第11話 sideカルミア
前回のあらすじ。
カルナ様達と合流した琴美祢様と私。
直後、カルナ様判事による裁判が始まる。
被告人は私を抱える琴美祢様。
議題は琴美祢様のロリコン疑惑。
違うと否定を続ける琴美祢様であったが、直ぐ様証拠写真を出され沈黙する琴美祢様。
琴美祢様の性癖の真偽が定かにならない間に、私は33着もの服と共に試着室に放りこまれるのであった。
※
「お前ら、覗くんじゃないよ!」
琴美祢様達に指を指して釘を刺す。
「大丈夫ですよ隊長。相馬の奴が覗かないよう、俺達がしっかり監視しておくんで」
「おい、ロバーツ。なんで俺が覗くことが前提なんだよ! 指摘する奴なら隣にいるだろ!」
琴美祢様はロバーツ様の隣にいるサイガ様を指さす。
それに対し、サイガ様はため息をつく。
「姉さんが着替えてないのに、覗くわけないだろ……。
ここで覗いて得するのは、ロリコンなお前だけだ」
「俺はロリコンじゃないって何度も言ってるだろうが!」
「じゃあロバーツにサイガ。見張りは任せたよ……!」
「「へ~い」」
サイガ様、ロバーツ様の返事に、反論する琴美祢様の言葉を遮り。カルナ様は口元を笑みを浮かべて、カーテンを閉じた。
「さて、まず何を着せようかねぇ?」
そう言って、山のように積み重なった服を漁り始めるカルナ様。
その姿が、何処となく琴美祢様と同じように見えたが、それがなんなのかは私には分からない。
顔の骨格は──似ていません。話し方も性格も異なります。
いったい私は何故そう思ったのでしょう?
「なんだい、ぼ~っとして。私の顔になにかついてるかい?」
気づけば服を持ったカルナ様がこちらに顔を向けていた。
「いえ、何でもありません」
「そうかい……。
さて、それじゃ最初はこれを着てみようかねぇ」
そう言って、カルナ様は黒い布地をこちらへと差し出される。
「これは……ワンピースでしょうか?」
広げたそれは、琴美祢様と見つけたワンピースによく似た黒く大きな服です。
ただ、この服にはワンピースには無い、長い袖があります。これも、ワンピースの一種なのでしょうか?
悩む私を前に、カルナ様は口を開く。
「これは、ワンピースのようなものでねぇ。
アラブの服で、アバーヤっていうらしいよ」
「アバーヤ……」
「……さて、着替えさせてやるから。早くその服を脱ぎな」
「はい。カルナ様」
私はコクリと頷き命令に従い、服を脱ぐ。その時、装備していたカロリーメイトが内ポケットからすり抜け、地面へと散乱。
「直ぐに拾います」と一言謝罪し、散乱したカロリーメイトを拾い始める。
「あんたは、毎日これを食べてるのかい?」
カルナ様はメイプル味の箱を拾い目を細める。
「はい。カロリーメイトには、1日分の栄養素が含まれております。これさえあれば食事に掛かる時間の問題は解決だ! と、主任も言っていました」
「主任? それは、お前らを作った親のことかい?」
「はい。その通りです」
「……」
はぁ~っと深いため息の後、カルナ様は拾いながら口を開く。
「これは、あくまで非常栄養食だよ。
あんたらの生みの親は、成長期は止まってるんだ。でも、あんたらは違うだろ……。だから、ちゃんとした飯を食いな。
じゃないと、いざと言うときに力なんて出やしないよ」
「これでは、不十分ということですか?」
「そういうことだよ。あんたは、まだチビなんだ。
だから、ちゃんと飯を食いなよ」
それに──と区切って、カルナ様の口元が緩む。
「今日は、琴美祢の奢りだからね。しっかり食べなきゃ損ってもんだよ」
「カルナ様は、食費代に困っているのですか?」
茫然とした表情のカルナ様が、再び笑みを浮かべて笑い始めた。
