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僕の学校は厨二病 ~厨二病でも平穏に学生生活を送りたい。が無理のようです~  作者: 笛伊豆
第一章 大学生?

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183.「へいお待ち!」

 結局納屋くんの(違)蕎麦屋に入ることになった。

 神楽さんが僕の腕から離れないんですが。

「矢代社長を身体を張って守れと言われてますので」

 それは違うと思う。

 まあいいか。

 納屋くんの案内で蕎麦屋の暖簾(のれん)をくぐると早速声がかかった。

「らっしゃい!

 ……なんだ(わたる)か」

 なぜか客席に座っている頑固そうな初老の人だった。

 でも格好は作務衣というか、まさにこれぞ蕎麦屋! というステレオタイプ。

 ラノベじゃないんだから(泣)。

「お客さん連れてきたんだよ」

 僕たち、お客なの?

 「食っていけ」ってそういう意味?

「それはそれは。

 歓迎しますよ。

 渡のお知り合いで?」

 いきなり下手に出てくる蕎麦屋のご主人。

「僕の如月の同窓生だよ。

 ええと……大地くん」

 納屋くんがとっさに切り替えたみたいで誤魔化してくれた。

 助かった。

『僕の名は大地で通すから』

『了解しました』

 神楽さんとアイコンタクトで打ち合わせする。

 このくらいの芸当は僕にだって出来るんだよ。

「まあ、座ってよ。

 あ、お金はいらないから」

 納屋くんが先回りして言ってくれた。

「何で?

 商売なんでしょ?」

「いやそれが。

 じいちゃんが僕を信用してくれなくてね。

 友達がいるなら連れてこいというもんだから」

 それでお店の前で客引きしていたと。

 そこに引っかかったのが僕たちだったというわけか。

 意味不明だよね。

「話すと長いからまずは注文してよ」

 納屋くんが溜息をつきながら言った。

「食べながら説明するから。

 あ、僕は天ぷら蕎麦で」

 堂々と注文する納屋くん。

 こんなキャラだったっけ?

 如月でヲタク部部長をやっていた頃はもっと出来る人に見えたんだけど。

 まあいいか。

 神楽さんが当然のように僕の隣に座ったのでメニューを渡す。

 あんまりお腹空いてないけど軽食くらいならいけるかな。

「じゃあ僕はざるでお願いします」

「私はタヌキで!」

 神楽さん、遠慮しないね?

『上司が自然に振る舞えと』

 いや自然とは言い難い気がするけど。

「へい!

 天ソバにザルにタヌキそれぞれ一丁!」

 大昔のアニメに出てきそうなかけ声と共に、いつの間にかカウンターの向こう側に移動していた蕎麦屋のご主人が仕事にかかった。

 あの人、本当に納屋くんのお祖父さんなの?

 小声で聞いたら苦笑された。

「本当だよ。

 ちなみに父方」

「じゃあ納屋くんは直系の蕎麦屋ということか」

 つい言ってしまったら真面目に返されてしまった。

「いや、蕎麦屋の跡継ぎについては親父の代で途絶えているからね。

 僕に後を継げとか言う人じゃない。

 そもそも仕事というよりは趣味でやってるみたいだし」

「だったらなぜお正月からお店を?」

「仕事じゃない。

 蕎麦屋としては休業だよ。

 でも、どうも僕が期待外れだったみたいで」

 正月から色々と絡まれてるんだよ、と疲れた表情の納屋くん。

 そうなの!

 何が不満なんだろう。

 これだけイケメンでバイリンガルで、しかも東大に現役で進んだ孫なのに。

 蕎麦屋を継ぐ話はないみたいだから何が気に入らないと?

「それは」

 納屋くんが言いかけた途端に「渡!」と声がかかった。

「いい加減な事は言うなよ」

「判ってるよ」

 苦笑しつつ返す納屋くん。

 謎だ。

 納屋くんは色々言われているにしてはお祖父さんを嫌っているわけでもないみたいだし、むしろ好意的かも。

 お祖父さんの方の反応もおかしい気がするけど。

 まあいいや。

 よその家の事情に首を突っ込む趣味はないしね。

 それからしばらく3人で雑談した。

 神楽さんは僕たちと初対面のはずなんだけど、上手く話を合わせてくれて助かった。

 やっぱりそういう訓練を受けているんだろうか。

 潜入捜査とか(スパイ)とか。

 聞くに聞けないのでそのままになってしまった。

「へいお待ち!」

 やっぱり大昔のグルメ漫画に出て来そうなかけ声と共に僕たちの前にトレイが運ばれてきた。

 何とお祖父さんが自分で。

「手伝おうか?」

「今日のお前はお客さんだ。

 座ってろ」

 ウェイターまでこなすお蕎麦屋さんだった。

 僕たちの前にそれぞれトレイが置かれると、なぜか4つ目のトレイを納屋くんの隣に置いて自分も座り込むお祖父さん。

 一緒に食べるの?

 いや別にいいけど。

 でもこの展開、ラノベにしたって意味不明だよね。

 何で僕、正月から高校の同窓生の実家で蕎麦を食べなきゃならないんだろう。

 それも蕎麦屋のご主人と一緒に。

 と嘆いていても始まらない。

 僕は覚悟を決めて箸をとった。

「頂きます」

「「「頂きます」」」

 なぜか一瞬遅れて続く3人。

 そのまま無言で食事に突入する僕たち。

 うん、おいしい。

 お蕎麦は打ちたてに限るよね。

 ちら見すると納屋くんはもちろんお祖父さんも一心に蕎麦を啜っている。

 ちなみにお祖父さんもざるだった。

 まずお祖父さんが食べ終え、続いて僕がゴールインする。

 納屋くんと神楽さんはデッドヒートを演じていたけどほとんど同時にゴールした。

 写真判定かな。

「ところで」

 いきなりお祖父さんが言った。

「大地さんと言ったかな。

 なかなかの食いっぷりだった。

 気に入った」

「こちらこそ。

 美味しかったです。

 久しぶりに本格的なお蕎麦を食べた気がします」

 無難に返しておく。

 いや、嘘じゃないよ?

 打ち立ての蕎麦なんか本当に久しぶりだったし。

 大体僕、普通ならこういう蕎麦屋なんかには入らないからね。

 ファミレスばっかで。

「お嬢さんも潔い。

 失礼だが今時珍しいな」

「神楽と言います。

 ご馳走様でした」

 神楽さんも神妙に応えた。

 ここは自然に流すしかないからね。

 それにしても納屋くんのお祖父さん、一体何がしたいんだろう。

「渡。

 見直した。

 食いっぷりもそうだが、お前にこれほどの知り合いがしたとはな」

「うーん。

 知り合いというか」

 納屋くんは苦笑するしかないみたい。

 いや、知り合いではあるよ?

 よく知らないけど。

「遠慮するな。

 わしは誇らしいぞ。

 まさか本当に矢代大地殿を連れてきてくれるとはな」

 ニヤリと笑うお祖父さん。

 バレてた?

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