え?あらすじと言ってることが違うって?
マルティア王女はあの後立ち直ることは結局なかった。城のメイドが慌てて駆け寄って俺たちは広い部屋に案内された。
「もうしわけありません勇者様方。王女が取り乱してしまったので続きの話は国王ご自身からお話ありますのでしばらくお待ちください」
全く少しはこの世界のこと知りたかったのに、この馬鹿のせいで情報を得る機会が遅くなってしまった。
「あ~~~、死ぬかと思いました。全く乙女の命を何だと思ってるんですか。地球にいる茜ちゃんファンクラブの人間を異世界まで葬式に列挙させる気ですか」
こいつ人気はあるけど断じてファンクラブまではいない・・・はずだ。むしろ、いたらゴミ虫見るような目でこいつ見るぞ。
「お前が禄に話も聞かずにアウトなんて言うからだ」
「甘いんですよ先輩は。あの後の話の流れなんて似たり寄ったりなうえに都合のいいように書き換えられた事しか言いません」
まぁ、俺もそう思ったけど。問題は・・・・
「あの王女にそれができるか?言っては何だけど馬鹿っぽいぞ」
あれが演技だったら褒めてやりたいくらいだ。国王でさえあれの親っていうんだから心配になってきている。
「甘いです。どうせ勇者は男だから適当に色香で落としておけって判断じゃないですか」
「勇者は俺じゃねぇのにな」
勇者を名乗るとすれば茜だ。俺は勇者なんて立派な才能はもってない。まぁ、いつものパターンで行けばこの後それは簡単に露呈されるだろう。
「はぁ、本当は次どうするか決めたかったのにまだ情報禄に集まってないからな。こういう時天真がいればなぁ」
天満満。茜と同じ学年の俺の後輩で隠密関係にチート能力が偏った病弱忍者少女満ちゃんだ。戦闘もこなせるので茜なんかよりもよっぽど頼りになる。ちなみに茜は完全前衛チート。俺は・・・・まぁ、手加減などスキルでわかるように無能だ。
「私たちの場合結局行き当たりばったりなんですよね」
お前よりはましだ。少なくてもない頭で考えるくらいの事はしている。
その時、部屋のドアがコンコンと叩かれた。そして先ほど案内してくれたメイドさんは「失礼します」と丁寧にお辞儀をしながら入ってきた。
「国王様たちの準備が整いました。玉座の間へとお願いします」
王との対面か。先ほどの王女がどうしてもちらついて王に期待できないんだよな。まぁ、経験上善悪関係なしにいけば王の能力は高いのが多いから大丈夫な・・・はず。
玉座の間。左右に騎士たちがびっしり並んでいて全員完全武装状態。そして、奥に右に先ほどあったマルティ王女。左には身なりの良い。ちょっと髪の長いワイルド系の粗暴の悪そうなイケメン。恐らく王子だと思うが。そしてさらに奥の玉座に座っているのが国王だろう。一言でいえばやばいだ。
顔だけ見ればもう五十近いし。肩までかかる黒い髪もここから見てもわかるほど白い髪が混ざっている。もう、衰え始めた年代ではあるのに衰えているだなんて思えない。王宮の中でも鎧を着用し、その隙間からうかがえる筋肉は今なお現役であることを物語っている。そして何よりも顔の深いしわに囲まれた目の眼力が半端ない。まさしく王のカリスマというものか。普通の人なら見るだけで震え上がるだろう。今までたくさんの王という人物にあってきたが。間違いなく上の方の部類に入ることは見ただけでわかる。
(先輩、あれやばいですよ。下手な魔王なんかよりも強そうです)
周りに聞こえないように小声で言ってくる。
(気になるからって鑑定は使うなよ)
異世界系王道の鑑定スキル。便利な能力だが使用すると対象者にばれる可能性が高いのが難点だ。ちなみに茜だけじゃなく俺も持っている。うや、二人だけじゃなく転移者全員の共通スキルとして仲間全員もっている。
「よく来た異世界の勇者よ。余はこの国の王。ゼルツ・フォン・アーデルだ。まずは来ていただいたことに歓迎する」
このセリフはよく聞くが聞くたびに言い返してやりたい。来たくて来たわけじゃないと。
「二人とも王の御前である。頭を下げ・・・」
「良い。二人は我が臣下ではないのだ。頭を下げ指すのは酷だというもの。さて、来て早々だが聞きたいことがある。余の頼みを聞いてくれんか?」
さて、答えようにも事情もその頼みも聞いてないうちは答えようがないしな。
「国王様。私共二人はこの世界の事もろくに知りませんし。その願いが・・・・」
「余が聞いているのは余の頼みを聞くか否かだ。内容も事情も後で聞くがよい。だが、もし聞けぬのであれば・・・・」
ゼルツ王は右腕をすっと上げ指を鳴らす構えをとる。すると周りに騎士たちが全員剣に手を当てた。
「さて、答えてくれぬかの。余の願いを聞くかどうか」
完全に脅迫か。いくら何でも来たばかりでこの人数相手にするのはきついな。茜も武器がないし。だが、何も聞かずに首を振れるほど愚かではない。もし、あの指を鳴らすようならその時は犠牲を顧みずこの城から逃げ出そう。
「お断りします」
凛した声が響き渡った。答えたのは俺ではない。そう答えたのは茜だった。
「ほぅ、断るか」
ゼルツ王はその指に力を込める。しかし、その指を鳴らさずにおろした。
「フッ、クハハハハハハハハハハ。なかなか肝が座っている。この人数相手に屈しないとは。余は度胸のある人間は好きじゃからな。許せ、ただの戯言だ」
今頷いていればいいように利用されていただろう。
「そう、戯言ですが。ですが、私達の力をあだあだだだだだだだだだ」
なんか熱くなってるから茜にアイアンクローかまして黙らせる。全くすぐに暴走するんだから扱いに困る。
「ほぅ、是非ともその先を聞いてみたかったのじゃが・・・・まぁ、よい。では、予定通りに進めるとするかのう」
その言葉を聞いてメイドの一人がまるで占いにでも使うかのような水晶玉を持ってきた。外見が違ってもそれが何であるかは予想がついた。
「この世界には自分の力量を数値化できる。伝承ではそなたらの世界にはないのであろう。これはそれを量ることができる道具じゃ。量ってみてくれぬか」
やっぱりその類のアイテムか。まぁ、俺等は鑑定あるから意味がないんだけどな。だが、衆人の中で俺のステータスを公開することに意味はある。見て驚け俺のステータス。
タケル・ジンナイ
HP 00012/00012
MP 00024/00024
力 00003
硬 00104
速 00023
魔 00011
成長性 F
惜しい。硬さがもう少し低ければ全部二桁だったのに。
「「「「「「ひくっ」」」」」
あたりに驚きと同時にそんな言葉が一斉に出た。