番外編、メリークリスマス
クリスマス──それは、悲しい戦いの前日だったり、善人が相方と一緒に死んでしまったりする。なんやかんやで何かイベントが起こる日……。
イヴの晩、父と子、2人暮らしの一軒の家に──
「おう、相馬飲みに来たぞッ‼」
2人の大人がやってきた。
ぱんぱんになったビニール袋を携えて──
【プロジェクト・アーミー
クリスマス番外編】
「くはぁ~。やっぱり相馬の作る飯はうめえ!」
「それはどうも」
サイガの褒め言葉に照れながらテーブルに並んだ食事に箸を伸ばす。
「──そう言えば、明日はクリスマスだなぁ」
「クリス、マス?」
サイガの言葉にカルミアは小首を傾げる。
「琴、父様。今日はクリスマスとは何ですか?」
カルミアがクリスマスを知らないのも無理はない。
母を亡くしてから俺は、この子を養うために働きまくっていた。
無論クリスマスの日も例外ではない訳で、俺はこの子にクリスマスも、サンタからのプレゼントも体験させたことがないのだ。
「クリスマスってのはなぁ嬢ちゃん。
赤い服を着た異人。サンタクロースが、いい子にしていた子供達にプレゼントを贈る日なんだ」
ロバーツの言葉に俺もサイガがうんうんと頷く。
「ですが分かりません。
何故その人はプレゼントを贈るのでしょうか?」
「い、意外と辛辣な疑問だねぇ……」
「あぁ、子供が言うセリフではないと思うほどにな……」
ロバーツとサイガが難しい顔をする中、俺は口を開く。
「カルミア、サンタクロースってのは職の名前なんだ」
「そんな職があるのですか?」
「あぁ、あるとも。
今年の始めからイヴにかけて事前に作っていたプレゼントを、良い子にしていた子供に運ぶのが仕事なんだ」
「それは職ではなくボランティアなのでは?」
「いや、そ、それは……」
あれ? 考えてみればそうなのか?
俺は親からサンタは良い子にプレゼントを運ぶのが仕事なのよって教えられてきたけど……。
考えてみれば給料も貰ってないし。子供達に無償でプレゼント渡すだけって──
「確かにボランティアだな」
「「納得してんじゃねぇッ‼」」
「ぐっは……ッ‼」
二人が投げた空き缶が同時に頭部に命中する。
「そこは職であることを貫けよ! 例えイヴまで、髭を生やしただけのただの老人だとしてもよッ‼」
「おいサイガ。お前も結構酷いこと言ってるぞ……」
ぐだぐだなやり取りを見ていたカルミアが、割って入る。
「それで、サンタクロースは何故。子供達にプレゼントを贈っているのですか?」
カルミアの問いに俺は2人を手招きし、集まった2人に顔を合わせて小声で話を始める。
「どうしたんだ相馬?」
サイガが聞いてくる。
「いや、言われてみればなんだが……。
サンタって何で子供にプレゼントを贈ってるんだ?」
「「……」」
あ、これは誰も考えたこと無かった奴だ。
まぁ俺もなんだけど……。
数秒後サイガが先に口を開く。
「そりゃ、サンタの好みがロリショタだからじゃないのか?」
「それはどうかと思うぞサイガ」
「俺もロバーツの考えに賛同だ」
「なら、お前達はサンタの野郎がロリショタ以外だって理由の他に、何か理由があるってのかよ?」
サイガの言葉に、ロバーツも俺もう~んと唸りを上げ考える。
「俺が思うに、サンタの奴はただ子供の笑顔が見たいからじゃないのかなって思うんだ。
ロリショタとかではなく、こう純粋な気持ちでだな……」
「子供が喜んでいる姿を愛でるのに純粋な気持ちってなんだよ?」
「う~ん。邪な心じゃないとか?」
「なるほど、純粋な心で子供達に喜びを、か……やっぱりロリショタじゃねぇか?」
「なんでそうなるんだッ⁉」
「普通、同年代位の女性を喜ばせることに徹するだろ?」
「い、いや。それは……」
「いや、サイガ。それはお前だけだ……。
相馬も確かにって顔をするな」
「いや、すまない。口車に乗せられてしまった」
はぁっとため息を付くロバーツ。
「ここは俺が彼女に説明するとしよう」
そう言ってロバーツは立ち上がる。
「や、やれるのかロバーツ?」
「そうだ! 父の俺ですら答えてやれないというのに、お前にできるのか⁉」
「お前達はどんだけ信用が無いんだ……」
まったくと言った表情を俺達に見せ、ロバーツは輪を抜け出し、カルミアの方へと向かう。
「ロバーツ様、どうかなさったのですか?」
カルミアの心配に「ちょっとな」と答え、ロバーツはカルミアの隣に座った。
「いいか嬢ちゃん。サンタってのはな子供に夢や希望を与えるのが仕事だ。
大人は財力があるから大抵の事は何とかなるが子供は違う。
貧困で飯が食えなければ身売りをする奴だっている。
そんな子供を増やさんが為にサンタは毎年子供達にプレゼントを渡すんだよ」
「なるほど。ですが疑問があります」
「ん?」
「サンタクロースと言う職が実在するとして、どうやって子供達にプレゼントを渡しているのですか?
