78.「それで今夜いらっしゃると?」
信楽さん経由でシャルさんに依頼した所、快諾された。
宮砂さんも参加するそうだ。
「ロンズデールとは関係を深めたかったので」
宮砂さんの言い方が気になる。
つまり矢代興業のヲタクグループが勢力拡大を図っていると?
(次の世代のロンズデールだからな。
取り込めばメリットは大きいか)
無聊椰東湖の言うとおりかもしれない。
よく考えたらロンズデール兄弟ってグループの跡継ぎなんだよ。
お姉さん達は宇宙人だから、多分経営には関わらない。
パティちゃんは当然。
だとすれば次期トップは彼らだ。
今はアニヲタかもしれないけど(笑)。
もう一度信楽さんに頼んでロンズデール家ご一行のカラオケツアー企画をまとめて貰う。
僕も誘われたけど断った。
だって炎さんがメインなんだよ。
魔王軍が出てくれば百鬼夜行になってしまうかもしれない。
(そんな危ない所にロンズデールを送り込もうとしてるんだぞ。
矢代大地の冷血さには心が冷えるぜ)
ほっといてよ!
さて。
ロンズデールはこれで片付いたとして、当然他にもいるんでしょ?
そう聞いてみたら信楽さんはのほほんとして応えた。
「次は英国のマナク家ですぅ。
その他にもいらっしゃる予定ですがぁ、もっと後ですぅ」
やっぱりマナク家か。
春に英国に行ったけど、ロンズデールとは違った意味で凄かった。
マナク家は貴族だ。
スコットランド地方の辺鄙な場所の地主さんらしいんだけど、よくは知らない。
もっともマナク伯爵家は昔の領主みたいに領地の絶対的な支配者というわけじゃなくて、むしろ伝統ある「旧家」というイメージだったなあ。
それでもちゃんとお城があって観光名所になっていた。
そこはホテルにもなっていて、というよりはそういう事業が発展して「マナク家」という事業体が出来ていたんだよね。
観光はもちろんホテル業や牧畜、いくつかの工場と商社を合わせたものがマナク・グループということで。
トップはマナク伯爵でシャルさんのお父上だ。
でもマナク伯爵はむしろ広告塔みたいなものらしかった。
事業経営は会社組織がやっている。
マナク伯爵家は大株主といった所だった。
「マナク家というと、やっぱりご家族が来るの?」
聞いてみた。
「判らないですぅ。
ご当主がいらっしゃるのは当然ですがぁ。
シャーロット先輩の他にもぉ子供さんがいるのは確かですしぃ」
信楽さんもよく知らないみたいだった。
多分、関心がないんだろう。
現時点では矢代興業にあまり関係ないからね。
まあいいか。
その後どうなったのかよく知らないんだけど僕にはお呼びがかからなかった。
社長の出る幕じゃないんだろう。
ゴールデンウィーク中だけど暇だったので宝神に行って理事長室でまったりしていると、矢代興業東京本社に出掛けた信楽さんから電話がかかってきた。
ロンズデール御大とご夫人は矢代興業本社を初めとした事業所巡りをやっているらしい。
子供達は炎さんが率いる魔王軍が用意した車に乗せられてどっかに連れて行かれたということで。
妖怪に攫われたのか。
神隠しに遭ったりしないよね?
「大丈夫ですぅ。
静姫様がいますぅ」
信楽さんは静村さんを信頼し切っているからなあ。
僕としては一抹の不安があるんだけど。
だって静姫様が守るのは究極的には静村さんだけなんだよ。
その他の人は切り捨て御免(違)だし。
「ロンズデール家の人の事はぁ、矢代社長がぁ直接静姫様に頼んでますぅ。
万全ですぅ」
よく判らないけど信楽さんが言うんだからそうなんだろうな。
お礼を言って電話を切る。
その日は本当に暇だったので理事長室に閉じこもって過ごした。
信楽さんに頼んで手に入れた大型ディスプレイと最新型デスクトップPCがあるからね。
ゲームにも使えるくらい高スペックだ。
理事長室が更に快適な生活の場になった。
大画面でゲームやったり通信大学の講義を受けたりして、お昼は学生食堂で食べる。
GWというのに営業しているのも凄いけど、回鍋肉とか注文したらすぐに出てきたのには驚いた。
「大型の冷凍冷蔵庫を入れましたので。
今後はレパートリーを広げていく予定です」
顔は知ってるけど名前が出てこないウェイトレスさんが誇らしげに言っていた。
仕事なのか演習なのか。
むしろ趣味になってない?
それにしても矢代興業は本当に金に糸目は付けないよね。
何かあったらすぐに最新型の設備を導入する。
未来人、どれだけ儲けてるのか。
本人たちはまた海外に行ってるらしいけど。
まあいいや。
昼食後に理事長室でネットサーフィンしていたらまた電話がかかってきた。
「お忙しい所を申し訳ありません。
ダイチ様」
比和さんか。
忙しいのは比和さんで、僕は暇なんだけど(笑)。
「何?」
「実はですね。
ロンズデール家からご依頼がありまして。
是非矢代社長の手料理を味わいたいと」
またかよ!
「それって矢代家に来て食べるという事?」
「はい。
接待用の施設には板さんがいますし、ああいった所の設備を部外者が使うのは少し」
なるほど、そうだろうね。
本当の旅館じゃないだろうけど、その来になれば料亭兼旅館が出来そうな家だったもんなあ。
厨房設備も本格的で、家庭料理なんかむしろ作れないと思う。
しょうがない。
「それで今夜いらっしゃると?」
「出来れば。
ダイチ様にお手数をお掛けしてしまうのは心苦しいのですが。
もちろんダイチ様のご都合が悪いと言う事でしたらこの私が責任を持って」
「いやいやいや!
そんなこと言わなくてもやるから!」
僕は慌てて比和さんの口上を遮った。
何か悲壮な覚悟が漏れ出てきていたからね。
下手すると自決しそうなくらい。
「ありがとうござます。
このご温情についてはいつか必ず」
「そんなことはいいから!
比和さんも帰ってくるんだよね?」
「はい。
この比和が持てる力を振り絞ってダイチ様のお役に立つべく徹底奉仕させて頂きます!」
重い!(泣)




