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プロジェクト・アーミー  作者: ダルキ
30/31

第26話

「隊長、隊長……!」


 誰だ? 俺を呼んでいるのは?

 そっと目を開けると、そこには4人の人影が立っていた。

 人影、そう人ではない。漆黒の闇が身体を形作っている。恐ろしく感じる姿だが不思議と恐怖は無い。

 むしろ……そう、懐かしい感じがする。


「隊長起きてください! また上官にどやされますよ!」

「■■の言う通りだ。あのオッサンの小言に付き合わされるなんて御免だぜ!」

「小言言われてんのは、大概お前のせいだけどな……」

「なんだと! テメェだってこの前車を踏み潰して怒られてただろうが!」

「はいはい。ソコ、こんな所でいがみ合わないのッ!」


 そう、このやり取り何処かで……。


「ほら、隊長行きますよ」


 中央に立っていた人影がこちらに手を差し出す。


「あぁ──」


 それを取ろうと手を差し伸べ、途中で手を止める。

 

「どうしたのですか隊長?」

「……なぁカルミアは何処に居るんだ?」

「……」


 何も答えは返ってこない。

 そうか。ここは──


「隊長、どうしたのですか?」

「……すまない。俺はまだそっちには行けない。

 俺にはまだやることがあるんだ。だから先に行っててくれ、俺も後で向かうから」

「……なら、待ってます。ずっと皆で」


 寂しげにそう言い残し、彼等は光に飲み込まれた。

 その光景に瞼を閉じ、再びそっと瞼を開く。

 今度は真っ白なベットの上で目が覚めた。

 ゆっくりと体を起こすと、窓から入る少し暖かい風を体に受け、ここが現実であることを再確認する。


「おはようございます琴美祢様」


 聞きなれた声に顔を向る。そこに立っていたのは長い白髪を風に靡かせ、こちらに癪をする小さな少女だった。

 俺はそんな少女の頭を撫でながら笑顔で返す。


「おはよう。カルミア──」

「……」

「ん? どうかしたのか?」

「琴美祢様は、この行為には感謝の意が込められていると言っていました」

「それが、どうかしたのか?」

「いえ、今頭を撫でられている理由が分からなかったので」

「……生きてることを実感したくてね」

「? 琴美祢様は生きていますよ?」

「あぁそうだな……」


 不思議にする彼女に簡素に返事を返す。

 俺は生きている、生きる目標ができた。

 だから、少しだけ待っていてくれ。

 俺もいずれソコに行くから──




        ※




【早朝0700時 マッサワン航空基地、C2格納庫内】


 巨大な倉庫の中では、メカニックマンが巨大な人型マシーンのチェックをしていた。雪原を思わすような全身真っ白に塗りたくられた07。追加装甲は既に換装済み、武器は無論装備されてはいない。

 まぁこんな所じゃ戦闘もないだろうし。別に問題はないだろうが……。


「やはり、ソコにあるべき物がないとしっくりこないな」

「なんのことですか?」

「いや、なんでもない」


 倉庫の出入口から機体を眺めていると、メカニックマンと話していたサイガが戻ってきた。


「おい、相馬。受け取る荷物はもう少しで到達するらしいから、お前は嬢ちゃんと一緒にアレをいつでも動けるようにしておいてくれ」

「了解、なら車に乗ってる荷物は任せたぞ」

「おぅ任せとけ」


 かったるく返事を返しサイガは倉庫を出ていく。


「カルミアいけるか?」

「いつでも行けます」


 普段と変わらない表情で素っ気なく返事を返すカルミア。

 もうこの感じにも少し慣れてきたな。


「なら、行くとしよう」




         ※




 胸部上までクレーンを使って上がった俺とカルミア。新型のコクピットへ最初に乗り込むのはまず俺だ。

 何故ならカルミアが座る席は隔壁の死角にあるからだ。

 なら後部席に座るカルミアから入るべきなのだろうが、残念な事にそれはできない。カルミアは背が低いのが原因だ。

 もしカルミアが先に乗れば前者の操縦席をよじ登って自分の席に行く必要があるのだ。

 正直そんなことをしていたら時間が掛かる。

 その為、後ろに行き来するための土台。つまり俺が先に乗る必要があるのだ。

 だがしかし、この方法には少しばかり欠点がある。それは……


「ぅぐっ!」 


 この特殊スーツを着た少女が後ろに移動するまで支えないといけないことだ……!

