表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕の学校は厨二病 ~厨二病でも平穏に学生生活を送りたい。が無理のようです~  作者: 笛伊豆
第一章 大学生?

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

181/386

180.「そんなに簡単な事なの!」

「というのは冗談だ」

 ずっこけた。

「会社辞めたいんだけど」

「無理だ。

 実は最初に黒岩くんたちに持ちかけたら断固拒否されてな」

 親父が頭を掻きながら言った。

「矢代興業のトップは大地しか考えられないそうだ。

 もし大地が社長(トップ)を辞める時があるとすれば、それはもっと上の役職になる時だと」

 何てことを!

 ていうか黒岩くん、頭ボケてない?

 何で僕みたいな案山子を社長にしとこうとするんだよ。

 いや違うか。

 もしかして案山子が欲しいのかも。

「案山子だったらもっといい人がいくらでもいそうなのに」

 ぼやいたら否定された。

「違う。

 彼らは本気で大地を評価しているぞ。

 矢代興業がまとまっているのは(トップ)に大地がいてくれるからだと」

 あー、それはそうかも。

 何せ厨二病患者の群れだし、しかも色々と派閥があるからね。

 帝国と王国はまあいいとしても宇宙人とか超能力者とか。

 妖怪や神様が出てきた時点でもう、普通の案山子ではまとめきれなくなってるよなあ。

 なぜか僕は全員と馴染めるんだけど。

 考えてみたらこれってヤバくない?

(もう手遅れだ)

 そうですね(泣)。

 まあしょうがない。

 僕ももう2年半以上矢代興業の社長(案山子)をやっていて慣れてるからなあ。

 何とかやっていける気にはなっていたんだけど。

 でも駄目だ。

 矢代興業が株式上場しちゃったら多分、商工会議所とかに所属しないといけなくなる。

 あれ、会社が所属するだけじゃなくて経営者が委員とかやらされたりしない?

 確か某ビジネス漫画でもそういう展開になっていたりして。

「とにかく僕は嫌だから」

 とりあえず主張する。

 何が嫌なのか自分でもよく判らないけど。

「まあそう言うな。

 矢代興業の株式上場は規定事項だ。

 いきなり東証一部だぞ」

 そんなこと言われてもよく判らないし。

 興味もないのでパスしていい?

「駄目だ。

 今日はとことん話し合う予定だ」

「私達が大晦日とはいえわざわざ家に帰ってきたのはその為なのよ」

 自分の家に帰るのがそんなに大変な事なんだろうか。

 これだからブラック企業の社員は。

「とことんってもう夜中なのに」

「明日は休みだ。

 正月だし」

「久しぶりに親子水入らずで徹夜ね」

 それは水入らずとかじゃないよ!

 こんなことなら帰省するんじゃなかった。

 でももう遅い。

 ここで話し合いを拒否しても何にもならないだろうなあ。

 親父は矢代興業が上場するのは規定事項だと言ったんだよ。

 つまりもう決まっていて、僕が何をしようが覆せない。

 僕に出来るのは会社辞めることくらいだろうけど、実はそれも難しい。

 だってみんなの反対は別にしても、僕は矢代興業の大株主だから。

 会社を辞めたりしたら個人でその大問題に立ち向かわなければならなくなるんだよね。

(そうだ。

 矢代大地(ガキ)が今まで無事だったのは矢代興業に守られていたからだ。

 その傘の下から抜け出すのは自殺行為だ)

 無聊椰東湖(オッサン)に言われるまでもない。

 多分、会社辞めた途端にパパラッチとか新聞記者とか、あるいは詐欺師や投資会社とか寄付金狙いの団体とかが押し寄せてくるんだろうな。

 どれくらいあるのか判らないけど僕が持っていることになっている矢代興業の株はそれくらいの値打ちものなんだよ。

 今まで考えないようにしていたのに、ついに現実に追いつかれたか。

 何でこんな事になったんだろうなあ。

「落ち着いたか」

 親父に言われて頷く。

「判ったよ。

 その秘策とやらを聞こうじゃないの」

 親父と母さんが同時に微笑した。

 やれやれ。

 それから僕は改めて珈琲を煎れ直させられて、リビングで今年初めての家族会議に臨んだ。

 途中でお腹が空いてきたのでおせちを広げてみんなで食べる。

 正月の朝に食べているんだからある意味正しい食事かも。

 話がまとまったのは夜が明けた頃だった。

 結局徹夜してしまった。

「やれやれだな」

「今年初めの大仕事ね。

 大地も頑張ったわね」

 誰のせいだと思ってるんだよ(泣)。

 僕たちはリビングのソファーでそれぞれ伸びた。

 珈琲を何杯飲んだかなあ。

 お腹がガボガボだ。

「まあ、これで今後の方針も大まかには決まったわけだな」

「ほっとしたわ。

 大地には迷惑かけるけど」

 もういいよ。

 僕は溜息をついた。

 眠気は感じない。

 まだ身体が興奮しているんだろうな。

 脳がまだ高速回転しているみたい。

 色々と考え過ぎたもんね。

 親父達の「秘策」は何てことない、単に僕が最高経営責任者(CEO)と社長を降りるということだった。

 つまり役職としての矢代興業の社長を辞めることで会社の代表者として矢面には立たないで済むようになる。

 最高経営責任者(CEO)についてはとりあえず続ける。

 なので矢代興業は僕の意志で動くというか方向性が決まるらしい。

 適当な時期に誰かに押しつけてフェードアウトするということで。

 この辺はよく判らなかったんだけど、そもそも日本の会社では社長がCEOの役を果たしていたとか。

 最高経営責任者(CEO)とか最高執行責任者(COO)とかの概念はアメリカから入って来たもので、本来の日本にはなかったということだった。

 親父が説明してくれた。

「取締役とか専務とかは役職だからな。

 社長もそうだ。

 だが最近ではそういった肩書きと執行役員を分けて設定する企業も増えていてな」

「どう違うの?」

「はっきり決まっているわけではないが、そもそも『取締役』という役職は事業を取り締まる役目だ。

 社外取締役というのがそれだな。

 つまり会社や社長がやっていることをチェックして是正勧告したり止めさせたりする」

 そんなことが出来るのか!

「そうよ。

 例えば大地を首にするのなら取締役会で可決すればいい」

「そんなに簡単な事なの!」

 だったら誰か僕を辞めさせてくれないだろうか。

 無理か(泣)。

「だから大地は社長を降りてとりあえず取締役で最高経営責任者(CEO)になればいい。

 経営者としては今まで通りだが、例えば社長として官庁や商工会議所とかと付き合う必要はなくなるぞ」

「それいい!」

 なら決まりだな、ということで終わるかと思ったけど違った。

 親父達はタブレットを持ち出して来て、今まで僕がやっていた矢代興業社長やら宝神総合大学理事長やら特任教授やらの仕事の内容を根掘り葉掘り聞き出したんだよ。

 ぶっ続けに喋らされた僕がグロッキーになったのも当然でしょう。

「このくらい平然と出来るようにならなければ立派な経営者にはなれないぞ」

 なりたくないよ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