十話 試験と決闘2
「どういうことですか?」
「こういう形式の方が早く終わると思いますよ?」
時間の問題じゃないんだけど……
「この際なんでもいいです、全部受けきるのは難しかった訳ですし……合格内容は何ですか?」
「先生を倒せなんてことは言いません、認めさせれば合格です」
それって実質倒すのと変わらないんじゃ……
「なるほど……」
「そもそも全属性で合格なんて無理な話なんでどれか一つでも合格したらいいほうですよ」
こいつ……はなから……
「そうですか……試験は何時からですか?」
「教員の皆さんは準備が出来ているそうなので何時でもどうぞ」
「分かりました」
そうして俺は決闘場所に入っていく、すると中には六人の教員と思われる人達がいた。
「ほう、彼が……」
「とてもじゃないけど全属性使えるとは思えないけど」
好き勝手言ってくれているな、でも一番の問題は魔力が持つかどうか、あのときのように一発くらいで魔力が枯渇するようなことはないが……六人相手にするのは厳しいかもしれない。
「順番とかはあるんですか?自分はどれからでも構いませんが」
「俺から行こう、属性は……炎城寺と言えば分かるか?」
この人はまさか……
「真人の……」
「初めましてだな、真人の父親だ、真人からは色々聞いていたからな、相手をしてみたくなった」
悪いことを言われてなければ良いけど……
「火属性以外の魔法の使用はありですか?」
「俺は構わないが……皆どうする?」
「ダメに決まってるでしょう?そんな事言ったら全部得意な属性使えばいい話になってしまうわ」
「だそうだ」
「そうですか、いきなり他の属性使って失格にされたらたまりませんからね、それが聞けて良かったです」
あの女教師……なんかしらケチをつけて失格にしてきたら、たまらないな……
「準備はいいか?」
「はい」
「そんなに固くならなくてもいいぞ、これはあくまでも試験であって本当の決闘ではない、実力を測るものだからな」
「そうさせてもらいます」
熱血系の教師かもしれないけど、真人とは大違いだな……
「さあ、どっからでもかかって来なさい」
「分かりました」
取り敢えず一発打ってみるか……
「"エクスプロージョン"」
目の前で炎が圧縮されていき巨大な玉となりそれを解き放つ。
「あいつの言っていた事は本当だったのか……ではこちらも"エクスプロージョン"」
俺の放った魔法は炎城寺先生の魔法によって相殺された。
「すごい……」
「いや、これくらいなら誰にでもできるようになる、君の魔法はまだ雑な部分があるから、これから精進することだ」
「え……それって」
「火属性は合格だ」
魔法一発で合格なんて興醒めもいいところだ……
「でも……」
「さあ、時間もないぞ、次行くぞ、次」
その後も実践形式なのにも関わらず三大魔法一発で合格をもらってしまった……
火属性の三大魔法は全部発動するところまでできて、他の属性は三大魔法のうち一つだけ使える。
正直なところ、使えるだけで実践では使い物にならないとおもうが……
そして最後に残ったのはあの女……
「み、皆さん、そんなにも簡単に合格にしていいんですか?これじゃあ実践形式の意味が……」
「そんな事言われてもなぁ、俺達は全属性そこそこ魔法が使えるなら、それでいいほうだと思ってたからよ、正直三大魔法を発動まで持っていけるなら充分すぎるくらいだ」
「「「「うん、うん」」」」
他の先生方は皆賛成のようだが、あの女だけは納得がいってないようだ。
「まあいいです、水属性は私、氷堂 深雪が担当します、今までのように合格出来るとは思わないで下さい」
「宜しくお願いします」
「さあ、今まで同様どこからでもかかってきなさい」
そこは良いのか、下手したらガチでタイマンさせられるのかと思ってた……
「一つ質問良いですか?」
「どうぞ」
「貴女は三大魔法を使えるだけでは合格はさせない、そういうことでいいんですか?」
「そういうことです、しかし何故そんな質問を?」
「三大魔法って魔力の消費ぎ激しいのであまり使いたくないんですよね」
「そ、そうですか……あくまでも使えることは前提なのですね……」
正直魔力が心もとないのは本当だ……平均的な三大魔法の魔力消費の六回か七回これが四年間で上げることができた限界だ……
「今までに一応大きな魔法を五回も使ってるわけで……出来れば、これが出来たら合格とかにしてくれると助かるのですが」
「……確かにそうですね、魔力の枯渇を起こされても困りますし……どうしましょうか……」
この人根は絶対に優しい人だな……
「では……あのモニターに映し出されている魔力防壁の残り残量がありますよね?」
「はい」
ここの魔法防壁にはHP的な物がある、それはここまで広い決闘場だからこそなのだが、通常も魔力防壁よりも攻撃防ぐ事が可能だ。
「あれを……そうですね……三割じゃ多いわよね……一割じゃあすぐに終わっちゃうかもしれないし……」
この人は真面目なだけでは良い先生なのかもしれない。
「別に三割でもいいですよ?」
「そ、そう?じゃあ……いや二割にしましょう」
「先生がそれでいいなら」
どちらでもあんまり変わらないけど……
「では始めましょう、どっからでもかかってきなさい」
「では……」
本気の戦闘では勝てないと思うし……先生には悪いけど……
「"タイダルウェイブ"」
「え……この魔法って玄水さんの……」
流石に水属性の教員だけの事はあるな、見ただけで水天が編み出した魔法だと気がつくとは……
この魔法は本来なら水天しか使えない……何故なら発動方法が明かされてないから、ちなみに俺は本人に聞いたけどね。
そしてこの魔法の最大の特徴は魔法では防ぐ事が出来ない水出てきた波を発生させること。
「"ブリザードウォール"」
氷堂先生が氷で造られた障壁を魔法で構築したけど、それも意味はない、そもそもこの魔法が造られた理由がそれに打ち勝つためなのだから……
「や、やっぱり……何で防げないのよぉぉぉ」
氷堂先生は波飲まれてしまう、そしてどんどん魔力ゲージは減りとっくに二割など過ぎ去り、逆に二割を既に切っていた。
「ヤバイな……」
魔力防壁がなくなると魔法をもろに食らってしまう、このままだと……先生の命が危ない……すぐさま風魔法で空を飛び救出に向かう、他の先生は大丈夫か?
そうして周りを見回すと……
「さっさと氷堂先生を助けてやれー」
風属性の先生が既に全員観客席に避難させていた……
炎城寺先生……海で溺れている人を助けるのって大変なんですよ?
風魔法で飛んでいるのでだいぶ楽ではあるけど……
俺急いで氷堂先生の元に向かい波から助け出し抱き抱える、丁度お姫様抱っこのような体勢だ……
「大丈夫ですか?」
幸いゲージがなくなる直前で助けることが出来たので氷堂先生が水で、溺れることはなかった……
「ずるいわ……あんな魔法……」
「すみません」
俺は苦笑いをするしかなかった……それにしても随分と弱々しくなってしまったものだ。
「でも、助けてくれて有り難う……ちょっと格好よかったわ……」
あの……頬を赤らめるのやめて貰って良いですか……