 肩を足場に、最後には頭を蹴り、ようやく相方は後部座席へとたどり着く。


「琴美祢様、準備が完了しました。指示をください」

「……狭すぎるのもコイツの欠点だな」

「何か言いましたか?」

「いや、なんでもないよ」


 さて、気を取り直してやることをしよう。


「AI起動、ハッチ開放のままモード1で起動」

「了解」

【声紋チェック開始します。官姓名をどうぞ】


 機械音声に従い官姓名を口にする。


「ファング4、琴美祢 相馬」

【……ファングⅣ、琴美祢 相馬と一致。

 続いてP29との接続を確認。機体との同調を開始します】


 正面モニターに同調までのゲージが表示される。

 青と白の螺旋ゲージがものの数秒で埋まる。


【同調完了を確認、命令を実行します。

 各部チェック開始……各部センサー異常なし……──動力システム異常なし……──各部チェック完了異常なし。

 ALTS起動、3.0へ変更。

 メインジェネレーター点火、メインコンデンサー電荷上昇中、モード1で起動開始。

 システムオールグリーン。メインモニターオープン】


 外の様子が正面左右のメインモニターに映し出される。

 鋼鉄の柱に、板を張り付けただけの簡素な倉庫をビルの二階から見下ろすように広がる景色を見ながら俺は続けて命令する。


「カルミア、サイガから次の指示を聞いてくれ」

「了解」


 カルミアが返事をしたその直後『ビー! ビー!』と警報が鳴り響く。

 何が起こったのか聞こうとするよりも早く、ドーンッ! と、けたたましい音が炸裂した。

 大気の振動と共に天板にできた錆がちらちらと降ってくる。

 攻撃を受けている⁉ ようやく理解して俺は命令を下す。


「ハッチ閉鎖! カルミア敵の位置は分かるか?」

「基地外部での銃撃音、数は不明。基地周辺に人形の接近を感知、数12。沿岸から現れた2機がこちらに向かってきます」


 ここが奇襲を受けているのか⁉


「カルミア、サイガに連絡を!」

「了か……っ! 砲撃を感知、次弾が来ます!」

「なにっ!」


 カルミアの報告の数秒後、砲弾が基地に降り注いだ。

 爆発音が轟く度に地面が揺れる。


「ッ!!」


 爆音が止む。運よく倉庫には当たってはいない。

 だが、このままじゃここも危ないのは確かだ。


「サイガ様より通信です」

「繋いでくれ」


 ザー、と耳障りなノイズがインカムを通して流れる。


「ファング3、無事なのか? 応答しろ、ファング3!」

『……、聴こえてるよ! クソッ! 輸送機は駄目だ。お前はソイツを持って隠れていろ!』

「敵がこっちに向かって来てる。出ないとこっちがやられる!」

『安心しろ。基地にもAWが待機している。そいつ等に任せて、お前は後ろに下がってい──』


 サイガが言い終わるのと同時、きゅっと空気が圧縮した音と共に今まで暗かった倉庫に明かりが灯った。

 爆音と共に後頭部が衝撃に襲われ、視界が真っ暗に染まった。

 

「……、美祢様」


 誰かが、呼んでいる?