私の家には来たことが無いので分からないのですが」
カルミアの言葉が雷となり俺の心に落雷する。
額に脂汗を浮かべ、厳しい顔つきのままうつ向く。
が、ロバーツはいたって冷静に、
「それはだね。サンタは煙突から入ってくるんだよ。
ここには煙突が無いからねぇ。入ってこれなかったんだよ」
等と適当な事を言うロバーツ。
そんなことで、カルミアが信じるとは思えないんだが──
「なるほど。確かに煙突が無い家では、夜は戸締りをしっかりしているので侵入は不可能ですね」
あれ? 納得しちゃった⁉
だが、この難問は突破した。でかしたロバーツ──
「では父様。さっそく煙突を作りましょう」
張り切るカルミアに唖然とする俺。
そう来るか……。クソ、助けは?
苦笑なロバーツ。大爆笑のサイガ。
誰一人助けてくれそうな気配がないッ‼
っく。こうなれば自分でどうにかするしかあるまい。
サイガから離れカルミアの隣に座る。
「い、いやいやカルミア。別に煙突を作らなくても窓のカギを開けておくだけで十分だよ」
「そうでしょうか?」
「十分十分。後はサンタさんが見つけてくれるように窓に、父が買ってきたプレゼント入れの靴下をかざしておけば万事解決さ」
そう言って俺は隠しておいた靴下を手渡す。
ふっふっふ。これで後は、カルミアが寝た後にコッソリと部屋に忍び込んで、プレゼントを入れれば万事解決。
──まぁ持ってくるのは、俺なんだけど……。そこは、サンタになりきれば問題ない。
そう、今日俺は父親と言う職を抜いてサンタと言う職を着るのだから‼
「さぁ、そうと決まればカルミア。
目を瞑って両手で祈りながら願い事を言ってくれ。そうすれば、きっとサンタに届くぞ」
「手紙ではなく?」
「サンタさんはそれだけで聞き取れるから大丈夫だよ」
「サンタクロース様はテレパシーを使えるのですか⁉」
「まぁ、な。そういう特殊な能力を持った者しかサンタになれないからな」
「そうなのですか?」
「あぁ、そうだとも」
いや、うん。嘘なんだけどね……。
すまん娘よ。嘘つきな父を許してくれ。これも子供の夢を守る為なんだ……。
「そうですか」
納得したカルミアは、では──と、目を瞑り両手を合わせて願う。
「──どうか、世界から戦争が無くなりますように」っと……。
ん?
「カルミア、自分への願い事じゃないのか?」
「はい。世界から戦争が無くなれば、少しは皆幸せになれます。
これは私の願いです」
「な、なるほど……」
無理、無理です娘よ。
流石にお父さんでも、もしくはサンタさんでも。
その願いは叶えられないし、プレゼントにもできないよ……。
額に汗を浮かべて顔を背けていると、服の袖を引っ張られる。
「? どうしたんだカルミア?」
振り向くと、そこには心配そうな表情を浮かべるカルミアがいた。
「父様」
裾を握る力が強くなる。
「サンタ様は私の願いを聞いてくれるでしょうか」
「カルミア……」
聞いていたロバーツもサイガも。カルミアの本気の願いに真剣な目つきで黙り込む。
そうだったな。俺は父親という職を脱ぎ捨てて、サンタの職を着る決意をしたんだったな。
これが娘からの、いや。子供からの願いだというのなら──
「ぁ、ああ……きっと叶えてくれるよ」
「そうですか。それでは安心です」
「そうだな。さぁカルミアもう寝なさい。
朝起きれば、サンタはきっと願いを叶えてくれてるはずだよ」
「はい、父様。
──それでは、サイガ様、ロバーツ様、父様おやすみなさい」
「「「おやすみ」」」
部屋を出ていくカルミアに手を振り、大人達は再び酒を注ぎコップを掲げる。
「「「滅びゆく者、ひいては生まれてくる命の為にッ──」」」
チンッとガラスの音が鳴り響く。
大人達が犯した罪を消す為の戦いの鐘が鳴り響いた。
──次の日、彼女は目が覚めた。
「──ここは?」
周りを見渡す。鉄の棚には大量の食料と水。
部屋の隅には階段。ここは地下倉庫だと彼女は理解した。
だが、彼女は小首を傾げた。何故なら昨日は二階の寝室で寝たはずだったからだ。
不思議に思いながらも彼女はベットから体を起こし階段へと向う。
重たい鉄の扉を全身の力を使って開ける。
──だが、そこに自分の住処は無く、少女は見たことのない光景に唖然とした。
辺り一面は焦土と化し、空には見たことのない程の禍々しい黒い雲が全てを包み込んでいた。
世界は一夜の間に変わってしまっていた。
だがそれは、戦争を無くなりますようにという彼女の願いを聞き入れた、3人のサンタ達からのプレゼントであった──
次回、プロジェクト・アーミー第23話
琴「ようやく俺の出番がやってきたか」
カ「琴美祢様、一つ疑問があるのですが」
琴「ん? 疑問とはなにかな?」
カ「何故この状況でクリスマス編をしたのですか?」
琴「それはね。ファンサービスです」
カ「(この状況でやるイベントではないような気がしますが……まぁいいでしょう)
それでは皆様、次回からは本編です。お楽しみに」