「そうかいそうかい。あんたには、そう聞こえたのかい」
数秒笑い続けたカルナ様は、お腹を押さえて笑いを押し殺して話を続ける。
「いや~、すまないねぇ。
まったくアンタは、肝が太いというか、デリカシーがないというか……」
「私の発言はデリカシーに欠けていたのでしょうか?」
「まぁ、そうだねぇ……。もう少し、相手の感情を理解して話すといいんじゃないかい?」
「感情……それは、どうすれば身に付くのでしょうか?」
私の発言に、カルナ様は目を丸くする。
そして、獲物を見るような冷静な目で口を開く。
「身に付くかどうかは、あんた次第さねぇ。
もし、身に付けたいって言うんなら琴美祢の奴を見て学びな。あいつは感情が顔に出やすいタイプだからねぇ、勉強になるはずだよ。それでも分からないなら質問でもしな」
「ですが。それでは主様を困らすことになるのでは、ないでしょうか?」
「困らしていいんだよ。琴美祢はお前さんに頼られるのがうれしいはずだからね」
「何故そう思うのですか?」
「それが、あいつだからだよ……。
さて、長話がすぎたね。早く着ちまいな……!」
そう言って、カルナ様は再び山のように積み重なった服を漁り始める。
私はそれ以上追及することなく、言われた通り服を着始めた。
「着替え終わりました。次は何をすればよろしいのでしょうか?」
「そうかい。なら、少しじっとしてな……」
そう言うと、カルナ様は手に持っていた黒い布を私の頭に巻き始める。
※
「──これで、いいねぇ」
ようやく納得したように、膝を折った状態でカルナ様は頷く。
「さぁて、着心地の方はどうだい?」
「……検査します」
そう言って、私は今の状態を分析を始める。
まず視界。カルナ様に巻かれた黒い布に合わせて、目元から下をまで隠す一枚の黒い布のせいで上下の視界が狭い。
続いて動作。前に一本踏み出そうとすると、スカートの裾を踏みそうになる、それに足の稼働範囲も狭い。
結論──
「視界が悪く、動き辛いです」
「そりゃそうだろうねぇ」
カルナ様は当然といった表情で答える。
「でも、一応審査は受けるよ。
点数が高い服を買うって、ルールだからねぇ」
そう言って、カルナ様は立ち上がりカーテンの向こう側に視線を向ける。
「さて、野郎共! しっかり採点しなよ!」
大きな声で、命令を下すなりカルナ様は勢いよくカーテンを開ける。
「さて、お前ら点を掲げな!」
カルナ様の指示に、ソファーに座る琴美祢様にロバーツ様、サイガ様は点数が書かれた札を上げる。
左の琴美祢から一番右のサイガ様から順に、6点、3点、8点。
合計=17点。
「ロバーツ、あんた採点が厳しいんじゃないかい?」
カルナ様の指摘に、ロバーツ様は呆れた表情で首を振って答える。
「俺は正直に、似合ってないと思ったからこの点数なんですよ」
「そうかい? 私は似合ってると思うけどねぇ」
カルナ様は私の姿を見ながらこ首をかしげていると、サイガ様が頷き口を開く。
「確かに、似合ってると思う。でも、姉さんが着ればもっと似合いますぜ」
「誰が私が着たときの感想を言えといった。
それに、こんな歩きづらい服、着たくもない」
皆様がどっと笑う中、ふとした疑問が口に出た。
「なら、なぜ私に着せたのでしょうか?」
その発言に、笑い声が途切れる。
これが空気が凍るっというものだと、この時初めて理解した。
そんな中、数秒の間が空きカルナ様が口を開く。
「そりゃ、あんたなら似合うだろうと思ったからさ」
「そうですか……納得しました」
次の瞬間、琴美祢様、ロバーツ様、サイガ様が再び笑い出す。
それに続いて、カルナ様も高らかに笑い始めてる。
「なぜ笑っているのですか?」
「すまないすまない。あまりにも拍子抜けな返しだったからねぇ」