「起きてください琴美祢様」


 聴こえてくる淡白とした女の子の声に起こされ、次第に活発を始める脳と共にゆっくりと瞼を開く。

 最初に目に入ったのは空だった。

 昇る黒煙を吸う青い空がメイン画面に広がっていた。

 空の色は違う。けど、この景色を俺は知ってる……。


「琴美祢様、敵が来ます。起きてください」

「……すまない、今起きた。カルミア、俺はどれくらい気を失っていた?」

「およそ15秒です」

「そうか……」


 頭に残る霧を頭を振って振り払い、画面端に表示されたマイクの通じ状況を確認する。

 どうやら、まだサイガとは繋がっているようだ。


「ファング3、無事か? ファング3」

『あぁ、俺は無事だけどよ……』


 数秒の間と共に、深刻そうな口振りでサイガは続ける。


『援軍の期待はできそうに無くなった』

「……そのようだな」


 左右の画面に交互に視線を向ける。

 倉庫は殆どが全壊している。待機していたであろうパイロットやその愛機達は、今では瓦礫と共に炎の中だ。


「琴美祢様。敵2機がこちらへ接近中、距離500」

「サイガ聴こえたか?」

『あぁ、肉眼でも確認できる。海岸方面から2機、AWM-03が向かってきてる』


 AWM-03。01の派生型で2足初の水陸両用機。

 やれない相手ではない。いや、殺るしかないの間違いか……。

 両腕に力を入れ、瓦礫に埋まった機体を立ち上げる。

 正面、2機の機影がこちらに向かって走って来るのが見えた。

 援軍の期待はもう無い──


「ファング3、聞こえているか? こうなったら殺るしかない。指示をくれ」

『……そうだな。俺は残骸から使える機体を引っ張ってくる。それまで耐えろよ相馬』

「耐えろじゃなく、勝てだろ?」

『やれるならなっ! とにかく、俺が行くまで無理すんじゃねぇぞ!』


 サイガが一方的に通信を切る。直後、接近警報が機内に鳴り響いた。


「琴美祢様、敵が射程圏内に入りました。ロックされています」

「……カルミア、奴等を狩るぞ!」

「了解。システム戦闘モードへ移行、右腕のナイフを射出します。受け取ってください」


 両部内碗から射出されたナイフを受け取る。

 敵は水陸両用のAWM-03、距離は325、敵の射程圏内。

 こっちの武装はナイフのみ。


「──今はやれることだけをやる!」


 ナイフを握りしめ敵に向かって走る!

 敵が持っていた銃の口がチカッと光る。直後、無数の光の矢を機体が浴びた。

 軽い金属音と2門の銃声が空高く鳴り響く。これでもかと言わんばかりに撃たれ続ける。

 だが装甲を打ち付ける20mm弾をもろともせずに07は敵に向かって突き進んだ。

 まるで敵の弾丸を雨粒だと言わんばかりに、07を前へと進めた。

 敵との距離が縮まる。相変わらずライフルを乱射しているが敵も馬鹿じゃない。こちらがナイフしか無いのを知ってか、03は距離を取って放火を浴びせてくる。

 だがそれでいい。この機体の装甲厚が20mmなど通すわけもない。

 こっちは撃たれていてもダメージになら無い、それに敵に近づくだけでプレッシャーにもなる。だが敵はいずれ弾切れになれば、は接近戦を仕掛けるか方法がなくなる。そうなればこちらとしては好都合な展開になる。

 だから──


「どうかそのまま無駄弾を撃っててくれよ……!」


 放火の雨を受けながら、1機の03にしつこく接近戦を挑む。

 逃げる敵を必死に追いかける続ける。その時、グイッと右肩を何かに惹かれ後ろにつんのめる。

 何事かと右肩に視線をやる。

 ピンっと張られた黒く艶のない鎖が、右腕を封じるかのように巻き付いていた。それが03が両腕に仕込んでいるアンカーだ。


「こんな物で!」


 ナイフで断ち切ろうと左手を振り上げる。

 直後、もう一機から射出されたアンカーが左腕に巻き付いた。


「捕縛された?」

「琴美祢様、3時方向の敵が来ます」


 腰のサーベルを抜いた敵がこちらに走ってくるのが見えた。

 射撃でダメージが無いから接近戦に切り替えたのか?

