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プロジェクト・アーミー  作者: ダルキ
19/31

第16話 後編

「これで、7機目!」


 目の前の06の上半身が斜めに滑り落ちる。


「カルミア、これで最後か?」

「いえ、3時の方向から更に3つの機影が接近中。

 駆動振動知から、敵は05だと思われます」


 こんな、遮蔽物が沢山ある中で重装型か……。

 ()りやすい相手だが……あいつじゃないのか。

 息を整えながら後ろにいるカルミアに視線を送る。


「カルミア、体に問題はないか?」

「はい、問題ありません」

「……そうか」


 本日これで5回目の稼働試験だというのに、カルミアは未だに異常はみられない。

 カルミアも俺と離れている間に色々とやってたみたいだな。

 彼女がこんなに平気そうなのに、俺が弱音を吐いてる訳にはいかないか……‼

 額の汗が膝元に流れ落ちる。

 再び前を向き、獲物を強く握りしめる。


「さて、行くとするかッ!」


 大柄のサーベルを肩に背負い、敵に向かって全力で走り始める。

 出撃をしていく事に出来上がっていく新型。

 未だに機体の反応速度は鈍いが。最初の頃よりかは、いくらかマシになった。

 ただ、やはり武器のマガジンが持てないのは難点だ。

 弾を節約したとしても3機目を相手にすれば弾切れ。

 ライフルが消えて残る武器は、内蔵された超振動ナイフ2本、サーベル2本に、大型サーベル3本。

 接近戦しかできないのは辛いが……敗北が許されない以上、やるしかない!

 走って1分もせずして、敵を視認する。

 敵の武装を見る限り、キャノン装備が2機、ガトリング装備が1機。敵は既に足を止めてこちらに銃口を向けている。


「敵、本機を完全にロックしています」

「上等、一気に殲滅する!

 カルミア、守りは任せた」

「了解。シールドを正面に展開します」


 敵の放火が押し寄せる。

 それと同時に、サブアームが掴んだシールドが前面に展開される。

 ガトリング砲の弾がシールドを叩きつけるが、シールドを構える新型の足を止めるには至らない。


「このまま、一気に近づく!」


 そう息巻いた直後、2機のキャノン砲がシールドに直撃した。

 キャノンの火力に機体の足が一瞬止まる。

 シールドへの直撃、


「ッ‼ カルミア、ダメージは⁉」

「目立ったダメージはありません」


 カルミアの報告に耳を疑う。

 システムのバグか? 115mmの直撃だぞ⁉

 思考がこんがらがる中で、一呼吸置く。そして、結論に至る……まぁ、いいか! と、

 

「殺るぞ、カルミア!」

「了解」 


 再び機体を走らせ、ガトリング装備の敵に向かって突進する。

 システムが作り出す火花のエフェクトと同時に、シールドが振動する。

 だが、恐れることは無い。115mm2問の直撃を受け止めれるシールドならこれくらいの攻撃で──


「シールド強度半減、そろそろ持ちません」


 と、思ってたんだけど。

 うん、ダメージはデカかったか……。

 ──けど、まぁ、これだけ近づけば俺の勝ちだ!

 敵との距離が200mを切った所で、大型サーベルをぶん投げる。

 風を斬って飛ぶサーベルが、弾を切りながらガトリング砲に突き刺さる。

 直後、ガトリング砲が暴発! 煙が敵の視界を一瞬奪う。

 その隙を逃さまいと敵との距離を縮める。

 チラリと残りの敵に視線を送る。

 両翼にいた他の2機はキャノンを捨てライフルを持ち替え、放火を浴びせてくる。それを、カルミアの操るシールドが抑える。

 再び前を向くと、ガトリングを失った05が腰に装備していたハンドガンに手を伸ばす。


「やらせるか!」


 投げた後に射出させていたナイフを敵の胸を突き刺す。

 これで、8機目……ッ!

 敵のツインアイから光が消えていく。

 

≪右舷のシールド破損により、シールド破棄します≫


 嘘だろ、このタイミングで限界が‼

 右のシールドが破損したデータのように消し飛ぶ。

 直後、視界が開いた右メインカメラにライフルを構える05が映る。


「ッ‼」


 敵の銃口が火を噴く。

 直撃を浴びる⁉ ここで、終わるのか?

 いや──まだだ!

 ナイフを離し右手でコックピットを庇う。

 装甲板を削る火花のエフェクトがコックピットを照らす中、次々と悪い知らせが飛び交う。

 

≪右サブアーム深刻なダメージにより行動不能。右メインカメラ軽傷。右碗部の追加装甲半減。

 左のシールドから振動を確認。左舷の敵、攻撃を始めました≫


 このままじゃ殺られる!