「それは、いけないことだったのでしょうか?」
「いや、今はそのままでいいよ。でも、少しは疑うってことをしないとねぇ。
そのままじゃ、この先生きていけないよ……」
「私は、主様の為に存在しています。主様の為に死ねるなら構いません」
言い切る私を見て、カルナ様はにニンマリ笑い琴美祢様に視線を送る。
それに、そっぽを向く琴美祢様の先でロバーツ様とサイガ様が同じようにニンマリ笑い琴美祢様を視線を送る。
それに対し琴美祢様は、逆方にそっぽを向く。
その頬は紅潮し、羞恥心が顔に表れているのがとられた。けれど、表情は羞恥心とは違う。何か納得していないような顔をしていた。
その表情からは、何を考えているのか読み取ろうとしていると、突然カーテンが壁を作った。
カーテンを閉めたカルナ様は、服を漁りながら意気揚々と私に命令を下さず。
「さて、ガンガン行くかねぇ――早く脱いで準備しな!」
「了解しました」
敬礼して、私は服を脱ぎ始める。
──それから先、私はカルナ様の選んだ服を着て採点を受けた。
琴美祢様とサイガ様は高得点を出すのに対して、ロバーツ様は低い点数が続いたが、自分が選んできた服には高点数を上げました。その時の服はMARPATの戦闘服。動きやすく、武器、弾薬を仕込めるポケットを完備。私的には申し分ない服なのだったのですが、サイガ様や琴美祢様の点数が低く不採用となった。
何が、いけなかったのでしょうか?
疑問を浮かべながらも、次の服の準備へと執りかかる。
「さて、次は浴衣だね」
そう言って、カルナ様は広げたそれを私に手渡すなり服の小山を探り始める。
その間に、私は袖を通しボタンを留めようと前身頃に手を伸ばす。
だがそこで、一つの問題が起こる。そこにはあるはずの物がなく動きが止まったのだ。
ボタンもファスナーもない……! これは、少し前に着た上着というものでしょうか?
ですが、あれは服を着てその上でもう一枚羽織るものでした。
自分の体を見る。羽織っている服の下には服はなく、自分自身の肌が見えている。
ということは、これ自体が服なのでしょうか? いえ、服ではあるのですが──。
これ以上時間をかける訳にいかず、カルナ様の方を向いて訪ねる。
「カルナ様。この服はどのように前を閉じるのでしょうか?」
「それはねぇ、帯を使って前を閉じるんだよ」
「なるほど、理解しました。回答感謝します」
「こんなことで、感謝されてもねぇ──それに、それを着る前に、浴衣スリップを着ないとねぇ」
そう言って、カルナ様は白く薄い布を私に手渡す。
「それを着たら言いな。着付けをしてやる」
「わかりました」
お辞儀をして、服を脱いでカルナ様からもらったスリップを着る。
そこからは、再び浴衣を着てカルナ様が着付けを始める。
私はそれを脳内でトレースしながらジッと待機しする。
それから数分後──髪が整い着付けが終わる。
「これは──一歩の歩幅が最初に着た服よりも小さくないでしょうか?」
「まぁそうだろうねぇ」
全く気にせずといった感じで、カルナ様は言い切る。
「これでは、護衛が難しいです」
「それ、最初にも言ってなかったかい?」
「……言いました」
「なら、もう答えはいらないだろ」
私の返答にため息交じりに答えたカルナ様は、カーテンに手をかける。
「さて、準備はできてるかい?」
「はい、完了していますカルナ様」
「……そうかい。なら開けるよ」
そう言って、カルナ様は勢いよく幕を上げる。
なにやら静まった空気が漂う中。カルナ様は気にしない様子でつぶやく。
「今度のは、なかなか似合うと思うんだがね……」
鮮やかな服ですが。これでは目立って、琴美祢様を守れないのでは?
