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僕の学校は厨二病 ~厨二病でも平穏に学生生活を送りたい。が無理のようです~  作者: 笛伊豆
第一章 大学生?

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14.「それが途中で挫折しまして」

 そうなんだよ。

 僕も気がついてぞっとしたけど心理歴史学講座の教授をやっても大学を卒業出来るわけじゃない。

 つまり学士号はとれない。

 学歴は高卒のまま。

 まあ、企業経営に学歴はいらんと言われればそうかもしれないけど、僕は臆病な小市民だからね。

 将来、矢代興業が潰れるとかして再就職しようとした時に高卒だったら拙い気がする。

 かといって別の大学に通うというのは無理がある。

 もう新学期が始まってしまっているから。

 よって学生になるとしたら選択肢は酷く限られる。

 浪人でもしない限りは。

 ああ、そういうことか。

「僕が学生をやるには宝神(うち)に通うしかないことは判りました。

 でも僕を引き受けてくれるような講座がないと」

 ていうか僕、別に何かの専門家(プロ)になりたいわけじゃないしね。

 完全週休2日の正社員(サラリーマン)になりたいだけで。

 専門職大学に一番向かないタイプなのでは。

 それにしても僕、嫌われているのかしら。

「そうですな。

 信楽殿が言われるには、他の講座の方々が矢代さんを引き受けたがらないのは畏れ多いからということのようです。

 矢代興業の社長で宝神総合大学の理事長で教授を学生として引き受けられるような覚悟は持てないと」

 うーん(泣)。

 それはそうだろうなあ。

 宝神の理事長もそうだけど矢代興業では僕は社長だ。

 全ての社員にとって上司。

 そんな奴を教えたい人がいるわけがない(泣)。

「でもどうして末長さんが」

「信楽殿によれば、私が唯一無二の存在なのだそうです。

 矢代さんを教えても角が立たない立場であり、矢代興業とは関係がない。

 年齢的なものもありますし、幸い私は宝神国際大学の理事長をしておりましたもので、一応は経営者を名乗れます。

 そんな私が講座を立ち上げるとしたら、やはり経営学講座ではないかと」

 それ、信楽さんが考えたんですか。

 そうだろうな。

 相変わらずのアクロバットだ。

 つまり僕が大学生をやるためにはどっかの講座か専攻に所属しなきゃならないけど、そもそも僕は専門家になりたいわけじゃない。

 (アキラ)さんや高巣さんたちと同じような立場なんだよ。

 でもあっちは僕を生贄(教授)にしてまんまと心理歴史学講座に逃げ込んだと。

 まあ、実際問題としてあの二人が宝神(うち)で学生をやるのは僕より難しいかもしれない。

 身分が身分だからね。

 宝神(うち)以外だったら一般人としてやっていけるかもしれないけど、ここでは駄目だ。

 それこそ畏れ多くて教えることなんか出来ないだろうなあ。

 黒岩くん(相談役)神籬さん(女官)なら前世でも高巣さん(王女様)を教えていたらしいから可能かもしれないけど、あの連中は東大に逃げ込んでしまって出てこない。

 だから僕に押しつけてきたわけで。

 僕は溜息をついた。

「大体、判りました。

 だから末長さんが僕を学生として引き受けて下さると」

「そうなのですが、先ほども言ったように私が矢代さんに経営学を教授することなど不可能ですからな。

 経営学講座とは名ばかりですよ」

 にんまりと笑う末長さん。

 これで学長兼名誉教授なんだってさ(笑)。

 まあ僕が理事長兼特任教授というのもアレだけど。

 覚悟を決めるか。

「まだちょっと混乱してますが判りました。

 よろしくお願いします」

 そう言って頭を下げる。

「こちらこそ。

 いやそれにしても何ですな。

 この歳でいきなり教授などと呼ばれても混乱するばかりです。

 まあ、夢が叶ったと言えなくもないのですが」

 ほう。

「夢とは」

「何、若さ故の過ちです。

 一時期、教師を目指していた事がありまして」

 それはまた。

「先生ですか」

「古い熱血青春ドラマを見て軽く影響されたわけで。

 もちろんそんな方向は無理ですのですぐに諦めた次第です。

 もっとも大学では教職課程をとったりして、訳ながら女々しいというか」

 そんな過去が。

 教職課程ってあれだな。

 小学校から高校までの学校の教諭になるのは教職免許が必要だということは知っている。

 ちょっと調べたんだよね。

 その免許って実は教育学部とかの専門学部学科に行かなきゃ取れないわけじゃない。

 他の学科、例えば文学部とか理学部に通いながらでも教職単位をとって教育実習とか行けば、特定分野の教職免許が貰える。

 文学部だと国語の先生、理学部だと理科や数学の先生みたいな。

 末長さんが言った教職課程ってそれのことだろう。

「失礼ですが教職免許をお持ちなのですか?」

 聞いてみた。

「それが途中で挫折しまして」

 末長さんが頭を掻いた。

「講義を受ければ取れる単位はまだしも、教育実習などは生半可な覚悟では無理です。

 早々に手を引きました」

 さいですか。

 まあ別にいいんじゃない?

 青春の思い出としてなら。

 どっちにしても末長さんは末長家を継がなきゃならなかっただろうし。

 敷地内に大学を作ってしまえるほどの大地主の当主だもんね。

 すると末長さんが姿勢を正した。

 僕も釣られて背筋を伸ばす。

「そういうわけで、はなはだ頼りない教授ではありますが、よろしくお願い致します」

「こちらこそ。

 頑張ります」

 つい言ってしまったら苦笑された。

 僕も苦笑を返す。

 頑張るって何をどうするんだろう。

「この講座ですが」

 聞いたら頷かれた。

「週に一度、目標管理の進捗状況を報告して下さい。

 それを持って経営学講座の演習とします」

「はあ……僕も心理歴史学講座で似たような事を言ったんですが、何を目標にすればいいんでしょうか」

 僕、経営の事なんか判らないし。

 すると末長さんが真剣な表情になった。

「私がこのような事を申し上げるのは釈迦に説法かもしれませんが。

 経営とはつまるところ結果です」

 そうなのか。

 まあそうだよね。

 学問じゃないんだよ。

 試験に受かるとか論文を発表するとかは無意味だ。

 途中経過も関係ない。

「結果ですか」

「矢代理事長……いや社長の目標とは何でしょうか。

 売り上げ増か利益追求か。

 あるいは多方面への事業発展や海外進出等、色々あると思います。

 それを書けばよろしいのではないかと」

 そうか。

 僕、勘違いしていたみたい。

 宝神総合大学は専門職大学なんだよ。

 つまり経営学講座は文字通り経営の専門家(プロ)を育てる場所と言っていい。

 僕の目標というか課題は矢代興業の事業だ。

 宝神も入るかも。

 だから僕は社長や理事長として何をするかを考えればいいということか。

 でも僕、経営の事なんかほとんど知らないからなあ。

「事業はちょっと。

 自分で担当しているわけじゃないので」

 黒岩くんや比和さんが頑張って利益を稼ぎ出す事を僕の目標や実績というのは無理があるよね。

「ならば人材育成はどうでしょうか」

 末長さんが悪魔的な笑いを浮かべた。

「それもまた経営の重要な柱です。

 例えば心理歴史学講座の学生を育てるなどという目標はいかがでしょうかな」

 それでいいの?

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