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第7話:魔性の女【あこ】の小動物ムーブ。


「よし、もうすぐ商店街だよ。意外と大丈夫なもんでしょ?」


「う、うん……」


 ルキヤはまだ人目が気になるのか周りをきょろきょろしながら俯き加減に私の隣を歩く。


 握る手に力が入っている。

 うっすらと汗をかいているのが、掌はじっとりした感覚があった。


 ……手汗かいてるの私の方じゃないだろうな?


 そう心配になるくらい、私は今ドキドキしてる。

 ルキヤが私の手をぎゅっと握って、一緒に歩いている。

 これって普通に考えたらデートじゃん。

 どう考えても付き合ってる二人だよね?


 ……でもそうじゃないんだよなぁ……。

 なんだかちょっとだけ切ない。


 私の手を握っているのはルキヤじゃなくてあこちゃんなのだ。


 くっそう……絶対私に夢中にさせてやるからな。


「靴屋が見えて来たぞ。あまり高くないやつでいいのが見つかるといいね」


「うん。そうだね……あっ」


 急にルキヤが私の後ろに隠れるような動きをしたので何かと思ったら……。


「あっれー絵菜じゃん。こんなとこで何してんの?」


 あー。そういう事か。

 私に声をかけてきたのはクラスメイトの多田浩二(ただこうじ)。タダコーというあだ名で呼ばれてるお調子者だ。


 始めて遭遇するクラスメイトとしてはかなり面倒な奴なのは間違いない。


「ん、ちょっと買い物にね」


「……おまえ、その後ろの子は友達か? あまり見ない子だけど違う学校?」


 うるさいなぁ。せっかくその気になってきたルキヤが怖がっちゃったらどうする気なんだよ。


 こんな所でしり込みされたら私の計画が丸潰れだぞ。


「……おいおい嘘だろ?」


 私の背後を覗き込むようにタダコーがルキヤに興味を示した。


 ここは無理矢理にでも話を打ち切るべきかもしれない。


「あー、私達急いでるからさ、悪いけどまた今度……」


「……やばい、超可愛いじゃんか! 誰だよおいおい! お前にこんな可愛い友達がいたなんて聞いてないぞ! あ、俺多田浩二って言います! 絵菜のクラスメイトで、その、仲良くしてください!!」


 タダコーが急に緊張したような面持ちでルキヤにお辞儀しながら手を差し出した。


 握手を求めると言うより、アレに似てる。

 テレビでやるお見合い企画とかで、よろしくお願いします! って言いながら手を差し出すやつ。


「……え、やだ……」


 ルキヤは私の後ろから顔を半分くらい出して、タダコーを即振りした。


 思わず私は盛大に噴き出す。


「はははっ!! ひーっひっひっ!! フラれてやんの! タダコーの癖にあことお近づきになろうとか身の程わきまえろボケ!」


「なっ、ひでぇ……俺本気で一目惚れだったのに……お願い、友達からでいいから! 仲良くしてよ。ほら、絵菜とも仲いいからさ、安心安全だよ!?」


「別に仲良くなんかねぇし。お前が自称学生全員と友達、って言ってるだけだろ」


 タダコーは私に、余計な事言うんじゃねぇよ! といいたいらしく悔しそうに私を睨む。


「生憎とわたしはあこと買い物があるから、それじゃな」


「そ、その子はあこちゃんって言うんだな? ま、また会えるかな? ……いや、ここで引き下がったら男がすたる! 頼む! 俺も買い物に付き合わせてくれ! むしろ奢る! 買いたい物があるなら奢るから!」


 ……マジかよ。

 確かにタダコーは惚れっぽいところがあるし、クラスの女子にも何人か声をかけて玉砕してるところを見た事があるような阿呆だけど、ここまで必死になったところを見るのは初めてだ。


 しかも奢るだと……?


「私達これからあこの靴を買いに行くんだ。お前がプレゼントしてくれるって言うんだったら同行を認めてやらんでもない」


「マジか!? 買う買う! 買ってあげちゃうから!」


 ……これはおいしい。

 こいつが払うならそれなりにいい靴を買ってやれるぞ。


「ち、ちょっと絵菜ちゃん……!」


 困ったように慌てだすあこめっちゃ可愛いんだが。こんな反応されるともっと困らせてやりたくなる。


「じゃあとびっきり可愛い靴を買ってやってくれよ。 その代わり、そんな事くらいで自分の事好きになってもらえるとは思うなよ?」


「あ、当たり前だろ! これは友達になる為の俺からの気持ちって奴だよ。それくらいでお近づきになれるなら安いもんだ」


 あらら。こいつマジで一目惚れしてるぞ。

 正体は学校でお前がいつも無理矢理エロ本を見せてからかってるルキヤなんだけどな。


 ルキヤはそういうの興味ないって言いつつ無理矢理見せられて顔真っ赤にしてるところが可愛いんだこれが。


 ……くそっ。

 よく考えたら私やっぱりルキヤの事大好きじゃないか。なんか悔しい。


「じゃあさっそくだけど、靴屋までお供いたしますっ! そこの靴屋でいいんだろ?」


「……タダコーもこう言ってるし靴買ってもらいなよ」


 私がルキヤにそう声をかけると、とうとう諦めたのか私の背中から出てきて


「そ、その……あこって言います。よろしく……お願いします」


 そんな事を言いながらペコリとお辞儀をした。


 はぁ、そのおどおどびくびくしてる小動物的なムーブがなんとも愛くるしい。


 ……私が更に夢中になってどーすんだよ。




さて、鬱陶しいのが出てきましたが……こいつがどこまで面倒なのか、きっとご心配はあまりいりません(笑)

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