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僕の学校は厨二病 ~厨二病でも平穏に学生生活を送りたい。が無理のようです~  作者: 笛伊豆
第一章 大学生?

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140.「あれはロックじゃないですぅ」

 信楽さんが「矢代社長のぉお部屋の鍵ですぅ」と言って渡してくれたのは薄いカードだった。

 カードキーという奴か。

 表面に番号が書いてある。

 廊下を歩いて行くと館内図を見つけたので大体の方向に向かう。

 とても判りやすかった。

 エレベーターに乗って最上階へ。

 やっぱしスイートルーム臭いな。

 エレベーターを降りるとそこは豪華だった。

 廊下なのに大輪の花を生けた花瓶とかでかい絵とかがあるんだよ。

 益々持って居心地が悪いけどしょうがない。

 やたらに広い廊下を進んで突き当たりのドアが僕の部屋らしかった。

 ドアについているスロットにカードを差し込むと鍵が開いたので踏み込む。

 常夜灯の小さな灯り以外は真っ暗だったりして。

 その常夜灯の下にスロットがあるのでカードキーを差し込んだら明るくなった。

 そういう仕掛けか。

 つまりこのカードキーは所有者が常に持っている必要があるから不在の間は部屋は使えなくなると。

 なぜって外出から帰ってきてドアを開けようとするとカードキーがいるんだよ。

 カードを部屋に残したまま外出したら大変だ。

 まあフロントに言えば開けてくれるだろうけど。

 それにしても僕、こんな仕様のホテル泊まるのは初めてだったりして。

 外国のホテルは一人部屋ってなかったからね。

 ついでに言うとリゾートホテルも皆無だった。

 ひたすらビジネスだけで(泣)。

 まあいい。

 部屋はやたらに広かった。

 ドアのそばにはお風呂兼用のトイレがあるんだけど、そのトイレは風呂場の中で半透明な壁で仕切られていた。

 普通のビジネスホテルだと湯船のすぐ横に便器があるもんね。

 仕切があるだけでも凄い。

 まあ、誰かがシャワー浴びているときにトイレには入り辛いと思うけど。

 その向こうがワンルームになんだけど物凄く広かった。

 ていうか長い?

 リビングベッドルームというのか、ソファーセットの向こう側にそのままベッドがある。

 ツインだけどベッド自体はセミダブルだ。

 良かった。

 僕、ベッドは広くないと駄目なタイプだから。

 ベッドの向こうは壁一面がカーテンになっていたので開けて見たらベランダに通じていた。

 いやひさしがないからバルコニーか。

 ホテルだとそうだよね。

 上は開けっぴろげだからここは最上階だ。

 やっぱスイートかよ!

 ベッドからして2人用、ていうか多分新婚さん用臭いけどそこに(モブ)一人。

 経費の無駄遣いだ(泣)。

 まあしょうがない。

 僕の荷物がクローゼットの前に置いてあるのを確認してからとりあえずシャワーを浴びる。

 一応下着とかも着替えを持ってきて良かった。

 バスタオルで身体を拭きつつバルコニーを見てみたけどクリスマスだからね。

 とても外に出る気力はない。

 ウォークインクローゼットを開けると浴衣一式があったから着替える。

 一応みんなを待たせているから急がないと。

 浴衣の上にガウンを着てスマホだけを持って外に出る。

 あやうく思い出してカードキーをスロットから引き抜くと灯りが消えた。

 何かビジネスライクだけど、本当は二人で使う部屋だからね。

 部屋を稼働させるためには片方のカードキーで十分だから不在の時も灯りを消さなくてもいいんだろうな。

 ちなみに空調はカードキーの有無に関わらず動いていた。

 それはそうだよ。

 戻ってきてエアコンが停止していたら夏や冬は悲惨なことになるだろうし。

 さてと。

 歩き出してから気がついた。

 どうやってパーティ会場に戻ればいいんだろうか。

(確かに。

 俺も覚えてないな)

 無聊椰東湖(オッサン)も駄目か。

 幸いスマホがあるから信楽さん辺りに聞けば教えてくれるだろうけど、あまりにも迂闊だ。

 結局、僕はフロントまで行って会場の場所を聞いたのだった。

 エントランスは屋内なのに寒かった。

 まあこれだけ広ければしょうがない。

 教えられた道順を辿ってクリスマスパーティ会場に戻る。

 ドアを開けるとそこはなぜかディスコもしくはライヴハウスになっていた。

 真っ暗な中にミラーボールの光が乱れ飛んでいる。

 スクリーンには髪を振り乱して熱唱する美少女の姿が……って渡辺さん?

 大音量のビートに乗って英語の歌詞が叩き付けられる。

 何人か踊ってない?

「ダイチ様!」

 白い影がぶつかってきたかと思ったらしがみつかれた。

 この胸の感触は。

「比和さん。

 どうしたの?」

「いえ、申し訳ありません。

 ようやく戻って頂けたのかと思うと」

 いやそれは戻りますけど?

 比和さんに引っ張られてソファーに座る。

 手を放してくれない(泣)。

 暗いからまあいいか。

 ソファーの位置関係が変だと思ったら、演台の前を開けるためにソファーを移動させたらしい。

「矢代社長ぅ。

 お部屋はぁすぐ判りましたかぁ?」

 よく見えないけど信楽さんらしい影が聞いてきた。

「判った。

 シャワー浴びて浴衣着てきた」

 言いながらガウンを脱ぐ。

 暑いんだよ!

 熱気が充満していたりして。

 何かもう学生の宴会やパーティじゃなくなっているみたい。

 僕たちはもう大人だということか。

 いや。

 渡辺さんと底水くんはまだ高校生だし、信楽さんやパティちゃんに至っては高校生ですらないんじゃない?

 だんだん目が慣れてきたら真ん中で激しく踊っている姿が目に入った。

 浴衣が乱れてアレだ。

 パティちゃん。

 いつもとイメージが全然違うんですけど?

 ロックンローラーだったのか!

「パトリシアさんはぁ、もともと身体を動かすのがぁ好きみたいですぅ。

 魔王軍やぁ護衛兵とぉよくバスケットなんかしてますぅ」

 何でも知っている信楽さんが教えてくれた。

 そうなの。

 てっきり古いアニメのヲタクでインドア派だと思っていたのに。

 イメージが崩れて行くなあ。

「渡辺さんも意外。

 ロックなんか歌うんだ」

「あれはロックじゃないですぅ。

 ていうか分類上はぁロックですがぁアニソンですぅ」

 何と。

 ちょっと聞いてみたらすぐに判った。

 これはあれだ。

 ゲーマーの集団がゲーム世界に酷似した異世界に転移する話だ。

 あのアニメの主題歌だったよね確か。

「渡辺さんって英語判るの?

 ていうかアニメファン?」

「神様ですぅ。

 何でもありですぅ」

 さいですか(泣)。

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