一話 絶望と小さな希望
新作です。
俺は信じていたんだ……名家の生まれじゃない俺でも努力すれば彼女に相応しい魔導師になれるかもしれないと……その日が来るまでは……
「何の適性があるか楽しみだね?」
「そうだな」
彼女は数ある名家の中でも、火属性の頂点に立つ不知火家の娘である朝日赤髪で短めのサイドテール、明るくて元気で俺もそれに元気を貰っている。
そんな彼女と俺、陸導珀人が何故、一緒に居るのかは追い追い話すことにする。
人は皆、魔力を持っている、多い人もいるし少ない人もいる、人によって差はあるが大体皆、十歳を越えるまでには魔力の適性が分かる様になるので、誕生日を迎えた今日、自分がどの属性を使えるのか調べに来ていた、魔導教会の水晶で調べてくれるのだ。
彼女はほとんど決まったようなものだが適性はひとつとは限らないので、彼女も一緒に確かめるそうだ。
「私が先でいい?」
「もちろん」
「やった‼」
そんな喜ぶことでもないと思うが彼女はちょっとした事でも喜び、笑い、俺はそんな笑顔が好きだった。
「ここに手をかざしてください」
「はーい」
水晶は真っ赤に染まった、その中に若干他の色も見えた気がするがよく分からない。
「これは……さすがは不知火のお嬢さん、綺麗な赤色だ、それに光属性にも適性があるようだね」
「珀人聞いた?綺麗だって‼それに光属性も使えるって‼」
「さすが朝日だね」
「えへへ、ありがと」
基本的に皆が一つの元となる適性があり、才能がある人間には二つや三つ適性がある人もいるが名家の人間は自分の家の属性の適性が高く二つの適性がある方が珍しい。
「俺の番だね」
「私は火の適性があるといいな」
「なんで?」
「なんでって……もう、早く調べてきて‼」
怒らせてしまったみたいだ……なんで急に……
でも今は自分の適性の事で頭はいっぱいだった。
「君もここに手をかざしてください」
「はい」
俺が手をかざすと一瞬色々な色が見えたような気もしたがすぐに水晶は真っ黒に染まった。
黒ってことは闇属性か……
「え……これは……」
「どうかしたんですか?」
「君には……適性がないみたいだ」
「え?闇属性の適性があるんじゃ……」
「闇属性に適性がある人は紫色に染まるんだ」
「そんな……何か……何かないんですか?本の少しでも適性があれば……」
「残念だけど、私には分からない……黒色なんて初めて見たけどおそらく……」
「そんな……」
それじゃあ俺はどうすれば良いんだよ……適性がないんじゃどうすることもできないじゃないか……
「珀人……」
「朝日……」
「まだ早かったかもしれないじゃん?それに水晶の調子が悪い可能性だってあるし……」
「そうかもしれないけど……」
「だからさ、今日は家に帰ろう?ね?」
「そうだね」
朝日の言う通りだ、まだ適性がはっきりしてなかっただけだ……きっとそうに決まっている。
今日は家に帰ろう……
「パパ、たっだいま‼」
「お、朝日帰ってきたのか?珀人もお帰り」
出迎えてくれたのは朝日の父親で現不知火家当主の烈火さん。
「ただいま……烈火さん……」
「朝日みたいにパパって呼んでくれてもいいんだぞ?」
「それは……ちょっと……」
「気を使うことはないぞ?俺達はもう家族なんだから」
これが俺が名家の娘と一緒に居られる理由……俺の両親は三年前に事故で亡くなった、それで俺の父親の親友だと言う、烈火さんに引き取られたのだ、朝日とは昔から遊んでいたが、まさか家族になるとは思っても見なかった……
「もう少し時間が欲しいです……」
「それも……そうだな……急ぐことはないからな?」
「はい」
「あ、パパ?私ね、火属性だけじゃなくて光属性にも適性があったよ」
「おお‼それは良かったな、光属性は火属性と相性が良いぞ、珀人はどうだった?」
やはり俺のも気になるよな……あまり話したくないんだが……
「教会の人、適性が分からないとか言ってたの……多分何かの間違いだよね?」
「そ、そうか……まだ早かったのかもしれないな」
朝日がすぐに喋ってしまう……結局は知られてしまうのだから同じか……
その日は部屋にこもってしまった……朝日には悪いことをしたけど、俺にまだ確定じゃないにしろ、ショックが大きかった。
適性がない人間なんて聞いたことがない……
次の日、朝日に無理矢理連れ出され、適性の検査に行ったが結果は同じだった……次の日もその次の日も朝日に連れ出され検査に行ったが結果が変わることがなく……二年間の歳月が流れた……