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顔に傷のある少女  作者: AuThor
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友人

そして次の日に蓮は陸上部に入部した。


もともと体を鍛えることをしていた蓮の運動神経は抜群で、短距離でも長距離でも圧倒的な成績をたたき出した。


優人は蓮の短距離走者としてのずば抜けた素質を感じたので、全国レベルの自分の好敵手になることを期待して、蓮に短距離を勧めたが、蓮は長距離を選んだ。


蓮が長距離を選んだ理由は、朱里が長距離をやっていたからだ。


練習のときでも男女一緒に練習するときは短距離同士、長距離同士でやる機会が多い。


少しでも朱里の近くにいたかったからだ。



依子はおとなしめで人見知りするタイプの女の子だ。


しかし、他人を気遣う性格から友達はできる。


中学2年生の時、朱里がクラスのために誰にも気づかれないような行動をしているところを偶然見かけ、朱里とは別クラスだったが依子もその作業を手伝ったことで友達になり、親友となった。



蓮が陸上部に入部して1週間が経ち、グラウンドには短距離で優人が練習し、長距離で蓮と朱里が練習し、グラウンドの階段で真也がパソコンをする風景が定着していた。


最近、朱里は依子の元気がないことが気になっている。


昼休みに時々会ったり、休日に詠美と依子の3人で遊んだりするときも依子は何となく元気がないように朱里には見えた。


朱里が依子に何かあったのか聞いても、依子は何でもないよと答えるだけだ。


実は依子はクラスでいじめにあっていた。


原因は、クラスで最初にいじめられていた人に対して、いじめをしていた者が、他の女子も同調するように言ったが、そのようなことをすることができない依子は次のターゲットなってしまった。


依子は精神的な疲労感がたまっており、憂鬱な気持ちで教室に向かって歩く。


自分の教室に入り、席に着く。


誰も話しかけてこず、前方の席に座っていたいじめの主犯格の女子たちが依子のもとへ向かってくる。


依子が身構えた瞬間、教室の後ろの入り口から一人の男が入ってきた。


いじめの主犯格の女子たちや依子はその男を見る。


その男を依子は知っていた。


最近、朱里と詠美と3人で昼休み過ごすときに、よくその中に入ってくるようになった先輩だ。


「九条先輩・・・」

依子はつぶやく。


「おはよ!依子ちゃん」

真也は笑顔で挨拶する。


そして、いじめの主犯格の女子たちの前に立ち、パソコンを机にのせてモニターを見せる。


「これ、なーんだ」

真也は笑う。


そのモニターに映る画像を見て、女子たちも依子もぎょっとする。


それはおそらく合成画像であろう、いじめの主犯格の女子たちの恥ずかしい写真がたくさん映っていた。


「これ以上、つまんないこと続けるなら、これが校内のいたるところに張り出さちゃうよ?」


女子たちはつばを飲み込む。


「もうやめなよ?」


女子たちは固まっている。


「返事は?」

真也は笑って言う。


「はい・・・」


「じゃあね。依子ちゃん」

真也は教室を出て行こうとする。


教室の出口のところで真也は立ち止まる。


「あ、そういえば、2階の物理教室にもう1枚張り出したんだった。まだ誰も見てないと思うから急いで取りに行った方がいいよ」

真也は教室を出ていった。


女子たちは血相を変えて、慌てて教室を出ていく。


その瞬間から依子に対するいじめがぴたりとなくなった。


依子は放課後に真也にお礼を言いに行った。


「あの・・・本当にありがとうございました」

依子は頭を下げる。


「朱里ちゃんの親友でしょ? 助けるのは当然だよ」


「朱里ちゃんの親友とか友達のことをいろいろ調べてたら、たまたま知っただけ」


「でも、本当に助かりました」


「そっか。できれば朱里ちゃんと、自然な形でいい感じになれるように援護してくれたらうれしいな」


真也の目的は、朱里自身だけでなく、朱里の周りからも攻略していくことだった。


真也は自分の女遊びの噂を朱里も耳にしていると思っているので、朱里の近くにいる人間から自分の良い印象を与える形を望んでいた。


真也は朱里と接していく中で、今までになく真剣に恋をしていることに気づいた。


半ば強引に迫れば、どさくさに紛れる感じで朱里と付き合うことができるのではと思ってはいるが、それは最後の手段にしたいと真也は考えていた。


本気で恋している以上、朱里に自分をしっかりと選んでもらい付き合いたかった。



詠美は華やかな容姿なので、小さい頃から男子にモテた。


しかし何人もの男と付き合ったり、別れたりしているうちに、クラスの女子から疎まれ、中学3年生の時、妬みなどからいじめにあった。


詠美には同性の友達がいなく、そのいじめを止める者などいないように思えたが、ある日、朱里が職員室で先生に詠美が被害に遭っていることを伝えているのを偶然、詠美は目にした。そして詠美は朱里のことを気に入り、友達になり、親友になった。


