくて、お前に会いに来たんだよ」
「ウチに?」
「ああ。魔法を教えてもらえないかと思ってな」
「いいっすけど。またどうしてっすか?」
「アデライト先生は忙しいだろ? それに、お前は先生にも負けない魔法の使い手だ。少なくとも俺が知る中では、先生と同じくらいすげぇ奴だし」
「……そんな風に言われると、なんだか照れるっすね」
ウィッキーは頭に上にある猫のような耳をぴこぴこ動かして、にへら~と笑う。
その表情を見て、俺はサラを想起した。こういうところを見ると、やっぱり姉妹なんだなぁと思う。
サラもあと数年したら、ウィッキーのような巨乳になるんだろうか。
楽しみでならん。
「獣人?」
セレンはウィッキーの猫耳を見上げて、ほんの僅か目を大きくしていた。
「あ……しまったっす」
訪ねたのが俺だったから油断していたのだろう。ウィッキーはいつものローブを羽織っていない。もちろんフードもないので、マルデヒット族だと丸わかりだった。
「あー、セレン。こいつはサラの姉ちゃんで、アデライト先生の後輩でもあるウィッキーだ」
「はじめましてっす……」
気まずそうに挨拶をするウィッキー。猫耳はぺたんと寝てしまっていた。
セレンはひとしきり猫耳を凝視した後、ロボットのような首の動きで俺の方を向く。
「あなたの従者の子も、獣人?」
「ああ。そうだ」
獣人はスキルを持たないが故に、スキル至上主義の人間社会では奴隷扱い。その社会通念はセレンも持っているだろう。
アデライト先生がハーフエルフだったことにはそこまで反応していなかったが、今回はどうだろうか。
「ウィッキーはすごいんだぞ。獣人なのに『ツクヨミ』っていうスキルを持っててな。これがマジで強力なんだ。一回食らったことがあるけど、俺じゃなかったら一発終了だったぜ」
なんか早口になってしまった。
セレンは俺をじっと見つめたままだ。
「杞憂」
一言の後、再びにウィッキーに視線を移すセレン。
「セレン・オーリス。よろしく」
「あ、うん。よろしくっす」
教えを乞われたウィッキーの方が戸惑っている。なんじゃこりゃ。
まぁ、偏見がないってのはいいことだよな。差別は悲劇を生むだけだ。
「とりあえず中に入るっすよ。魔法を教えるのは、お安い御用っすから」
「サンキュな、ウィッキー」
先生がいない間に中に入るのはどうかと思ったが、別にいいだろ。