 しかもこの状況、敵を迎え討とうと動けば──。

 ナイフ持った左手で応戦しようとした直後、右腕が引っ張られ態勢が崩れる。

 それを突いて接近した左側の03がサーベルを振り下ろす。

 それを辛くも右腕の装甲で受け止め、弾き飛ばし反撃に転じる。

 だが、その頃には敵はこっちの攻撃圏外まで飛び退いていた。

 やっぱり、簡単にはやらせてくれないか……。


「カルミア、鎖を引っ張る敵を妨害できるか?」

「問題ありません」

「なら、任せた!」


 先程と同じよう左側の敵が剣を構え襲ってくる。

 こちらも先程と同じようにナイフを構え攻めに転じる。

 だが、反対側の敵も黙ってはいない。鎖を引っ張るタイミングを見計らっている。

 右側の敵が攻撃圏内に入った。


「琴美祢様、姿勢制御を頼みます」


 カルミアに言われるがまま、腰を低くし踏ん張る。

 直後、隠し腕が姿を現す。

 サブアームがピンと張った鎖を掴み、力の限り引っ張り上げた。

 左足の踏ん張りにコンクリートが割れ、サブアームは動きを止めていた03を一本釣りしてみせる。

 全高6mの巨体が前のめりで地面に激突する。

 この光景に驚いてか、襲ってきた敵が動きを止めた。その瞬間を逃さず俺はナイフを敵の胸部へ突き刺した。

 超振動のナイフは敵の装甲を削りながら刃を埋める。

 中の人間はズタズタだろう。だが、そんな事を気にする余裕もない。

 ナイフを抜くと穴が空いた胸部から液体が垂れていく。

 それを気にも止めず、もう残る敵に視線を向ける。

 敵はアンカーを外し、抜刀してこちらへ向かってきていた。

 性能差がハッキリとしているのに、まだやるのか?


「カルミア、奴の腕を押さえれるか?」

「可能です」

「なら、頼む……」


 ナイフを構えたまま敵が近づくのを待つ。

 40、30と距離が縮り、敵がサーベルの一刀を振り下ろす。

 力任せの一撃が両手の追加装甲に当たり、鈍い金属音を鳴り響かせ新型を圧し潰しにかかる。


『……よくも……よくも、ノランをッ!』


 子供⁉

 雑音まじりに男子の声がインカムに飛び込んできた。

 いや、考えるなッ!


「いまだ、カルミア!」


 急きながらカルミアに合図する。

 サーベルを握っている敵の両腕をサブアームが素早く掴む。

 敵はサブアームから離れようと抵抗するが、こちらの方がパワーに逃げることなどできない。

 振動するナイフを敵の腰に向かって突き刺し、横に切り開き下半身のシステムを殺す。

 敵の抵抗が止む。どうやら諦めてくれたようだ。


「敵はこのまま捕虜にする。カルミア、光通信でコクピットから出るように言ってくれないか?」

「捕虜ですか?」

「甘いか?」

「……ここで殺す方が得策だと判断します」

「そうだな。だが、情報は欲しい。すまないが言った通りにしてくれ」

「了解しました」


 メインカメラのライトを点滅させ始めたその時だった。

 突如、接近警報が鳴り響いた。


「琴美祢様、6時の方向から敵が急接近してきます」

「新手か⁉」


 レーダーに視線を向ける。

 基地の中、赤いマーカーで表示された敵がこちらに向かってきていた。

 敵で間違いないさそうだが、このスピードは……。


「クローラー音感知、来ます」


 カルミアが冷静な口調で報告するのとほぼ同時に、オレンジ色の光が07の頭部カメラを掠めた。

 それは、先程の敵が撃っていた弾丸よりも一回り大きい──40mm弾だ。

 敵は03じゃない!? 新手へと新型の頭を向ける。

 燃え盛る倉庫をバックに新手の05がライフルの銃口を向けこちらを捕捉していた。

 足には受け取るはずだったクロラーユニット。新装備のデスサイズを背負っていた。

 だが、問題はそれだけじゃない──いや、もはや装備が奪われている云々(うんぬん)ではない。

 見覚えがある、俺はあの機体と色に見覚えがある!


