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エレノアは超有名人

 次の日から俺とセレンは、放課後に魔法の自主訓練を始めた。

 授業で習ったことを復習するのもそうだが、もちろんそれだけじゃない。さらに高度な魔法を使えるよう、座学にも実技にも力を注いだ。


 ある日、図書館で魔導書とにらめっこをしていると、セレンの淡々とした声が耳朶を打った。


「思いついた」


 やはり平坦な声だが、なんとなく弾んでいるようにも聞こえる。


「なにを思いついたんだ?」


「ハナクイ竜に遭った時、一緒に戦った子」


「エレノア?」


「そう」


 あいつはイキールと口論したりアイリスと決闘したりで学園の有名人だからな、セレンも顔と名前は把握している。


「あの子に教えてもらうのがいい」


「え」


「同じ学年で彼女ほどの魔法の使い手はいない」


 それは否定しないが。


 俺は返答に困る。


「……それなら、普通に先生に教えてもらった方がいいんじゃないか?」


「アデライト先生は調査で忙しいはず」


「いや、他の先生もいるだろ」


「それはいや」


 なんでだよ。


 アデライト先生へのこだわりがすごいな。ハーフエルフだということで嫌ったりしていないのはいいことだ。


 俺は頭を抱える。


 今更エレノアと顔を合わせるのは非常に気まずい。だからといってセレン一人で行って来いというのも不自然だし。


 いや待て、いるじゃないか。他に適任が。


「心当たりがある。アデライト先生の後輩で、魔法合戦で互角に渡り合う魔法使いを知ってるんだ」


 セレンが首を傾げる。


「一度会ってみるのはどうだ? たぶんエレノアよりすごい奴だぞ」


「あなたがそこまで言うなら」


「決まりだな」


 あとでウィッキーのところに行ってみよう。あいつなら喜んで協力してくれるだろう。エリクサーを手に入れるのは、あいつの為でもあるんだから。


「ところで」


 セレンが続ける。


「あなたはあのエレノアっていう子と、知り合い?」


「ん。まぁ知り合いって言うか、同郷っていうか」


 なんと説明したもんかな。幼馴染っていうと紹介しろって話になるかもしれないし、適当にお茶を濁しておくのがベストか。


「同じアインアッカ村ってところから来たんだよ。『無職』の俺と『大魔導士』のあいつじゃ、接点なんてないも同然だけどな」


「……そう」


 セレンはなんとも思っていないような感じだ。

 すこし間があったのは意味があるのだろうか。


「とにかく、区切りの良いところで終わろう。教えてくれる奴のところに案内する」


「わかった」


 そうして俺達は、再び本の虫になったのだ。

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