表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕の学校は厨二病 ~厨二病でも平穏に学生生活を送りたい。が無理のようです~  作者: 笛伊豆
第一章 大学生?

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

312/386

311.「判らない事がある」

 僕と相沢さんはマイクを手に舞台に上がった。

 並んで立つ。

 この体勢なら相沢さんが見えないから歌に集中出来るぞ。

 イントロが終わる。

 僕と相沢さんは声を合わせて歌い出した。

 もちろん僕はオクターブ下げているけど。

「♪そっと開いたドアの向こうに壊れそうな世界はある」

 よし、時間は止まってない。

 歌いながら室内に目を走らせてもタイムストッパーが作動した形跡はないみたい。

 良かった。

 それにしても相沢さんの声が凄い。

 僕の声なんかどっかに行っちゃってたりして(笑)。

 聖女様なのに魔法少女もイケるのか。

 まさか魔女なのでは?

 そのまま歌い続けていたら比和さんと目が合ってしまった。

 物凄く切なそうな目で見ないで!

 違うから!

 別に僕と相沢さんが一緒に銀の庭にいるわけじゃないから!

 駄目みたい。

 これはもう、比和さんたちともデュエットするしかないかも。

 しかし難しいなこの曲。

 正直「静かに寄り添って」の所で調子がズレかけたけど何とか合わせる。

 転調がいきなりなんだもん。

 大体、僕この曲はまともに歌ったことがなかったような。

 そもそも女性ボーカルだから僕には向かないんだけどね。

 必死で相沢さんについていってやっと終わった。

「♪窓辺で囀って何処にも行かないで...」

 メロディーが止まる。

 僕と相沢さんは頭を下げた。

 なぜか揃ってしまった(泣)。

 一瞬の沈黙の後、どっとばかりの拍手。

 そんなに良かった?

「Wonderful!

 You are a songstress!」

 シャルさんが叫びながら相沢さんに飛びついた。

 あ、歌姫(そっち)ね。

 確かに僕の声、自分でも聞こえなかったし。

 だって相沢さんの歌が凄すぎるんだよ。

 オーケストラの隣で歌っているみたいだった。

 シャルさんが相沢さんを放さないのでマイクを置いて舞台を降りる。

 僕の役目は終わった。

 相沢さんの歌はタイムストッパーじゃなかった。

 やっぱ聖歌というか呪歌だからああなったんだろうね。

 それより僕にはやらなきゃならないことがある。

 真っ直ぐに歩いて行って比和さんの隣に座る。

「比和さん。

 僕とデュエットしない?」

「……はい!」

 濁った沼が一瞬で澄んだ湖に変わる。

 間に合った(泣)。

 だって比和さんの背中に石炭袋(ブラックホール)が開きかけていたんだよ。

 銀河鉄道で連れて行かれるみたいだった。

 信楽さんなんかとっくに避難しているし。

 ていうか僕と比和さんの周りには誰もいなくなっている。

 誰一人として勇者はいなかったみたい。

 しょうがない。

 喉がちょっと心配だけど比和さんとデュエットしたいのは本心だ。

 こういう状況じゃないと誘えないしね。

 誘ったら何人とデュエットする羽目になるか判らないし。

 リモコンを弄くっているとイントロが始まった。

 誰?

「シャーロット様と相沢さんですね。

 ご自分で試されるおつもりかと」

 比和さんが教えてくれた。

 なるほど舞台ではシャルさんと相沢さんが肩を寄せ合っている。

 色々欠点はあるけどあのチャレンジ精神は見上げたもんだよね。

 もっともまず僕という生贄を捧げて安全を確保してからやるんだけど(泣)。

 イントロが終わって二人が歌い出す。

 超絶的に美しい相沢さんの声が響いてすぐに途絶えた。

「シャーロット様?」

「どうした!」

 シャルさんがいきなりくたっと崩れ落ちるのが見えた。

 相沢さんが咄嗟に支える。

 凄い動きだったりして。

 引きこもりの癖に体力チート?

 いやそれどころじゃない。

 僕が腰を上げた時にはシャルさんの周りに人垣が出来ていた。

 掻き分けて覗き込む。

「大丈夫なの?」

「……気を失っている、というよりは眠ってるだけだ」

 なぜか迫水くんが言った。

 シャルさんをひょいっという感じでお姫様だっこする。

 この人も凄いよなあ。

 そのままソファーの所まで運んで寝かせると宮砂さんが様子を見てから言った。

「確かに寝ているだけですね。

 熟睡しているみたいです」

「良かったですぅ。

 でもとりあえずぅここで解散にしますぅ」

「そうですね。

 色々有り過ぎました」

「残りは後ということだな」

 僕もシャルさんを見てみたけど本当に寝ているだけだった。

 しかも気持ち良さそう。

 何にせよ大事にならなくて助かった。

 僕はまだ舞台で立ちつくしている相沢さんの所に行った。

「ご免。

 シャルさんが無理言ったせいで。

 大丈夫?」

「……はい。

 私は。

 でもシャーロットさんは」

「相沢さんのせいじゃないから。

 突っ走ったシャルさんが悪いんだよ。

 本人も気にしないと思うよ」

 いやこれは本当。

 シャルさんって色々無茶するけど責任はとるタイプだから。

「大体、僕と歌った時は大丈夫だったんだし、多分シャルさんは徹夜とかしてたんじゃないかな」

「それはどうかな」

 いい加減な事を言って誤魔化そうとしたら迫水くんが割り込んできた。

「シャーロットさんの状況、あれってゲームで言うHPとかMP切れに近い気がする。

 相沢に(エネルギー)を吸い取られたんじゃないのか」

 いやいやいや!

 ここは現実(リアル)だよ?

 そんなはずはないでしょう。

 相沢さんを吸血鬼(エナジードレイン)みたいに。

「シャーロットさんがぁ起きたら聞いてみればいいですぅ。

 私ぃもただ寝ているだけに見えますぅ。

 命に別状はないみたいなのでぇ問題なしですぅ」

 信楽さんも酷いね。

 シャルさんの事なんかどうでもいいと思っているみたい。

 そういえば高巣さんや(アキラ)さんの気配がないけどとっくに避難したか。

 安全管理がしっかりしすぎでしょう!

「判らない事がある」

 迫水くんが言った。

「矢代とデュエットした時は何もなかったんだろ?

 なんでシャーロットさんがダウンするんだ?」

「それはですねぇ。

 矢代教授がぁ……だからですぅ」

 含み笑いする信楽さん。

 何なの?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