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僕の学校は厨二病 ~厨二病でも平穏に学生生活を送りたい。が無理のようです~  作者: 笛伊豆
第一章 大学生?

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177.「それはそれでちょっと寂しいよな」

 両親が帰ってきたのは年が変わる直前だった。

 紅白歌合戦は観なかったけどN○Kのカメラが日本全国のお寺を回って色々な人が鐘を突く映像を見ていたらいきなりドアが開いて二人が入って来た。

「あー、暖ったかい!」

「久しぶりだな家が暗くないのも」

 第一声がそれですか。

「お帰り」

「おおダイチ。

 戻ってたか。

 珍しいな」

 自分が帰ってこいと言ったんでしょ!

「冗談だ」

 さいですか。

「とりあえずお風呂に入ってきて。

 味噌汁とか暖めておくから」

「すまんな」

「やっぱり大地はいいわあ。

 息子を産んでおいて良かった」

 騒ぎながらリビングから出て行く両親。

 ことあるごとに僕の存在意義(レゾンデートル)を再確認するのは止めて(泣)。

 僕はキッチンテーブルの上におせちを広げてから用意しておいたお味噌汁を温めた。

 本当は年越し蕎麦とかの方がいいんだけどないものはしょうがない。

 お酒の用意もしておく。

 その前に珈琲を煎れ直さなければ。

 シャワーを浴びてきたらしくてほかほかになった両親がリビングに戻ってきた時にはとっくに年が変わっていた。

 何の情緒もないなあ。

 別にいいけど。

 とりあえず二人には珈琲を勧めておいて、僕は食卓を整えた。

 何か違う気がするけどこれしかないからね。

 明日の朝食はどうしよう。

 そんな僕の憂いにまったく気づかずに両親は珈琲を飲みながらテレビを観ていた。

「この寒いのによく寺なんか行くよな」

「あれは神社じゃない?」

「どっちでもいいのか?」

 どうでもいいから食事にしませんか?

 僕はテレビの前に出て言った。

「とりあえず食べようよ。

 腹が減った」

 呆気にとられる両親。

「すまんすまん。

 さっきまでパーティに出ていたもんでな」

「ダイチが先に食べていいのに」

 それでおせちなのかーっ!

 確かにおせちって正月に食べるものだった。

 夜中ならお蕎麦だよね。

「ならいいよ」

 ガックリきてそのままリビングを出ようとしたら両親が縋りついてきた。

「ちょ、ちょっと待て大地!」

「ご免なさい!

 そんなつもりでは」

 振り払ってドアを開ける。

「いいよ。

 さっきカップ麺食べたから」

 あれ、うどんだったけど年越しでいいんだろうか。

 まあどうでもいいや。

「行かないでーーっ!」

「俺たちが悪かったっ!

 みんなでおせち食べよう!」

 結局説得されてしまった。

 渋々食卓に戻ったけど両親は腹一杯で食えないらしい。

 まあ僕もあまりお腹空いてないしね。

 おせちをしまってからお味噌汁だけを飲む。

 うん、美味いじゃないか!

 安いレトルトだけど(泣)。

「本当美味しい!」

「これはアリだな」

 お世辞なのか本当なのかよく判らないなあ。

 二人とも海千山千のコンサルタントだから演技なんかお手の物だし。

 もう面倒だからどうでもいい。

 僕はお味噌汁を飲み干してから言った。

「それで?

 僕を呼んだのは何かあるんじゃないの?」

 両親が同時に停止した。

 それから顔を見合わせて頷き合う。

 この辺りはツーカーなんだよね。

 愛があるかどうかは別にして僕の両親ってお似合いだとは思う。

 夫婦というよりは戦友みたいだけど。

「こんなことを言うのも今さらだが」

「私たちは貴方(大地)の親なのよ。

 子供と会いたいのは当たり前でしょう」

 うーん。

 何か両親のキャラに合わないよね。

矢代大地(ガキ)って鬼畜だよな)

 無聊椰東湖(オッサン)、何が言いたいの?

(別に)

 なら黙っててよ!

「だったら宝神(うち)に会いにくればいいのに」

 ちょっと嫌味を言ってあげる。

 ちなみに僕の方は、今考えてみたら自分でも驚くくらい親に会いたいと思わなかった。

 ホームシックなんか欠片もなかったし、あの矢代家の方が実家なんじゃないかと思えるくらいで。

 僕って冷たい?

(いや。

 その点は理解出来る)

 そうだよね。

 だって高校までと実質的に変わらないんだもん。

 両親とは滅多に会わなかったからなあ。

 それで寂しいとも思えなかった。

 やっぱ僕、欠陥品なのかも。

「……それを言われると一言もないな」

「そうね。

 忙しい、という言い訳は無意味だし」

「まあ、僕の方も帰って来る気にはなれなかったけどね」

 だってこの家に戻っても両親はほぼ確実にいないんだもん。

 意味ないよね?

「そういう風に育てたのは俺たちだ」

「後悔しているわけじゃないのよ?

 私達も……似たような育ちだし」

 僕は驚いて両親の顔を見た。

 そうなのか。

 確かに僕の家って親戚とかほとんどいない、じゃなくて知らないからなあ。

 両親の「実家」に遊びに行った事もない。

 帰省というものもしたことがない。

 何てこった。

「俺たちは性格的にそもそも家族べったりという方じゃないからな」

「むしろ煩わしいというか。

 二人とも高校出たら実家から逃げた口」

「知らなかった」

 でもまあ、頷ける。

 両親が肉親とか親戚に対して凄く淡泊な所があることはよく知っているし共感出来る。

 だって僕もそうだから。

 時々昔のドラマに出てくるみたいな、やたらに世話を焼きたがる親だったら僕は耐えられないかも。

「判った。

 僕は全然恨んでないし気にもしてないから」

 宣言したら親は二人ともちょっと情けない顔付きになった。

「それはそれでちょっと寂しいよな」

「というよりはショック。

 私達、親として駄目だったわよね?」

 そういうこと言ってるんじゃないから!

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