今日は全ての部活動が同時刻に解散し、部長だけが会議で集まる日だったので、

朱里と依子と詠美は3人で帰ろうということにしていたが、真也がそこに加わり、帰り道が途中まで同じの蓮もその中に加わっていた。


朱里は依子が以前のように元気を取り戻したように感じ、ほっとしていた。

しかし、やたらと真也のいないときに、朱里に真也の良いところを言ってくる。


詠美は依子が真也に恋しているのを感づいていた。

でも、誰から見ても真也は朱里のことを好きだということがわかるくらい真也はモーションをかけているので、依子は好きな子の恋を応援しているのだなと詠美は思った。


「ふだんは部活あるから、朱里と依子と一緒に学校から帰るのはひさしぶりだね」

詠美は楽しそうに言う。


「そうだね」

朱里と依子も笑顔だ。


5人で歩いていると、目の前に坊主頭の強面の男がこちらを見て何かに気づいたように立ち止まる。


「詠美・・・」

その男は詠美をじろりと見る。


やば・・・。

詠美は後ずさる。


その男は詠美の元カレだった。


「おまえ・・・急にいなくなりやがって。高校も嘘ついたろ」

詠美の元カレは言う。


詠美はその元カレと中学3年生の時にクラブで知り合い、付き合ったが、詠美は高校に入学すると同時に電話で一方的に別れを告げて詠美から去った。


詠美の元カレは喧嘩も強かったので、直接会って別れを切り出すと暴力や力を使って認めてくれないと思ったので、面倒だと思った詠美は電話で別れると告げたのだ。


「別れるって言ったじゃん・・・」

詠美は男から目をそらす。


「ふざけんな。電話でとか認めねえよ」

切れ気味に元カレが詠美に向かっていく。


詠美はあとずさる。


すると真也が「こういうときは・・・警察に」とつぶやき、スマホを取り出し操作しようとしたとき、真也の前に蓮が手を伸ばし、その動作をやめるように合図する。


「俺が、今こいつと付き合ってんだ」

蓮は元カレの前に出る。


驚く詠美。


「何だ? おまえ」

元カレはまったく動じない。


蓮は息を吐く。

「喧嘩で決めないか? 俺が負ければこいつと別れる。俺が勝てばおまえはこいつをあきらめる」


「上等だよ」

元カレは喧嘩に自信がありそうだ。


そして2人の格闘による喧嘩が始まった。


5分くらい続いただろうか、2人とも殴り合い、蹴り合った。


しかし、蓮の方が元カレよりも実力が上のように周りにいた人たちには両者の動きから感じる。


元カレもそれに気づいているのか表情に余裕がない。


それでも喧嘩は五分五分といった感じで、両者とも互いに拳や蹴りをくらったりした。


しかし、朱里は違和感を覚えていた。自分を助けてくれた時に見せた回し蹴りのような切れのある動きを蓮はしていないのだ。


真也は喧嘩している2人に聴こえない程度の声でつぶやく。


「武藤のやつ、手加減してるな。前にあいつの喧嘩見たことあるけど、あんなもんじゃなかったよ」


次の瞬間、元カレの拳をかわし、蓮の脚が元カレの顎を蹴り上げた。


そして元カレは地面に倒れ、起き上がれなくなった。


蓮は元カレに近づき、「あんた、強いな」と言い、手を差し伸べる。


元カレは蓮の差し伸べた手を掴み、起き上がる。


「約束だったな。あいつのことはもういい」

元カレは蓮を見る。


「ありがとう」

蓮は真剣なまなざしで元カレを見る。


元カレは去っていく。


その光景を見て、真也はつぶやく。


「一方的に負かすよりは、ある程度やりあって負かした方が相手もすっきりできるからかな。だからわざと相手の拳や蹴りをくらったのかもね。相手を立てることもしてるし、相手にきちんと認めさせるやり方としては正解かもね」


朱里と依子と詠美は真也の言葉を聞き、なるほどと思う。


蓮がこちらにもどってくると、顔から少しだけ出血している。


依子が急いで鞄から「ばんそうこう・・・」と言い、ばんそうこうを出す。


「あ、あたしがやる!」と詠美は慌てて、依子からばんそうこうを受け取る。


「いいよ、そんなの」

蓮は面倒くさそうに言う。


「本当に助かったから、これぐらいさせて」

詠美は焦りながら絆創膏をはろうとする。


「それより悪かったな、彼氏なんて嘘ついて」

蓮は朱里にも聞こえるようなはっきりとした声量で言う。


「いや、全然大丈夫・・・むしろ」と詠美は言いかけるが

「彼氏をつくるんなら、ちゃんと見極めろよ」と蓮が遮るように次の言葉を言う。


「うん・・・」

赤面しながら絆創膏をはる詠美。


依子は詠美の表情や挙動から、詠美は蓮に恋していると感づいた。


実は詠美は以前から蓮のことを意識していたのだ。


そして、今回のことで完全に詠美は蓮に恋してしまった。


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