異世界ダンジョンへようこそ♡
「失礼、入場券一枚頂けます?」
「珍しいね、しがないダンジョンにお嬢さん一人で来るなんて」
「雑誌で読んだんです。ここのダンジョンは異世界と繋がってるって」
「はて、雑誌の取材なんてあったかな……?
まあいい、入場券は隣の券売機で買っておくれ」
「……おじさん、入場券1枚500ゴールドって高すぎません? 学割とかないの?」
「ない。うちはそんじょそこらのダンジョンとは違うんだ、嫌なら他に行っとくれ」
「……払います」
「素直だね」
「はい、買いました。学割があったら、もっと若者が来ると思いますよ」
「考えておこう。
さて、お嬢さん。どんなダンジョンに行きたい?」
「え? う~ん……そう言われましても、異世界に行けるダンジョンって聞いて好奇心で来ただけだから」
「それじゃ、ご要望にお応えして。
その入場券を自動改札に通して、奥の洞窟に行くといい冒険の始まりだ」
「わかりました。行ってきます!」
「行ってらっしゃい、素敵な冒険を」
「若いって良いね。俺も若い頃はあれぐらいの好奇心が――」
「おっさああぁぁぁぁぁぁん!!」
「おや早かったね。ダンジョンに入ってまだ46秒くらいだろ」
「入るも何も、先に進めないんですけど!
洞窟全体がももふもふしてて、トランポリンの上に乗ってるような」
「不思議でしょ、ファンタジーじゃないか」
「いやいや、先に進めないなんて詐欺か詐欺ダンジョンか!!」
「でも中に入ってるから、500ゴールドもらうよ」
「一分も入ってないのにひどすぎる!」
「……分かったよ、もう一度どうぞ。ダンジョン経営も苦しいんだよぉ」
「当然でしょ!! 行ってきます」
「おやじぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
「今度はなんだい、入って1分で出て来ちゃったじゃないか」
「当たり前でしょうがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
なんで入った瞬間、高笑いした高貴な服着たお姉さんたちが道塞いでるのよ」
「入った瞬間、悪い令嬢が道を塞いでたらファンタジーじゃないか」
「んなわけあるかぁぁぁぁぁぁ!
魔法喰らって死にかけたわ!!」
「あの中の一人の女性にね婚約破棄にあっちゃったんだよ、未練があってね」
「知らないよ! そんなこと!!」
「それじゃ次は」
「いや、いいです」
「?」
「私、見習の賢者で修業の一環で来たんですけど、ちょっともう他あたります」
「え、ちょっと待って、まだとっておきのが……」
「いや、いいです。ほんと、今日は帰って魔法の参考書読みます」
「えぇぇ」
「さよなら」