 いや、まだだ。まだ、何か手はあるはずだ! なにか策が……。

 その場に立たずみ、攻撃を必死に受ける中。

 突然右側からの攻撃が止んだ。


「右側からの攻撃停止。弾倉が空になったもようです。装填まで6秒」


 逃げるか? いや、逃げたところでこのダメージじゃ、追撃されて終わる。

 なら……今殺るしかない‼

 

「左舷の撃ち続けている奴からやる。カルミア、守りは任せたぞ!」

「リロード中の敵から攻撃される恐れがあります」

「それよりも早く敵を倒すッ!」


 振動で揺れるシールドに隠れ、敵に向かって突撃する。

 シールドに当たる弾の数が増えていく。

 1枚のシールドでは機体全体を守ることはできず、何発か右半身の追加装甲に軽い金属音が音響く。

 それだけだ。それだけのことだ……機体のシステムは停止してはいない。

 まだ動く! まだ、れる!

 敵の弾丸を浴びながら敵に向かって突進する。

 右腕の動きが悪い。すぐさま、右腕を使うのを諦め左の腕で右腰に付いたサーベルを抜く。

 左肩を前に突き出し、体を半身にする。サーベルを右腰まで落とし、放たれるその時まで一閃を待つ。

 振るのはたった一刀、この一撃で終わらせる!

 敵との距離が有効射程に届く。それと同時にシールドにから来ていた衝撃が消えた。

 いまだ──


「カルミア、シールドをどけろ!」

「了解」


 シールドが左側に素早く移動する。正面に05を視認する。

 敵は既にライフルを捨ててナイフを構え、防衛に回っていた。


「──そんな短剣(もの)で!」


 貯めていた一撃が敵の腹部に向かって放たれる。

 横一閃。

 絶対に避けられない間合い。コンマ数秒、敵はその場に立ち尽くすように見えた。

 直後、サーベルの刃が敵の腹部に酷い金属を響かせて横から装甲を潰していく。

 勝った! と、心の底から歓喜に浸り、勝利を確信した。

 

 そこにできた一瞬の油断が、いけなかった……。 


 腹部を切り裂く金属音とは別に、食いちぎるような金属音が左腕から鳴り響いた。

 恐る恐る視線を音がした方へ向ける。

 敵の超振動ナイフが、左腕の追加装甲を食い破っていく。


≪左腕部にダメージ、振動ナイフのハッチ破損、使用不可能≫

「な、左腕を……!」

「弾きます!」


 05の頭部にシールドの最短が突き刺ささり、敵が半分まで突き進んだサーベルと共に地響きを立てて倒れる。

 すかさず左腕の反応を確認するが、手先が全く反応しない。

 ナイフの刃がメインアームまで届いたのだろう。

 とんだ誤算だ。まだ、一機残っているってのに……。

 公開しているのつかの間、リロードを終わらせた敵からの発砲が始まる。

 背後から敵の銃弾が襲い掛かる。それをカルミアがシールドを展開させすぐさま防ぐが、


≪シールドの強度限減少、破壊到達まで残り僅か≫


 それも、もう持ちそうにない。

 右腕は動きが鈍い。右のサブアームは破損。

 残っていた左腕もこの有様。

 どうする? 攻撃を受け続ける中、思考を巡らせる。

 腰のサーベルは? ダメだ、メインアームの握力ではもう持てない。

 なら、左腕のナイフを敵の胸元で射出させるか? ……ハッチが壊れてて取り出せない、か。

 ライフルも無ければ、武器も持てない。


「どうすればいい……」


 目を鋭くして思考を巡らしていると、


「琴美祢様。一つ提案があります」


 カルミアの言葉に視線を後ろに向ける。


「提案? なんだ、言ってくれ」

A.S.T.(アスト)システムを使います」

「A.S.T.システム?」

「簡単に説明するなら、私が機体と同調し、機体の性能を100%引き出すシステムです。

 琴美祢様の許可があれば……」

「ダメだ!」


 カルミアの提案に大声で否定する。


「それだけは、絶対にダメだ……!」

「ですが、それ以外に勝機はありません」


 カルミアの言うことは確かに正しい。

 だけど、ここでそれを使えば、俺は自分自身がカルミアの相方に相応しくない事を自分で証明してしまうことになる。

 それじゃダメだ。俺は、俺の力でこの危機を脱して見せる!

 腕は破損。武器はあるが持つことができない。

 今あるのは、本体を覆う追加装甲のみ。

 ──ん、装甲? そうか、これなら!