「黒い、05……!」


 機種は違う。だが、あの色は──あの時のッ‼

 腰に刺さったナイフを引き抜き、3つの腕で03を持ち上げ、銃撃の盾にするのと同時に「まだパイロットは生きているぞ」そう警告するように振動するナイフをコクピット位置まで持っていく。

 こうすれば敵は襲ってない。

 襲って来ても、こいつを盾にして奴の隙を突き殺す! 今度はお前が俺と同じ苦しみを味わう番だ!


 ──油断。いや冷静さを欠いていた。

 俺の思考が一瞬止まった。そして自分のミスを悟った。

 05がライフルを捨て、サイズを手にこちらへ突っ込んできたのだ。

 同時に捕縛していた敵が再び動き始める。

 こいつ、まだ反攻する気か⁉


「カルミア、手を離せッ!」


 カルミアは即座に手を離す。

 が、間に合わなかった。前のめりに倒れていくのを利用して敵は腰に張り付いてきた。

 誤算だった。

 こいつが抵抗を辞めたのは諦めたからじゃない。新手の味方に、俺達を倒すための隙を作る為だったんだ。

 高熱を帯びて赤く焼けた死の鎌が横一閃に襲い掛かる。


「こんな所で、殺られるかぁぁぁぁああッ‼‼‼」


 片足を降り下げ、しがみつく敵を力の限り蹴り上げた。

 腰から手が離れた03が一瞬宙を舞う。そこに熱を帯びた鎌が襲い掛かった。

 ジュッと溶ける音が聞こえたような気がした。実際に03の厚い上半身が背中から頭にかけて断熱されていく。刃は止まることなく味方を斜めに溶断した。

 こちらは後ろにのけ反り過ぎてバランスが崩れて尻餅をつく。

 それが幸運だった。

 鎌が頭上をすり抜けていく。

 05はそのまま走り去っていくが、見逃しくれた訳ではない。

 急いで腰を上げて態勢を整え敵の方へ向きを変える。

 案の定、敵は反転しこちらへ突進の構えをとっていた。


「琴美祢様、味方の援軍到着まで逃げることを薦めます」

「逃げてもいいが、絶対に追いつかれる……なら、戦うしかないだろう?」


 ナイフを横に構え、戦闘態勢を取る。

 刃の振動がいつもより激しく感じさせた。最強の貫通力を誇る超振動ナイフだが、敵が持っている武器の方がリーチも威力の桁も違う。今持ってる武器が自分にとっての唯一頼れる武器だが、この貧弱な装備でどこまでやれるか……


『いいねぇ、そうこなきゃな~』


 インカムに雑音交じりに若い声が入ってくる。

 敵からのオープン回線……!?


『楽しませてくれよ、新型のパイロットさんよーッ‼』


 05がサイズを構え突っ込んでくる。

 楽しませろだと……ふざけるなッ!


「カルミア、敵の武器は片腕を犠牲にして何秒稼げる?」

「サブアームなら1.5秒、07の腕なら2.2秒程で溶断されます」

「そうか……」


 やれるか? いや、やられない為にはこれしか方法がない!

 敵が鎌を上段に構える。


『逝っちまいなッ!』

「誰がッ‼」


 左手のナイフを手放す。

 振り下ろされる熱を増した刃先を07の分厚い腕が頭の上で受け止める。

 いとも簡単に追加装甲が溶断され本機の腕まで刃が進む中、すかさず右腕で敵の左腕を抑える。


『おいおい、そんなんで止められると思ってんのかよ?』

「新型が新型である由縁は、旧型機よりも性能差が決定的に違う所にあるだよ──!」


 少しずつ敵の左腕を上へと持ち上げ、刃が少しずつ抜けていく。


「F型の系統は伊達じゃないっ‼」

『おいおい、片腕でこのパワーかよ! 楽しませてくれるなぁ、おいッ!!』


 敵が両腕で柄を握りしめ、鎌の刃を押し付けていく。


『だがよ、両手ならどうだ?その壊れた腕じゃ受け止められねぇだろ!?』

「舐めるな! カルミア!」


 返事を返すことなくカルミアは、敵が持つ鎌の柄目掛けサブアームで掴みにかかる。

 だが、その時だった──パッと空が赤く光った。

 光った空に視線を向ける。

 信号弾?

