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僕の学校は厨二病 ~厨二病でも平穏に学生生活を送りたい。が無理のようです~  作者: 笛伊豆
第一章 大学生?

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358.「そういえば今更だけど渡辺さんって依代なんだよね?」

 フルコースではあるけどそこはアメリカ産のステーキハウスの料理だ。

 質に加えて量も凄い。

 おかげでデザートのアイスクリームが出る頃にはお腹がパンパンだった。

 僕、普段から小食なんだよ!

(だったら残せばいいだろうが)

 無聊椰東湖(オッサン)はそう言うけど僕、なぜか「出た物は全部食べないといけない」っていう固定観念があるんだよね。

 どうしてなのか自分でも判らない。

 ひょっとしたら子供の頃に童話でも読んだからなのかも。

(童話か)

 違うかもしれないけど「このお米の一粒はお百姓さんが一生懸命お世話をして育てて」みたいなフレーズが蘇ってくる。

 由来は忘れた(泣)。

(何か……時代錯誤というか)

 判ってるよ!

 まあいい。

 アイスクリームの皿が下げられると珈琲が出てきた。

 美味い。

 僕が普段飲んでいる珈琲も美味しいけどそれ以上だ。

 豆の違いというよりは煎れ方なんだろうな。

 ふと見ると向かいの渡辺さんも目を閉じて珈琲を美味しそうに啜っていた。

「渡辺さん、珈琲好きだっけ?」

 聞いてみた。

「好きですね。

 紅茶と同じくらい」

「そうなんだ」

「でもここの珈琲は別物ですね。

 私が普段飲んでいるものより数段上です」

「そりゃプロだからね」

「お肉も美味しかったです。

 パンもサラダも」

 確かに。

 遊園地にあるのが不思議なくらいの「本物」だった。

 実家に居る時に両親と行ったステーキハウスはファミレスだったからなあ。

 肉も大して美味しくなかったしサラダバーやドリンクバーもそれなりだった。

 でもまあ、僕はどっちかというとファミレスの方が合っている気がする。

 マナー通りに食べるのって面倒くさいからね。

 好きなものを好きな様に好きなだけ食べる方がいい。

 そっちの方が食い過ぎずに済むし(泣)。

「今日は本当にありがとうございました」

 突然渡辺さんが言った。

「急に何?」

「デートして頂いた事です。

 矢代さんは忙しいのに私なんかに付き合って頂いて」

 僕は手を振った。

「あー、そういうのはなし。

 僕も楽しかったから。

 こういう機会でもないと僕、宝神から出られないからね」

 これは本当だ。

 仕事もあるけどむしろ安全管理(セキュリティ)上、僕が動くと結構面倒くさい事になるみたいなんだよ。

 もちろん信楽さんみたいな常設の護衛隊がついているわけじゃないけど大学の敷地(宝神)から外に出たらそれなりに警護される。

 ちょっと一人で秋葉原とか原宿まで遊びに行くというわけにはいかない。

 いや行きたいと言えば行けると思うけど矢代警備とかがゾロゾロついてきそうで。

「今回も目立たないように周りに居るとは思うけどね。

 でもデートという事で自由に動けたから」

「それは良かったです。

 私の我が儘に付き合わせてしまったのではないかと」

「渡辺さんのせいじゃないでしょ。

 そもそもプレゼント交換でデート券が当たったからだし。

 このデート自体、プランニングは信楽さん辺りだから」

 そうなんだよ。

 少なくとも僕は一切関係していない。

 デートとは言いつつどうみても関連事業の視察臭いしね。

「それでもです。

 ありがとうございました」

 頭を下げる渡辺さん。

 美少女というよりは綺麗な女性だ。

 ラノベにはあまり出てこないタイプな気がする。

 青春小説のヒロイン?

 そんな美人(ヒロイン)とデートした僕って主人公という柄じゃないんだけどね。

 まあいいや。

「僕の方こそ付き合って貰ってありがとう。

 楽しかった」

「良かったです」

 さて。

 僕はスマホを取りだして言った。

「碧さん?」

『はいはい!

 貴方の忠実なる秘書の碧です!

 何か御用ですか?』

 自動的に電源が入ってしゃべり出すスマホ。

 ていうか多分、今電源が入ったように見えるのは偽装だろうな。

 常にモニターしているはずだし。

「そろそろ帰ろうと思うんだけど」

『判りました!

 お車を手配しますのでしばらくお待ち下さい』

 そう言って自分で切れるスマホ。

 やっぱSFだよね。

「というわけでもうちょっと待機みたい」

「何というか……大変ですね」

 笑いを堪えながら言われた。

 しょうがないでしょう。

 僕、自分で何かやることなくなってしまったんだよ。

 碧さんに言えば全部やってくれる。

 駄目人間になりそう。

 山城くんが現れた。

 ポットを手に聞いてくる。

「珈琲のお代わりはいかがですか?」

「お願いします」

「僕も」

「かしこまりました」

 有能なウェイターになり切っている山城くんは愛想よく言って注いでくれた。

 一礼して去る。

 イケメンだし有能そうだし、どこかに潜り込むのも楽だろうな。

「あの、山城さんですか。

 本当は何してるんでしょうか」

 渡辺さんが小声で聞いてきた。

「知らないし知りたくもない。

 矢代興業ってそういう得体の知れない所があるから深入りしない方がいいよ」

 投げやりに言うと渡辺さんは複雑な表情で頷いた。

 得体が知れない度では多分、渡辺さんの方が上なんじゃないかな。

 あれ?

「そういえば今更だけど渡辺さんって依代なんだよね?」

「そうですが?」

「それにしては普通の女子大生にしか見えないんだけど」

 失礼ですよ、と笑いながら言う渡辺さん。

「私は普通の女子大生です」

「だって静村さんとか」

「あれは静村が異常なんです。

 依代は本来、ただそこにいるだけで自分からは特に何かしたりはしません」

 そうかなあ。

 クリスマスパーティの時なんか、明らかに神通力的な力を使っていたと思う。

「迫水くんは色々やってるみたいだけど」

「あれは迫水自身の性格です。

 依代とは関係ないのでは」

 うーん。

 まあ、本人がそう言うんだからそうなんだろうな。

 気にしない事にしよう。

 藪を突いたら何が出てくるか判ったもんじゃないし。

 すると渡辺さんは珈琲を一口飲んで言った。

「でも矢代さんがそこまで言われるのなら、特別にひとつだけお望みを叶えて差し上げてもいいですよ?

 何がしたいですか?」

 怖っ!

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