五話 編入と決闘
今日はあと一話くらい投稿するかも……
全ての基礎魔法は使えるようになったが学園で習った火属性の応用魔法は使う事が出来なかった……おそらく応用を使うにはあの順番が必要なのかもしれない。
「ここか……」
俺は風属性の碧翼学園を訪れていた……
各属性の学園には特待生枠というのがある……それは入学時の成績なので決めるのだが、すでに俺と同年代が入学してから二年が経っているためそれは無理だ……がある方法を使えば無料で学園に通う事ができる。
「編入とは珍しいな」
「適性が二つ合ったのですがもう一つの属性はなかなか伸びなくて……」
今話しているのは学園の敷地外をうろうろしているところを捕まった訳だが相手は風天の風間風丸……まさか最初に大物に出会うとは思わなかった……
「まあ編入自体は止めはしないが、ここにはそう簡単には入れないぞ?ましては途中からなんて」
「分かっています……そのつもりで来ましたから」
ここに入れなければ何も始まらないからな。
「そうじゃなければこんなところまで来ないもんな、じゃあめんどくさいし、決闘方式で良いよな?」
「はい……でも特待生枠でお願いします」
「何だって……」
入学したところでお金がかかるのでは意味がないからな。
「お金は……ないので」
「面白い奴だ、分かったよ、訓練所で待っていてくれ、入り口の地図を見ればすぐに分かるはずだ」
「分かりました」
特待生枠で編入するにはその学園で一番強い生徒に勝たなければならない……ていうのが名目だか、審判を認めさせればそれでも合格できる。
そしておそらく対戦相手は……
「父上、至急来いとの事で来ましたがこれは一体……」
「特待で編入したいって言う面白い奴がいてな……今ここで一番強いのはおそらくお前だからな」
「なるほど……」
やはり自分の子供をつれてくるよな、というか風天の子供も女なのか……
「ということは君が私の相手をしてくれるのか?」
「珀人だ、今回はよろしく頼むよ」
「特待を望むということは腕には自信があるのだろう?最近あまり相手になる奴が居なくて困っていてな……くれぐれも私を失望させないでくれよ?」
「ご期待に添えるよう頑張らせて貰うよ」
風天の娘、そして入学して二年の天才だとしても、少なくとも六年修行に励んだんだ、負ける訳にはいかない。
「それでは試験を始める……両者構えて」
まさか審判も風天が勤めるとは思わなかったが……
風属性の中でも風間家は接近戦が得意な俊敏型だったはずだ、ならばこちらにも秘策はある、彼女はおそらく他の属性とは戦った事はないだろうしな。
「始め‼」
審判のコールとともに試験が始まるが、両者動くことはない。
「いつもは先手必勝と考えてはいるのだかな、相手の手の内を見ないで終わるのはつまらない、先手は譲るぞ?」
「余裕だな?」
「上に立つものとは常に余裕を持たなければいけないものだ」
「なるほどね」
おそらく先手必勝で来ると思って既に仕掛けてあったのだが、どうしたものか……
「いつでも良いぞ?」
「ではお言葉に甘えて」
俺の初めて使う事のできた魔法、それの遠距離型……その名も風を纏ったロングパンチ。
風を圧縮した物を拳に込めて放つ。
「なんだ……先手を譲ってやったというのに、魔力を込めて放出するだけとは、基礎中の基礎だぞ?」
これでダメージを与えられるとは思ってはいない、まずは魔力のレベルの差を確認するためにこれを選んだ。
「ものは試しなんでね」
「そんなものは受けたところで……え……なんだこの魔力は……これをもろに食らうのは……な、足が動かない!?」
それは俺が先に仕込んでおいた、闇属性魔法の影縛り、上級者なら足止めにもならないが、所見でこれを回避するのは難しいはずだ。
「どうしたんだ?先手を譲ってくれるだけでなく体で受けてくれるのか?」
「え……いや、くっ……このままでは……うっ」
バフンッ‼
空気の塊が弾けるような音と共に俺のパンチをもろに食らった……
流石に受け流すものがないとまずいので当たる瞬間に影縛りは解除しておいたため、数メートル後ろに跳んでその場で倒れていた。
「大丈夫か?」
「ん……ああ……まさかここまで魔力の差があるとはな」
ん?どういうことだ?
「審判、私の負けだ」
「え……終わり?もっと激しい戦いが見たかったのに」
風天の言葉とは思えないな……
「え、良いのか?」
「ああ、これは戦う事が目的なのではなくて、君の実力が分かればいいのだろ?」
それはそうかもしれないけど……たった一撃でそんな事決めて良いのか?
「俺は……入学できるならそれでいいけど……」
「私は涼乃だ、これから宜しく頼む」
「こちらこそ」
俺の入学が決まった……しかも特待生で……なんだか呆気なかったな……