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第2話:理解できない【アイツ】の話。


 まさかあいつ奈那をストーキングしてるのか?


 なんてね。


 なんてね、ですめばよかった。

 でもその後買い物をしている間中、よく見渡してみるとどこかに奴の姿があった。


 ……はぁ。

 引っ込み思案だったし、基本的に家に籠ってるようなインドア派だったけれどいつの間にかそこまで落ちてしまっていたとは……。


 我が幼馴染ながら情けない……。





「じゃあまた明日ね」


「うん♪ ばいばーい」


 奈那が素敵な笑顔いっぱいで私に手を振り返してくれた。


 んで、別れ際にぎゅっとハグして去っていった。


 ……さて、あいつは……。


 居た。


 やっぱり私達の事をつけてる。これはもう間違い無い。


 流石に奈那の家まで尾行するようなアホではないと思いたいが……。


 ちょっと心配だったけど、奈那が去って行った方とは違う方向に姿を消したので安心して私も帰宅する。


 ふと思いついた事があり家に到着する直前、ルキヤにメールを入れる。


【これから私の家に来い。必ず】


 すぐに返事があった。


【なんで? 普通に嫌なんだけど】


 勿論私の返事は決まっている。


【うるせぇ。私達の事尾行してたのクラスメイトにバラすぞ】


 返事は無かったけれど、焦る事なく家に入ってお母さんにただいまと告げ、ペットボトルの紅茶とお菓子を持って部屋に行く。


 しばし部屋に転がって漫画本を読みながら待つ事三十分。


 心なしか控えめなチャイムの音が響いた。


 ……来たか。

 覚悟を決めるまでに三十分かかるとはチキンめ。


 階下で母とルキヤが二言三言交わしている声がうっすらと聞こえて、すぐに階段を上る足音が聞こえてきた。


 途中で一度止まる。


 一分程停止して、再び聞こえ出す足音。

 チキンにもほどがあるだろ!


 コンコンと部屋のドアをノックする音が聞こえたが、私は寝転んだまま「どーぞ」と返す。


「……いつから?」


 第一声目はそれだった。声が震えている。


 私は振り向きもせず漫画を読み続けつつ、

「まぁその辺座って。話があるから」

 と、ある意味死刑通告。


「き、聞いてよ。あれはその、尾行とかそういうんじゃ……」


「女々しい事を抜かすな座れ」


 もう声変わりだってとっくに終わっているだろうに女の子のように透明感のある声しやがって腹の立つ奴だ。


 それを本人はとても気にしていて、学校では無理に声のトーンを落として、ぶっきらぼうな口調を貫いてるみたいだが……まったく涙ぐましい努力である。


 部屋の隅っこにちょこんと座ったルキヤを確認してから私も居住まいを直し、まっすぐその目を見つめた。


「あのさ、いつから? って聞きたいのはこっちの方なんだよね。あんたいつからあんな事してるの? 明らかに付けまわしてるよね?」


「そ、それには理由があって……!」

「ふぅん。どんな?」


「それは……その……可愛くて……」


 ほらきた。

 こいつも私が守る対象だった筈なのに、今私が守っている奈那に寄って来る虫の一匹に成り下がってしまった。


「そりゃ奈那が可愛いのは分かるけどさ……さすがにストーカーなんてみっともない事やめなよ」


「ちっ、違うよ!!」


 そりゃもう必死だった。顔を真っ赤にして軽く涙目になりながら首を横に一生懸命振ってる。


 まったく……こいつをいじめたがる奴の気持ちがちょっとだけわかっちゃうよ……。


「何が違うの?」


「別に……ボクは奈那ちゃんを追いかけてた訳じゃ……」


「じゃあ何? 偶然行く先々に居たって? それとも追いかけてたのは私だとでも言うの?」


「……」


 おい、黙るなよ。まさか本当に私を追いかけてたのか?


 一日中? だとしたらどうして? 理由は?


「確かにボクにとって絵菜ちゃんはすっごく可愛いと思う」



 ……えっ?


 嘘でしょ?? もしかしてこいつ……。

 私の事、す、す……好き……とか?


 え、嘘嘘嘘。そんな訳ないじゃん。

 こいつなんていつも泣き虫で弱くって私が守ってやらなきゃまともに生活できないような……だからか? 守ってくれる私に惚れたって事!?


 いや待て待て。確かにこいつ外見は女の子みたいで可愛いし男らしさのかけらもないけど、確かに私に対してはいつも良い笑顔見せてくれてたっけ。


 私もそれが見たくて……って違う。

 そうじゃない。


 なんだ、なんだこれもしかして私結構こいつの事意識してたりするの?


 あ、ヤバい。意外と私こいつの事……。


 そっか。今まで全く考えた事もなかったけれど、奈那を守ってる今と違った事が一つだけあった。


 笑顔を見たいって言うのは同じだけど、大事にしたいっていうのも同じだけど、違うのは……。


 私は、多分昔から、こいつに恋をしていたんだ。


 こんな状況になって初めて気付いた。

 問い詰めるつもりだったのに私が追い詰められているじゃないか。冷静になれ。


「あ、あのね? 私の事をいくら好きだってさすがにストーキングはダメだってば」


「え? それは無い」


 ……ん?


「ちょっと待って、今どっちに対しての返事?」


「ボクが、絵菜ちゃんの事を好きって話。それは無い」


「でも奈那を追いかけてた訳じゃないんでしょ?」


「うん」


 ……んん??


「さっき私の事可愛いって……」


「うん、絵菜ちゃんも奈那ちゃんもすごく可愛いよね! 二人っていつから付き合ってるの!?」



 ……んんんんんんんん?????


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