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僕の学校は厨二病 ~厨二病でも平穏に学生生活を送りたい。が無理のようです~  作者: 笛伊豆
第一章 大学生?

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158.「何か言いたいことってある?」

 とりあえず土下座を解除して貰う。

 ソファーに座らせて聞き出した(エン)さんのお願いというのは単純な事だった。

 魔王軍の集会に出ろと?

「違います!

 そうではなくて末長家臣団の年納め行事に是非参加して頂きたく」

 よく判らないけどそういう集まりがあるそうだ。

 でも家臣団って、いつの時代だよ(笑)。

「それってこないだの広末家みたいな?」

「そうです。

 あれは家臣団のひとつである広末家の集まりでしたけど、豊に誘われて参加なさったんですよね?」

 思い出した。

 たまたま魔王軍の若頭か何かだった巨漢(豊くん)と出会って広末家に連れて行かれたんだっけ。

 そしたらいきなり宴会になってしまって。

「参加したわけじゃないけど」

 僕をサカナにして騒ぎたかっただけだと聞かされたんだよね。

 豊くんの妹の美少女の、ええと憐さんが(エン)さんの腰元組に入るとか入らないとかよく判らない事を言っていた。

「そういえば(エン)さんの腰元組って何なの?」

 聞いてみた。

「あれは……まあ、魔王軍の女性版みたいなもので」

 口ごもる(エン)さん。

 やっぱ変な組織なんだろうな。

 まあいいけど。

「つまり末長家の配下には豊くんの実家みたいな『家』がいくつもあるわけ?」

「はい。

 家臣団とか言ってますが戯れ言です。

 身分なんかありませんし。

 でもそれが定着してしまっていて」

 ノリがいいんだろうか。

「それで年末にその配下連合か何かの集会があると」

「そうなんです。

 それでですね」

 (エン)さんは羞恥に身もだえながら言った。

「今年は是非、私の婿殿である矢代社長を連れてこいと」

 何だってーっ!

 何でそんなことになってるんだよ!

 思わず立ち上がった僕に対して再びジャンピング土下座する(エン)さん。

「すすすすみません!

 私もそんなことになっているなんて知らなかったんです!

 気づいた時には事実として広まっていて!」

「いやだって、末長さんが否定すればそんな噂は一発で」

「それが!

 オヤジはニヤニヤするばかりで否定してくれなくて!」

 あの親父ーっ!

 冗談好きにも程がある!

 面白そうだからとかいう理由で黙認してるな?

 でもマジで冗談じゃないぞ。

 比和さんとかが聞いたらどうなることか。

「いえ。

 信楽さんに相談したら比和さんを呼ばれまして」

 ぶちまけられたと。

 判る気はする。

 こういうのって変に隠していてバレるのが一番まずいんだよ。

 隠すという行為自体が問題になってしまう。

 だから信楽さんは敢えて比和さんに教えたんだろうな。

「それで?」

「比和さんにも納得というか問題解決するために矢代社長に協力して頂くことを承認して貰いました。

 怖かった」

 (エン)さんが目を逸らしながら言った。

 それは怖いだろうなあ。

 僕だって怖いよ。

「比和さんの様子はどうだった?」

 気になるから聞いてみた。

「それが。

 思ったより冷静でした。

 むしろ私に好意的で」

「へえ」

 比和さんらしくないなあ。

 もっとも比和さんって何か変な身分制度的な規範に従っているみたいなんだよね。

 江戸時代の武家というか。

 正室とか側室とか当たり前みたいに言っていたし。

 それって現代日本の法律では重婚になるんだけどいいんだろうか。

 まあいいか。

「すると今日、比和さんたちがいないのって」

「自力で矢代社長に承認して頂くようにと命令されまして」

 (エン)さんはがっくりと首を落とした。

「試練です。

 どうしようかと」

 そうかなあ。

 だって(エン)さんってクリスマスパーティの時も全然そんな事で悩んでいるような雰囲気なかったけど。

 あれかな。

 遊ぶ時は悩み事なんか忘れて遊ぶタイプ?

「というわけで。

 矢代社長。

 お願い出来ますか?」

 縋るような目で見られて思わず視線を逸らせてしまった。

 うーん。

 どうするかなあ。

 ていうか問題が違うような。

「その、僕が(エン)さんの婿になるとかいう話はどうなの?

 そんな集まりに出たら噂を肯定することになっちゃうのでは」

「そこら辺は大丈夫です」

 (エン)さんは自信満々で言った。

「矢代社長が出てくれれば親父が責任を持って婿入りなどないと明言すると言質をとってます。

 もともと戯れ言(ジョーク)なんですよ。

 そもそも私が婿取ってどうするんです?」

 いやそう言われてもね。

 魔王就任?

(まあ確かにな。

 末長家は典型的な地方の旧家だからな。

 当主にすべての権限が集中するはずだ。

 そんな家の婿に入ったって使用人になるだけだぞ)

 確かに。

 (エン)さんは末娘だと言っていたから、お兄さんか誰かが次期当主のはずだよね。

 良かった。

「つまりそれって」

「はい。

 みんな私をネタにして遊んでいるだけです(怒)」

 忌々しそうに言い放つ(エン)さん。

 なるほどね。

 確かに僕が広末家にお邪魔した時も、駆けつけて来た人たちはどっちかというとお祭り騒ぎ的なノリだったからなあ。

 騒ぐ口実があれば何でもいいというか。

 しょうがない。

「判った。

 出るよ」

「良かったーっ!

 ありがとうございます!

 矢代社長」

 (エン)さんが大袈裟なくらい全身で安堵感を表現していた。

 僕はずっと黙ってニコニコしていた静村さんを見た。

「何か言いたいことってある?」

「別にないです。

 ただ」

「ただ?」

「面白いなあと思って。

 人間社会って広大ですよね」

 何それ。

 ネットは広大だわの神様版?

 まあいいや。

「それでその集会だか何だかはいつ?」

 僕、年末には実家に帰らないといけないんだよね。

「年納めなので。

 明日ですね」

 そんなに急ぎなの?

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