死神転生
勘違いしてほしくないのは、俺は罪を犯したわけでも、これから罪を犯すつもりも断じてないということだ。
ただただ目立つことが好きで、生活の中であえておもしろおかしい振る舞いをしてみたり、学校行事でもあれば必ず先陣を切ったりしていた。
俺にとって目立つということは、いい意味にしろ悪い意味にしろ承認欲求を満たしてくれる一つの手段であったのだ。
今思えば、それがいけなかったのだろう。
目立つことのデメリットをまったく考えていなかったのだから。
「ごめんなさーいっ!」
目の前では黒いレオタード姿の少女が見事な土下座をかましていた。煽情的な服装ではあるが、その体つきは幼女のそれであり、なんともアンバランスな少女である。なんといっても彼女が抱えている身の丈以上の大鎌は、まさに死神が持つような凶悪な存在感を醸し出していた。
「うっかり殺す人間間違えちゃいましたーっ!」
どうやらこの少女は本物の死神で、仕事上のミスをやらかしてしまったらしい。
改めて、俺は自分の姿を見る。
交差点の真ん中でバラバラになった体は、紛れもなく俺のものだ。大型トラックに轢かれたのは憶えているが、ここまで酷い有様だとは。
つまり、いま半透明でふよふよ浮いている俺は確実に幽霊だということだ。
「ふざけんな!」
思わず叫んでいた。
うっかりで殺されるなんてあってはならない事態だろう。マジでキレそうだ。
「どうしてくれんだこのクソガキが!」
「うう。ごめんなさーい!」
「ごめんで済んだら異世界転生はいらねぇんだよ! 俺を今すぐ異世界転生させろ!」
「え? そんなことでいいんですか? よかったー。おにいさん優しいね!」
うるせぇ。
死んじまったものはしょうがないんだ。失った命はどうあっても戻ってこない。
だったら、異世界に転生して第二の人生を歩むしかないだろうが。
「いいから早くしろ。チート能力マシマシでな!」
「はーい! それっぽい異世界に一名様ごあんなーい!」
死神幼女はまがまがしい大鎌を振りかざし、霊体である俺の首を綺麗に刈り取った。
え。こんな転生の仕方なのかよ。まぁ痛くないからいいけど。
こうして俺は、チート能力と共に異世界に転生したのだった。