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僕の学校は厨二病 ~厨二病でも平穏に学生生活を送りたい。が無理のようです~  作者: 笛伊豆
第一章 大学生?

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93.「お食事をご馳走になっただけだから」

 しばらくすると女子中学生としておかしくない服装に着替えた憐さんが戻って来て、改めてみんなで一緒に食事をした。

 母屋の奥座敷は完全に宴会になっているそうだ。

 もう僕の事なんか誰も気にしていないみたい。

 つまり集まって騒ぐだけが目的だったんだろうな。

 田舎が舞台の小説でそんなシーンがあったっけ。

 子供が生まれたり誰かが死んだりしたら集まって即宴会。

 いや宴会自体が目的じゃないんだけど、結果として何やっているかと言ったら宴会でしかない。

 何かを決めるとか議論するとかは一切ない。

 そういうのは庄屋、じゃなくて地主やここら辺りが藩だった頃の殿様の家老の子孫みたいな人が決める。

 下々の者は従うだけだ。

 だから宴会すると。

「まあ、そのようなものですな」

 巌氏が食べながら頷いた。

「民主主義の時代になったとは言え、そもそも政治家が立つためには地盤や金が必要です。

 どうしたって何代も前から土地を仕切ってきた家に頼ることになる。

 この辺りですと末長家ですが」

 やっぱり。

 この際だから聞いてみる。

「失礼ですが広末さんも地主ですよね?」

「登記上はそうなってますが」

 どうみても地主風の風貌の巌氏は肩を竦めた。

「管理人というだけです。

 土地の売買や何かを建てたりする場合は『上』にお伺いを立てなければならない。

 自由には出来ないのですよ。

 実際問題として、この辺りが地上げ屋などに荒らされていないのは末長家が仕切っているためです。

 私も先代から聞いただけですが、バブルの頃はそれは酷いものだったそうですよ」

 バブルか。

 僕なんかまだ生まれてないよね。

「その話、俺も聞きたいんだが」

 豊さんの言葉に巌氏が頷く。

「そうだな。

 お前も昔ならとっくに元服が済んどる。

 憐も裳着してもおかしくない年齢(とし)だ。

 よし判った。

 矢代さんもいらっしゃることだし、ここでお前達の成人を認めよう」

「本当か親父!」

「やった!」

 何か訳が判らない話になってきたような。

 元服は判る。

 ラノベで読んだけど昔の日本の成人式みたいなものだったっけ。

 もちろん貴族や武士だけで、平民にはそんなみんはなかったと思うけど。

 裳着は女の子の成人式だったはずだ。

 ていうか広末家って本当に21世紀に生きているのかね?

 末長さんもぶっとんでいたけど、その配下であるらしい広末家は更に酷くてまだ戦国時代なのでは。

 すると豊さんが慌てて言った。

「元服とか裳着とかって言葉の綾ですから!

 俺たちは現代日本人ですので!」

「兄さんたちはどっちかというと日本人よりは暴走族よね。

 実際にはヘタレばかりだけど」

 憐さんが笑いながら言う。

 それが成人(おとな)の言う事か。

「矢代さんが誤解しておられるぞ。

 ちゃんと説明しなさい」

 巌氏に叱られた二人は簡単に説明してくれた。

 もちろん広末家も日本の法律には従うし、元服だの裳着だのの儀式をやるわけではないらしい。

 だけど当主から「成人した」と認められない限り、地元半人前なんだそうだ。

 それって?

「寄合で発言できるようになるとか」

「門限がなくなるとか」

 あまり大した特権じゃなさそう。

「そんなことはありません」

 憐さんが真面目に言った。

「例えば私はこれからは父の許可なしで色々やれます。

 (エン)様の腰元組に入ることも」

(エン)の姉御の許可がいるけどな」

「それはそうだけど。

 でも宝神に入ればきっと」

 何か嫌な方向に話が向かっているなあ。

 僕はさりげなく話の方向を曲げた。

「さっきの話ですが、広末家は末長さんとどういう関係なんでしょうか」

 どういう関係ってのも変な聞き方だけど。

 幸いにして巌氏は真面目に聞いてくれた。

「そうですなあ。

 昔なら郎党とか家来とかだったのでしょうが、今は上手い言葉がございませんな。

 強いて言えば『配下』かと」

「ああ、そういうことですか」

 判ってはいたけどこれで確認出来た。

 何の事はない、この辺り一帯は末長家が治める国みたいなものなんだろう。

 日本国から独立しているわけじゃないんだけど、領土内では独自の法律が適用される。

 もちろん明文法じゃない。

 慣習法かな。

「大体、判りました」

 そう言ったら巌氏だけじゃなくて豊さんも憐さんも一斉に微笑んでくれた。

 そういうことなんだろうな。

 矢代興業じゃなくて宝神総合大学がこの辺りの新しい「城」になったわけか。

 だから憐さんは宝神に入りたいと。

 それって時代劇で言えばお城勤めになるようなものだ。

 矢代興業、えらいもんを買ってしまったのかも。

 僕たちはそれから1時間くらい当たり障りのない雑談をして食事を終えた。

 とんでもないハプニングだったけど、何となく僕の立ち位置が判ってきた気がする。

 これはもう逃げられないかも。

 さすがに泊まっていけとは言われなかったけどもう外は真っ暗だった。

 この中を自転車で家に戻る自信がなかったけど、車を回して貰うにしても自転車どうしよう。

 そう思っていたら豊さんが自分で運転して車を回してきた。

「自転車は荷台に載せますので」

 軽トラだったよ(泣)。

 この辺りで長く住んでいる家には必ず一台はあるそうだ。

 まあそれはそうかもしれない。

 豊さんは上手い運転でたちまち矢代家まで軽トラを走らせると僕と自転車を降ろして去って行った。

 疲れた。

 面倒くさかったのでインターホンに名乗って門を開けて貰う。

 玄関まで迎えにきてくれたのは(エン)さんだった。

「すみません!

 広末の親父から電話貰いました!

 連中が引き留めたみたいで」

「お食事をご馳走になっただけだから」

 まだ何か言いたそうな(エン)さんに手を振って自分の部屋に戻る。

 何か汗臭いから風呂に入りたいなあ。

 ジャージに着替えて一階に降りる。

 リビングを覗くとそこには静村さんと(エン)さんしかいなかった。

「お風呂入るので」

「はい!」

 返事が無駄にいいなあ(笑)。

 扉の札を「男」に替えて風呂場に入ると湯船にお湯が張ってあった。

 ありがたい。

 この気配りは比和さん?

 いやさっきいなかったし。

 まあいいや。

 身体を洗ってからゆっくり温まる。

 さてどうしようか。

 憐さんに約束したみたいになっちゃったからなあ。

 いつものように信楽さんに丸投げ……じゃなくて、これってむしろ(エン)さん向けの話なんじゃないかな。

 矢代興業は関係ない気がする。

 逆上(のぼ)せそうになったので慌てて上がって水シャワーを浴びる。

 頭が冷えると考えがまとまってきた。

 よし、まず(エン)さんだ。

 ジャージに着替えて風呂場を出てリビングのドアを開けると、そこには誰もいなかった。

 みんなどこに行ったの?

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