第16話 前編
「機体のチェック急げ! 各部関節の出力の調整、C設定で行うぞ」
「この機材はこっちじゃねぇぞ!」
「おい、新入りは何処に行った⁉」
「あっちで、新型のフレーム使ってポールダンスしてます!」
「なにしてんだあの若僧は……? 連れてきてこっちでやらせろ!」
いや、作業させろよ……。
騒がしい倉庫の端に置かれたベンチに座り、俺は整備士にツッコミを入れて、新型を眺める。
隣に座るカルミアは何処から持ってきたのか、カロリーメイトを口に運んでいた。
色からしてチョコレート、もしくはココア味だろう。
再び新型を眺めながら、シミュレーションの時に出てきたあの新型の事を思い返す。
あの攻防一体の戦法。
かなりの強敵だった……。あのCPUのデータ元になったパイロットは相当の腕だな。
今回はなんとか勝てたけど、もし連戦であれほどの手練れを相手をすることになったら、俺は勝てないだろう。
それにしても、あれから感じた殺気……似ていたな。あの時の黒い06に。
あれは一体──。
顎に手を当てて考えていると、硬い何かに頬をつつかれる。
視線をそちらに向けると、それが頬に当たる。
硬い何か。その正体は黒いカロリーメイトだった。
「何してるんだ? カルミア……」
「琴美祢様のバイタリティが減少していたので、食事をと……」
「それで、俺の頬をカロリーメイトでつついていたと……?」
「すみません。口元に運ぼうとしたのですが閉じていたので」
突いても開くものでもないと思うが……。
ため息を付いていると「ぐぅ~」っと、お腹の虫が元気よく鳴り響く。
「……」
「どうぞ、琴美祢様」
「……うん、ありがとう」
一言お礼を言って、カロリーメイトを受け取り袋を開けて中身を取り出す。
色は茶色。
これは、ココアか?
整備される機体を見上げながら、カロリーメイトを口に運ぶ。
……これ、チョコレートじゃん……。
小腹がすいた時に食べる味としては、疑問に思うが。
疲れ切った頭に栄養を与えるには、このチョイスは中々……。
カルミアから貰ったカロリーメイトを頬張っていると、
「やあ、相馬。お疲れ様」
名前を呼ばれて振り向くと、見慣れた白衣を着崩したトーレスが歩いてくる。
「稼働試験、いいデータが取れた。
感謝するよ」
「それは、カルミアと相方になる資格が手に入ったと思ってもいいのか?」
「あぁ、もちろんだ。さて、次の指令なんだが……」
「まだあるのか⁉」
「何を言ってるんだ。
あんなので終わる訳ないだろ?」
あんなのって……十分きつかったんだけどな。
「いや、でも。カルミアも疲れてるだろうし……」
「私は大丈夫です」
「彼女もこう言ってるんだ。
機体の動作誤差修正も兼ねて頼んだぞ」
笑顔で俺の肩を叩くトーレス。
え、いや。マジか? マジなのか!
「琴美祢様、頑張りましょう」
意気揚々というわけでもなく、ただいつもの表情で胸の前でガッツポーズをとるカルミア。
「ふむ、やる気があるのは良いことだ。
それでは、私はモニターでデータを取ってるから。先程みたいにキチンとこなしてくれたまえ」
そう言ってトーレスは来た方向へと戻っていく。
……まぁ、カルミアの相方として正式に採用されたし今は、良しとしよう……。
「なぁカルミア。
絶対に無理だけはしないでくれよ。辞めたければ辞めればいいんだからな」
「はい、琴美祢。
ですが、私はもうあのような失態はいたしません」
そういうことじゃないんだけどな……。
上目図解で元気なカルミアに本音も出ず、ため息をついていると。
機体を整備の指示を出していた男がこちらに歩いてきた。
「琴美祢さん、新型の整備が終わりました。
すぐさま試験を開始できます」
「……あぁ、分かった。
すぐに行くよ──っと」
重い腰を上げ、ズボンに付いたホコリをはたき落とす。
「さて、行くか」
「はい、次もよろしくお願いします。琴美祢様」
ペコリと頭を下げるカルミア肩をポンポンと叩き笑顔で答える。
「あぁ、任せておけ」
次回、プロジェクト・アーミー第16話 後編
部A「主任、機体の戦闘データは驚くべき数値を出しています。
しかしP29の方は、これといって良いデータが取れてません」
ト「そりゃ、アイツが彼女の能力を使ってないからさ」
部B「それは、パイロットが自分の技量に自信を持っているからなのでしょうか?」
ト「いや、ただ子供思いなだけだよ」
部A「では、P29のデータはどうなるんですか?」
ト「まぁ、それはアイツ次第だな……さて、続きを始めようか」