琴美祢様を見ながらそんなことを考えていると、琴美祢様と目が合う。
直後「そんな服で大丈夫か?」と言いたげな視線が送られて来る。私は首を横に振りそれを否定。それに対し琴美祢様は苦笑。やはり、琴美祢様も性能面に欠けているものがあると判断したのでしょう。
流石、琴美祢様です……!
「さぁ、点数はどうだい⁉」
手を掲げて、意気揚々と命令を下すカルナ様。
これに呼応されるように、琴美祢様にロバーツ様、サイガ様がプラカードを高らかに掲げる。
サイガ様、8点
ロバーツ様、4点
琴美祢様、10点
どういうことでしょう? 琴美祢様、高評価なのですが?
私が不思議に思っていると、カルナ様が口を開く。
「ロバーツ、あんた採点が厳しいんじゃないかい?」
「普通ですよ。普通……」
気だるげな返事でロバーツ様は手を振って答える。
それに対し、カルナ様は額に手を当てため息をつく中、突然サイガ様が立ち上がる。
「いや~。結構似合ってると思うんだけどな。
少し低目に締めた厚板帯の帯上げの結び目から咽喉まで大輪の花の莟のような張ってはいるが無垢で。
それ故に寂しい胸が日本の下町風に伊達な襟の合せ方がなんとも……姉さんなら絶対似合いますぜ!」
長々と語って、自信満々に親指を上げるサイガ様。それに対し、カルナ様は額に手を当ててため息交じりに「誰が、私が着たときの感想を言えと言った……!」と呟き。その後、カーテンを閉じた。
再び2人っきりの状況になるなり。カルナ様は再び大きいため息をつき、私の方へと向き直る。
「──さて、馬鹿の発言は忘れて、さっさと次の服を選ぶよ」
元気に振る舞うカルナ様。
その瞼の動き、口の動きから少し疲れているのがうかがわれる。
ですが、カルナ様の志気は高く。疲れなどは感じさせられない。
アドレナリンの分泌量が高くなっているからなのでしょうか?
いずれにせよ、食事と小休憩を取らせる必要があるのは明確。ならば、この服で最後の審判にしてもらいましょう。
「──カルナ様。貴女様から疲労を感じられました。
ですから、次に私が選ぶ服で最後にしてもらってもよろしいでしょうか?」
私が話し終わるのを最後に、カルナ様の雰囲気が変わる。
眉を歪め、目は尖らせてこちらを睨み付けてくる。
「それは、私が弱っているように見えるから、早く終えて休めってことかい?」
「肯定です。先程から水分を取るのみで、休みなく私の服を選んでくださり、着飾ってもらっています。
私は──私の衣類選びより、貴方の体調が重要です。十分な補給と休憩を取ってください」
私は道具として生まれましたからと、答えれば琴美祢様の命令に逆らうことになる。
ですが、私はこの人達よりも下の存在。使われる存在であることは覆らない。
だから──私なりに区切りを作らせてもらいます。
少しの沈黙の後、カルナ様の顔から怒りのようなものは消え、再び笑みをこぼして私の頭を軽く数回叩く。
「そうだねぇ、そうさせてもらおうか。私もいい加減腹がすいたからねぇ……!」
健やかな笑顔に、私は一度頷き。
自ら服の山を探り始める。そして、手にしたのは……琴美祢様から貰った白いワンピース。
「──カルナ様。この服を着てもよろしいでしょうか?」
「あぁ、好きにしな」
「了解しました」
次回、プロジェクト・アーミー第12話
琴「休暇は今日で終わり……。
明日からカルミアは……」
カ「琴美祢様。私は大丈夫です。
もう二度と、あのような失態は起こしません」
琴「──そうか。
(でも俺は、君のことが……)」
カ「琴美祢様」
琴「ん?」
カ「私、おにぎりが食べたいです」
琴「いきなりだな?」
カ「次回で私の好きな具が決まります」
琴「え、次回ってそんな話なの!?」
カ「はい。そんな話ですので、次回をよろしくです」




