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僕の学校は厨二病 ~厨二病でも平穏に学生生活を送りたい。が無理のようです~  作者: 笛伊豆
第一章 大学生?

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104.「クラウドファンディングって言ったよね」

 僕が担当する心理歴史学講座はある種の駆け込み寺、というよりは魔窟みたいなものだ。

 他の講座では持て余すような特殊な学生しかいない。

 まあ中には武野さん達(未来人)みたいな「他の講座と違って遊べるから」というような理由で在籍している人もいるけど。

 でも高巣さん(王女様)晶さん(将軍様)、あるいは静村さん(神様)炎さん(魔王様)といった貴顕あるいは人外については他に誰も引き受けたがらないからね。

 ロンズデール姉妹(宇宙人)に至ってはそもそも宝神(うち)の正規学生ですらない。

 パティちゃんも前世が精神生命体(ヴァイトン)だったというし、まさに魑魅魍魎の巣といっていいかも。

 シャルさん(王国貴族)宮砂さん(王国外務官)なんか可愛いもんだよ。

 講座を追い出さない事を確約してやったら宮砂さんは露骨なくらい元気になった。

 そんなに気にしてるんだったらもうちょっと演習に出てくるとかすればいいのに。

 言い忘れていたけど僕も一応特任教授とかにされたので、真面目に毎週講座の演習を開いている。

 まあ中身は発表会とは言いつつ雑談大会みたいなものだから大きな事は言えないけど、オリンピックと同じでこういうのは参加することに意義がある。

 出席することが重要なんだよ。

 そう言ってやったせいか、あのずぼらな荒間さん(未来人)たちはもちろん高巣さん、(アキラ)さんなんかもきちんと出席しているからね。

 逆に言えば出席するだけだけど。

 真面目な静村さんや、その静村さんにくっついている(エン)さんもしかり。

 ロンズデール姉妹すら遅刻したり突然休んだりはするけど一応参加しているのに。

 シャルさんと宮砂さんは断固として来ない。

 来ないというよりはそもそも演習日を忘れてるんじゃないかと思う。

「言っとくけどこれからは容赦しないからね。

 これ以上休んだら前期の単位はあげない」

「そんなあ」

 サボる気満々じゃないか!

 もう知らん。

 宮砂さんはしょげていたけどそれでも仕事はやるタイプらしくてきちんと案内してくれた。

 この人、残念なのは確かなんだけど真面目でもあるんだよなあ。

 油断すると逃げるけど捕まって仕事を押しつけられたら渋々ちゃんとやるという。

 今後に期待しよう。

「ここは?」

 講座棟の一室はマシンルームだった。

 というよりは事務室?

 矢代興業でもそうなんだけど、今の会社ってホワイトカラーの仕事場にはパソコンが必須だ。

 ていうかむしろパソコン以外は必要ないくらいで。

 ずらっとディスプレイが並んでいて、若い人たちが一心不乱に何かやっている。

 この状況は何?

「ええと、アニメ作ってます」

 宮砂さんの爆弾宣言!

 思い出した。

 これ、某お仕事アニメに出てきたCG製作会社の作業室そのものじゃないか!

「アニメってCGで?」

「いえ、編集作業というか。

 原画さんが描いた絵をスキャナで取り込んでこっちのサーバに登録します。

 その編集です」

 ここはアナログ部門なので、と宮砂さん。

 さいですか。

 アナログなのに誰一人として紙とか鉛筆とか持ってない。

 そういう時代か。

「CGは?」

「それはまた別の部門ですね。

 ちょっと見学は勘弁して下さい。

 極秘なので」

 社長でも見せて貰えないらしい。

 怪しい。

 まあいいか。

 それにしても矢代興業、いきなりアニメとか作っているのか。

 そういえばシャルさんたちの心理歴史学講座の目標管理ってOVAレベルのアニメを作るとかだったっけ。

 戯れ言じゃなかったんだ(泣)。

「Grest! Woundful!」

 パティちゃんが瞳を輝かせて見入っていた。

 小学生から見たら憧れの仕事現場なんだろうな。

 精神生命体(ヴァイトン)にとってもそうなの?

 気を取り直して聞く。

「この人たちもバイト?」

「契約社員です」

 何と!

 バイトと称してただ働きさせられているのかと思ったら違うのか。

「といっても給料は払ってません。

 クラウドファンディングみたいなものですね」

 やっぱり外道だった(泣)。

「給料なしって酷すぎない?」

「夢に投資していると思えば」

「ブラック企業そのものだよね」

「あのですね」

 宮砂さんは一点の曇りもない笑顔で言った。

「好きな事をして自分を成長させられる機会を得られる。

 これほど素晴らしい事はないじゃないですか」

 うわーっ!

 確信犯だよ!

 まさか宝神(うち)の内部で現代の蟹工船が蠢動していたとは。

 早く信楽さんに言って潰して貰わないと。

 ん?

 そういえば信楽さん、ヲタク事業の話をしたとき「何も知らないですぅ」とか言って逃げたっけ。

 つまりこの事を知っていたと。

 何てことだ。

 矢代興業が当局に告発される前に何とか止められないもんだろうか。

「……あの。

 矢代社長、本気にしました?」

 宮砂さんが心配そうに話しかけてきた。

「本気も何も」

「まあ、言った事は全部本当なんですが」

 宮砂さんは僕とパティちゃんを連れて部屋を出て廊下を歩きながら言った。

「ええとですね。

 あの人たち、というよりは宝神(ここ)に来て貰っている人たちのほとんどはむしろ出資者です。

 クラウドファンディングの話も本当で矢代芸能の第三者割当の株主になって貰っています。

 希望すれば来年以降の宝神入学も許可されます」

 もっとも有能な人たちだけですが、と宮砂さん。

 つまりシャルさんたちは働き手兼出資者を集めているわけか。

 今の時代、アニメ関係の仕事とかやりたがる人は大量にいるからね。

 むしろ余っている。

 あまりにも給料が安くて続かないだけだ。

 だからシャルさん達は衣食住保証で人を集めたと。

 どっかで聞いたことがあるなあ。

 タコ部屋?

「違います。

 出て行くのも自由ですし、その場合は出資金をお返ししています。

 今のところ出て行った人はいませんが」

 やっぱりタコ部屋じゃないか(笑)。

「違います!

 タコ部屋というのは本来は太平洋戦争前の北海道で人を強制的に拘束して働かせた件の話です。

 私たちは別に長期間身体的に拘束しているわけでもないし、非人間的環境で働かせているわけでも」

「それは判ってるけど」

 宮砂さんはそう言うけどあれって相当な肉体労働なんじゃないだろうか。

 長時間ディスプレイの前で同じ姿勢で。

 エコノミークラス症候群とかにならなきゃいいけど。

 ん?

 ちょっと変だな。

「聞いていい?」

「何でしょうか」

 さすがの宮砂さんも用心深くなっていた。

 何か後ろ暗い所がありそうだ。

「クラウドファンディングって言ったよね」

「はい」

「さっきの人たちって何人いるのか知らないけど、みんな若かったし出資金ってそんなに多く出せそうにない気がするけど。

 そんなのでアニメ作ったり出来るの?」

 だって信楽さんによればヲタク事業には矢代興業マネーが入ってないんだよ。

 クラウドファンディングなんかじゃ無理なんじゃない?

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