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僕の学校は厨二病 ~厨二病でも平穏に学生生活を送りたい。が無理のようです~  作者: 笛伊豆
第一章 大学生?

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31.「仕事で遅くなったら泊まるとか?」

「お断りします」

 比和さんが一刀両断した。

「そんな!」

「そもそも清水さんのお仕事は事務局職員なのでは。

 私が主宰する講座とは専門が違います」

 ぐっと押されて俯く清水さん。

 うーん。

 でも清水さんの話では前世(ゲーム)におけるお役目は仲居とかだったのでは。

 事務局職員よりはメイドに近い気がする。

 つい、うっかり言ってしまった。

「所属は事務局でもメイド講座に参加出来るんじゃないかなあ。

 専門家(プロ)を兼任出来ないこともないと思うし」

 言ってしまってから気づいたけど、これって比和さんへの裏切りなのでは?

「矢代社長!

 ありがとうございます!」

 瞳を輝かせて深く頭を下げる清水さん。

 比和さん、ご免(泣)。

 その比和さんは腕組みして清水さんを睨んでいたけど、溜息をついて言った。

「そうですね。

 判りました。

 とりあえず次のオリエンテーションに参加して下さい」

「はい!

 比和様!」

 頭が床に着きそうなくらい最敬礼する清水さん。

「それでは俺……私たちはこれで」

 服部さんと砧さんが上気してフラフラしている清水さんを引っ張って消えた。

 ボロが出ないうちに撤退か。

 さすが。

 僕はそれを見送った後、恐る恐る比和さんを見た。

 余計な口出しをしてしまった。

「比和さん、ご免」

「え?

 ああ、別に問題はないです。

 ダイチ様」

 比和さんはひょいと肩を竦めて言った。

「むしろ好都合かもしれません。

 私の講座に入れることで監視出来ますから」

「監視って?」

 清水さんが何かやってるとか?

「あの方は油断出来ません」

 比和さんが眉を寄せた。

「どのような手を使ってくるのかと心配しておりましたが、やはり搦め手でした。

 直接アプローチして来ない所はさすがに狡猾です」

「何言ってるの?

 比和さん」

 スパイ合戦でもやってるんだろうか。

 まるで清水さんが比和さんの敵みたいな言い方だけど。

「お気づきになりませんか?

 あの方の目的はダイチ様です」

 ええーっ?

 絶対違うと思うけど。

「比和さんでしょ?」

「そんなはずはありません。

 あの方の前世(ゲーム)がどのようなものだったかは存じ上げませんが、ただ姿形が似ているというだけで私などに執着する理由が見当たりません」

「それだけじゃないと思うけど」

 だって比和さんって清楚黒髪系の美人ではあるけど巨乳でスタイルはいいし、何より雰囲気(ムード)が武家の娘武者みたいなんだよ。

 毅然として怜悧でありながら暖かみがあって、意志の強さが滲み出ていたりして。

 むしろ女性にファンが多いと聞いている。

「そうであったとしても」

 比和さんはきっぱり言った。

「最終的な目的は明らかです。

 私に近づくのはアレです。

 将を得ようとするならまず馬を射るという」

「よく判らないけど」

「私を足がかりにして、ダイチ様の寵愛を得ようとしていると推測します」

 あり得ないよ!

 そんな発想、どこから出てくるんだろう。

 理解不能だ。

 でも比和さん、そう思い込んでいるみたいだからなあ。

 そういえば前にも清水さんが僕の側近になりそうな気がするとか言っていたし。

 厨二病の人たちって思い込んだら巌として譲らない傾向があるからね。

 無駄な抵抗は止めよう。

 僕は比和さんを誘ってもう一度ソファーに座り直した。

 開封してないペットボトルがあったので開けて飲む。

「そういえば今になって聞くのも変だけど、比和さんはこの屋敷に住むの?」

 何せ僕がこの屋敷に着いてからまだ24時間たってない。

 朝から当たり前に比和さんがいたからそう思い込んでいたけど無理があるのでは。

 だって比和さん、バリバリに仕事してるんだよ。

 仕事場は都内とかだったはずだ。

 ここから通勤するのはきつすぎる。

 案の定、比和さんは表情を暗くした。

「本拠はここです。

 ですが別宅というか、都内にも私の部屋はあります」

 やっぱり。

「仕事で遅くなったら泊まるとか?」

「むしろそこから出勤という形ですね。

 清掃事業部のオフィスは都内ですので」

 それはそうか。

 ていうか矢代興業、既に都内に事務所(オフィス)を構えていたとは。

 お金を使いまくっているなあ。

 まあその分は未来人が補充しているんだろうけど。

「じゃあ、ここには週末だけ帰ってくるとか?」

「いえ。

 宝神の教授のお仕事がありますから変則的な勤務になりますね。

 理事会なども宝神(こちら)で開かれますし」

 溜息をつく比和さん。

「本当なら私が住み込みメイドとしてダイチ様のお世話をさせて頂きたいのですが……残念です」

 それはどう考えても無理がある。

 矢代興業の事業部長で役員で、宝神の教授でもある人を一介のメイドとして使えるわけがない。

 でも確かに残念ではあるね。

 本物のメイドさんにサービスされるって有り得ない機会だったのに。

 あれ?

「比和さんが普段いないとすると、この屋敷の掃除とか維持管理は誰がやるの?

 静村さんや(エン)さん?」

 信楽さんは比和さんより忙しいだろうし、どう考えてもメイドが出来るとは思えない。

 ていうか能力的にもったいなさ過ぎる。

 静村さんはペンションの娘だからある程度は可能かもしれないけどね。

 神様に下働きさせるってのはどうも。

 だったら。

「僕がやってもいいけど。

 こう見えても高校時代は矢代家の家政夫(ハウスキーパー)としてやってたんだし」

 軽い気持ちで言ったら怒られた。

「とんでもありません!

 ダイチ様はこの屋敷(矢代家)のご主人様です。

 家政夫などさせられません!」

 それから比和さんはにっこり笑って言った。

「私の講座の目標管理として矢代家の維持管理を設定させて頂きました。

 毎日、メイドがお伺いさせて頂きます」

 公私混同?

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