第42話:うさこと教師と【恋人】と変態。★
「咲耶ちゃん……こんな所でなにしてるの……?」
「咲耶ちゃんって呼ぶなっつーの」
いきなりうさこが現れた事にも驚いたけれど、咲耶ちゃんと一緒っていうのが尚更吃驚した。
「それにしてもおねーさまとこんな所で出会えるなんて本当に運命ですわっ♪ 咲耶ちゃんにお願いして正解でしたわ!」
咲耶ちゃんにお願い……?
私の視線に気付いたのか咲耶ちゃんがタバコの煙を吐き出しながら説明してくれた。
「実はここのホテルの経営者が知り合いなんだよ……本当は違う日に誘われてたんだけど私は都合悪くてその時来れなくてな、そんな時偶然保健室に来てた子兎に招待券あげたんよ」
……ん? ちょっと今の話しおかしくない?
経営者が知り合いって所から突っ込みたいところなんだけど、それはそういう事もあるだろう。それより……。
「招待券あげちゃったんだったらなんで咲耶ちゃんがいるの?」
「それは私がお願いしたんですの。招待券は一枚で複数人OKでしたので保護者替わりに」
「友達誘えばよかったじゃん」
「私……こんな所に誘えるような友達いませんし……」
……えっ? うさこっててっきりコミュ力高い方だと思ってたんだけど……いや、実際学校では友達と一緒にいるじゃないか。
これって聞かない方がいいやつなんだろうか。
「まぁいいじゃないですか! とにかく、家族を誘うのも嫌だったし誘うような友達もいなかったんですの。でもこのプールはすっごく興味があって、だけど一人で来るのは怖かったので……」
「それで私に白羽の矢がぶっ刺されちまったわけよ。まぁあたしも知り合いに挨拶がてら来るのも悪くないかと思ってな。お前らが居るとは思わなかったが」
経営者と知り合いだからこんな場所で堂々とタバコ吸ってられるのかなこの人……。
「あーっ! ちょっと咲耶先生! こんな所に来てまでタバコ吸わないで下さいまし! ちゃんと喫煙場所は用意してありますのであちらで吸って下さいましっ! まったく先生は相変わらずヘビースモーカーですわね……」
「あ、あぁすまんすまん。……ってわけだからちょっとあたし行ってくるわ」
プールサイドに突然金髪縦ロールの如何にもなお嬢様が現れて咲耶ちゃんを連れていってしまった。
アレが咲耶ちゃんの知り合い? というかここの経営者……?
咲耶ちゃんの事先生って言ってたから元教え子とか……?
ちょっとだけ後ろ姿を目で追ってみると、咲耶ちゃんが見た事ないような笑顔で会話をしていた。
元教え子ってだけじゃないのかもしれない。相変わらず謎の多い人だなぁ。
「一人にされてしまいましたの……」
心なしかうさこがしょんぼりとしていたので、こちらから声をかけてやる事にした。さすがにこんな所でひとりぼっちは可哀想だからな。
「うさこ、お前さえよかったら私達と一緒に遊ぼうぜ」
「え、……いいんですの? ご友人と来ているのですし私お邪魔では……」
こいつこういう所真面目なんだよなぁ……悪い子じゃないって証拠だけどな。翔子だけに。
……下らない事を考えてしまった。
「ばーか。お前はそんな事気にしなくていいんだよ。ほら、こっちこい。……みんなもいいだろ?」
水の中からプールサイドのうさこに手を伸ばしつつ、奈那とルキヤにも視線を送って確認を取る。
「ボクは全然大丈夫だよ」
「私もだいじょーぶ♪」
「ほら、みんな一緒に遊ぼうってさ」
「おねーさま……皆さん、ありがとうございます♪」
そう言ったうさこは、それくらいの事で目に涙を溜めはじめてしまい、それを気付かれないようそっぽを向いた。
だけどその態度が失礼かもって思ったんだろう。私の手を掴もうと手は伸ばしてくるんだけど、顔を見られたくないって感じで顔は逸らされる。
……まったく、この子の考えてる事はよくわからんわ。
私は彷徨ってるその手を掴んで、無理矢理プールに引き擦り込んだ。
「う、うわわわーっ!」
うさこがバランスを崩して、どっぱーん! と水の中へダイブ。
これなら泣いてたって分らないだろ。
「もうっ! おねーさまったら急に何するんですの!?」
「あははっ、ごめんごめん、つい」
目が赤くなってるうさこに、出来るだけ安心してもらえるように笑顔で返す。
「……もう、そういう所ですのに……」
「……ん?」
「なんでもありませんの。やっぱり私はおねーさまの事が大好きです♪」
うさこが私に飛びついてきてなかなかの力で抱きしめられる。
「お、おい離れろって」
「嫌ですのーっ!」
「はぁはぁ……!!」
うわキモい視線を感じる!! キモい吐息を感じるーっ!!
「こらこら、うさこちゃんだっけ? 人の恋人に軽々しくそういう事しちゃダメだぞっ♪」
そう言って奈那がうさこを引きはがした。意外と力あるんだな奈那のやつ……。
「……えっ? 誰が、誰の恋人ですの?」
「絵菜ちゃんが、私の」
「……え、は? ど、どどどどういう事ですの!?」
うさこが完全にパニックにおちいって私に掴みかかってきた。
「えっと……うーん、まぁ……そういう事になってんのよ」
「こ、この世の終わりですの……」
だ、誰か助けて……!
「おー、楽しそうにやってんなぁ」
咲耶ちゃん!!
「若いってのはいーねー。あたしはあっちでくつろいでるから適当に気が済んだら呼べよー」
「さ、咲耶ちゃん待って!!」
「咲耶ちゃんゆーなー」
咲耶ちゃんはこっちを振り向きもせずぴらぴらと手を振りながら日陰の方へ去って行った。
「おねーさま! ちょっと! いったい! どういう事ですの!? 私にも! 分かるように! 説明を!!」
だ、誰かたすけて……!!
余談ですが途中でほんの少し出て来た金髪縦ロールの彼女は作者の別作品に出てくるキャラでございます。おさころ本編にはほぼ関係がないので特に気にしなくて構いません(笑)
咲耶ちゃんもそちらではヒロインの一人だったりしますw
大昔の作品+設定が設定なのでイメージを崩したくない方はそっちの作品の事は気にしない事をお勧めします(;'∀')
もし興味がある方は【悪魔でも腹は減る】という作品なので覗いて見てください。お読みになられる際は悪魔でも腹は減るβという分割版があるのでそちらの方が読みやすいと思います。
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