 空には赤色の火の玉がチリチリと寿命を輝かせながら緩いスピードで落ちてきていた。

「いい所で……」と舌打ち交じりの言葉がインカムから聞こえ、敵に視線を戻す。

 サブアームに柄を掴まれた敵は、鎌の過熱を続けていた。

 高熱を帯びた刀身が熱に耐えられず溶解を始めていく。

 まずい!


「カルミア、敵を押さえろ!」


 俺も柄から手を離し、敵に掴み掛かる。

 05が片足を上げる。


『動きが遅ぇんだよ!』


 前蹴りが腹部に入る。

 ハンマーで殴られた様な衝撃を食らい機体が後ろに倒れる。

 痛みに堪えながら再び画面を見ると、そこには後ろ腰のサーベルを握り締め今にもトドメを刺そうとする05が映っていた。


『パイロットだけでも逝っちまいなッ!』


 ナイフが降り降ろされる。

 避けられない。瞬時に理解し自然と左腕を犠牲にナイフを受ける。


『そんなんで、止められるかよッ‼』


 両手を使いサーベルを押し込んでくる。

 ギシギシと音を立ててサーベルが押し込まれていく。普通ならサーベルごときに突き破られる装甲ではない。

 だが攻撃を受けたのが、ダメージを負った左腕だったのが間違いだった。


「左腕ダメージ甚大」


 カルミアの報告の直後、左腕の一の腕が切り落とされ鋭利な刃先が姿を現す。

 クソ、防ぎきれないッ!


『ここまでだな、えぇ!? 新型ァッ‼』


 ナイフが近づいて来る。やられる?

 カルミアだけでもと、刃が当たる位置をずらそうとしたその時だった──。

 1本の閃光がサーベルの刃を真っ二つに食い破った。

 パキンっと軽い金属音と共に1発の銃声が空に鳴り響く。

 05がサーベルを捨て上から退き、動きを止めた。

 援護射撃? ようやく理解した直後インカムに通信が入る。

 

『生きてるか、相馬?』


 場の空気を読む気も無いように、あっけらんと訪ねてくるこの声は──


「サイガか?」

『おう、少し時間が掛かっちまったがなぁ。なぁに、ここから先は俺も参戦だ!』


 息巻くサイガの声に勇気をもらい、再び07を起き上がらせる。


「カルミア、左腕のナイフを出してくれ」

「了解」

 