「カルミア、追加装甲は敵の攻撃にどれくらい耐えられる?」

「装甲は分厚い05の物を採用していますが、集中砲火を浴びれば7秒も持ちません」

「そうか……7秒も持つか」


 カルミアの答えに少しは勝機が見えてきた。

 後は賭けだな……。


「カルミア、敵の動きは俺が止める。

 トドメを任せる」

「もちろんです。ですが、どうなさるおつもりで?」

「すまないが説明している暇はない。やってくれるか?」

「……分かりました。やってみます」

「よし、行くぞ!」


 シールドを構えて敵に突進する。

 やることはシンプルだ。

 だが、問題はそこまで新型(こいつ)が持つかだ……。


≪シールド限界値に達しました。

 シールドを自動的に破棄します≫


 目の前のシールドがデータの欠片へと変わり弾け飛ぶ。

 直後、機体に弾丸の雨が降り注ぐ。

 追加装甲が本機への直撃を防いでくれるが、


≪追加装甲の強度急激に低下≫ 


 それもあまり持たないだろう。

 だが、足は止めない。降り注ぐ銃弾の豪雨に向かって突き進む。


「07、お前も新型だと言うのなら、意地を見せてみろ!」

≪左腕のダメージ限界値に達しました≫


 警告音の続いて左腕に力が入らなくなる。

 まだだ、まだ終われない!


「いっけぇぇぇえええ!」


 敵に向かって飛びかかる。

 轟音を立てて敵と自分の機体が地面に倒れる。

 暴れる敵がナイフを手に取り、背に刃を突き立てる。

 金属の破砕音がコクッピットに鳴り響く。

 これで、敵の動きは抑えた。


「今だ、やれカルミア!」

「はい!」


 左のサブアームが背に装備され大型のサーベルを取り出す。

 それと同時に、敵はナイフを引き抜き、コックピットがある位置に刃を突き立てるように振り上げる。

 直後、機体の画面に真っ黒な液体が飛び散る。

 液体の間から見える、敵の首下に突き刺さる巨大な刃。


「やった、のか?」

「……敵の動力、完全に停止。

 敵撃破。敵の追撃ありません。状況終了します」

≪命令を受理。試験運用テスト終了、機体のロックを解除……完了≫


 AIがテスト終了を告げる。

 今まで広がっていた光景が、何事も無かったかのように消失していく。

 ギリギリだったが、なんとかなったか……。

 安堵と同時に肩から力が抜ける。直後、インカムからトーレスの声が響き渡る。


『──ご苦労。これで、機体の試験運用は終了だ。

 速やかに倉庫に戻ってくれ』

「了解。

 カルミア、機体とのリンクを斬って良いぞ」

「はい、ことみね、さ、ま……」

「カルミア?」


 後ろを振り向く。視界にぐったりと項垂れたカルミアが映る。


「カルミア? カルミア‼」


 呼びかけるが返事はない。


「返事をしてくれ、カルミア!」 


 続いて大声で叫ぶが状況は変わらない。


「AI機体を立ち上がらせてその場に固定。

 身体保護機能解除。同時にカルミアの状態を調べてくれ!」

≪Roger。機体の操作を譲渡。起き上がります≫


 機体が立ち上がりコックピットが水平になる。

 同時に体を固定したアームが緩む。


≪続いてP29の状態を確認します≫

「急げ!」


 苛立ちにながら、トレースシステムから手足を引き抜く。

 席を乗り上げ腹部でバランスをとり、カルミアの小さな口と鼻元に手をかざす。

 息は、しているな……。 


「カルミア、しっかりしろ!」


 肩を揺するが目を開ける気配はない。

 どうすればいいのか迷っていると、AIが報告を始める。


≪P29、呼吸、心拍数正常。ですが、身体に相当の負荷を確認。

 状況整理──結果、P29は疲労回復の為に、睡眠状態に移行したと判断します≫

「睡眠?」


 思わずメイン画面を目を向ける。


≪肯定です。

 寝ている子供に体を激しく揺すったり、大声で起こそうとする方法はよくありません。

 適切な方法を提供できますが、ご覧になられますか?≫


 再びカルミアに視線を戻す。

 気持ちよさそうに寝息を立てて寝るカルミアに、ふっと笑みをこぼして再び席に戻る。


「いや、必要ない。このまま帰るまで寝かせておくさ……

 火器管制オフ、戦闘モード、カルミアとの同調を解除してくれ」


 手足を再びトレースシステムに突っ込む。


≪P29との同調は既に切れています。火器管制、戦闘モード解除のみでよろしいですか?≫

「あぁ、ならそうしてくれ」

≪Roger

 戦闘モード解除、琴美祢様に操縦を譲渡します≫


 ALTSが手足にフィットするようにもったりと締まる。


「さて、帰るとするか……」


 足を踏み出し歩き始める。

 夕暮れを背に浴び、巨大な影が行く手に伸びる。

 それを追うかのように機体を進み帰る場所へと向かっていく──

次回、プロジェクト・アーミー第17話

ト「──と、言うわけだ。

  これがパイロットのデータだ。構成は君に任せる。他に必要な物があれば言ってくれ」

カ「そうかい。だが、良いのかい? あいつに任せて」

ト「あぁ、そのことだがパイロットは変更しても構わない」

カ「ほぉ、それはアイツじゃ不足だって言いたいのかい?」

ト「どう取ってもらっても構わない。とにかく、後のことは任せた──」

カ「……琴美祢 相馬。

  ──アンタが私の部隊にとって幸か不幸か、見極めさせてもらうよ」

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