 切断された腕部の中央部分。追加装甲と腕部装甲が開き、腕内に内蔵されていたナイフの柄が姿を晒す。

 ナイフを抜いた直後、刃が振動を始める。

 動きを止めていた05がそっと構えを解く。


『ハハハ! いいねぇ~その強運!それ突き破るのもまた戦争の醍醐味って奴だよなぁ!』

『なんだこいつ。一般回線でペラペラと、舐めてんのか?』

「だが手強い。油断はするなよサイガ」

『誰に言ってんだよッ!』


 再び1発の銃声が鳴り響く。

 サイガ駆る02が大型ライフルの引き金を引いたのだ。

 だが弾は05に当たらなかった。照準が狂っている訳でも、サイガの射撃の腕前が悪い訳でも無い。

 敵がサイガの撃ってくる位置を予測して早く動きたのだ。だがそれは弾が出ていくのと同時で、一瞬で避けたようにも見えた。


『な! 俺がこの距離で外しただと⁉』


 再び構え直し照準を引き絞る。


『舐めんじゃねぇぞ!』


 続けざまにサイガは、引き金を引く。

 1発、2発と──だが、弾は当たらない。

 スケートでもしてるような動きで、05はクローラーを巧みに使いながら弾を回避していく。


『チッ、邪魔しやがって──。

 まぁいいさ、用件は済んだ。ここは退かせてもらうぜ』


 敵がクローラーを使い後ろ向きに全力で後退を始める。


『俺の狙いから逃げられると思ってんのかよッ‼』


 サイガは膝をついてしっかりと銃を構える。

 その時、警報が鳴り響いた。


「敵の砲撃音を感知、来ます」


 空に見上げると、オレンジ色にも似た幾つもの弾が降り注いできた。

 俺は直ぐ様、機体をその場に膝を着かせショックに備えた。直後あっちこっちで爆発音が鳴り響き、砲弾の雨と爆風が07や02を襲う。

 約7秒間砲弾の雨が降り注いだ。何度か至近弾を喰らったが、奇跡的に直撃は免れた。

 黒い奴はどうした?

 再び05が逃げた方へ視線を戻すが、その頃には敵は基地内に入り行方を眩ませていた。

 逃げた。というより、見逃してくれたのか──。

 辺りもいつの間にか銃声が聞こえなくなっていた。レーダーにも敵の機影は認められない。


「カルミア、敵の様子はどうだ?」

「基地周辺のAWが後退の動きを見せています。先程の敵は基地内を逃走中、今なら追いつくことも可能ですが」

「……」


 また逃がすのか? 仲間の仇かもしれないアレを──。

 機能しない左拳を握り絞め、機体を立ち上がらせる。


「……いや追う必要はない。

 それよりもカルミアは大丈夫か?」

「はい。問題ありません」


 澄まして声でカルミアが簡潔に答えると、インカムにノイズが走った。


『違うだろ嬢ちゃん。そこは「頭がくらくらするので、見てもらってもいいですかぁ?」って甘えながら看病してもらう所だろう?』

「……お前も元気そうだな。サイガ」

『おいおい、不機嫌になるなよ。お前だってそうして欲しいと思ってたんだろ?』

「思ってない!

 ……大丈夫そうだから俺は周囲の警戒にあたるぞ」

『ああ少し待ってくれ、さっきの砲撃で機体のハッチが壊れてな。すまないが助けてくれないか?』

「……まったく」


 仰向けに転がる02へと向かう。

 弾が頭部に命中したのだろう。もの凄い凹みができていた。

 装甲を貫通していないのは榴弾だったからだろう。頑丈さが売りの02でなければ今頃コクピット事、上半身が吹き飛んでいたことだろう。


「まったく、これも日頃の行いが原因だな」

『日頃の行いは良いと思うんだけどな』

「どの口が言ってるんだよ……。

 頭を外してハッチを無理やり開けるぞ。しっかり捕まっておけよ」

『おう、早くしてくれ』


 02に馬乗りし、胴体が浮かない様に07の重量で固定して右腕で02後頭部を掴み、力任せにもぎ取った。

 取れた頭を投げ捨て、カルミアに頼んで振動を止めてもらったナイフの刃先でコックピットをこじ開けた。

 暫くして、しわくちゃな金髪したサイガがコクピットから出てきた。

 サイガは自分を見下ろす07を見ながら口の端を釣り上げて言った。

『また、どやされるな』と──

次回、プロジェクト・アーミー第27話

カ「敵の奇襲により作戦参加が不能となった07。だが、上からの作戦に変わりはない。今回は相馬達を置いて我々が出撃する。全く、こんな作戦、作戦なんて呼べないよ……」

ロ「その割には、楽しそうな顔をしてますよ」

カ「ふ、分かってるじゃないかロバーツ。なら一暴れさせてもらうか!」

ロ「はい! 俺達の戦いっぷり、読者共に見せつけてやりましょう!」

カ「よーし、マリーネ・ライター出る!」

ロ「いや、ちょ、姉さんそれ違う人の機体ッ!!」

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