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予想以上

「はにゃ~、素敵にゃネックレスにゃ……、こういうのつけてみたいにゃ……」


その後も散歩をしていると、でっぱりはとあるお店の前でガラス越しに商品を見ていた。


かなり大きそうな真珠のようなものが大量についているネックレスである。


値段は……。600リア? 相場が全く分からん、日本円でいくらだ?


まぁ仮にわかっても良く考えると俺1円、この場合は1リアか。全く持ってないのだから、同じことか。


「でっぱりはお金は持ってないのか?」


「持ってないにゃ。自給自足で過ごしてるから必要にゃいにゃ……。お金があることだけは、教わったけどにゃ……」


耳をへんりゃりさせて、苦笑いの表情になる。


俺に金があればな……、ぜってー俺以外の召還されたやつら金あんだろ。というか、せめて捨てるにしても、金くらいくれても良かったよな、いまさらだが。


ちらっと横目でとなりのパンを売ってる店を見ると、1リアと書いてあった。


日本ではパンが100円くらいだとすると、1リア=100円くらいか? ということは、あのネックレスは俺の世界だと6万円くらいか? 正確かどうかは知らんが。日本でもお金の単位は上がったのだから、もしかしたら、1リア10円かもしれんし、1000円かもしれんし。


どっちにしろ、6万円とか日本に戻っても持ってねぇ。


「お金はどうやって稼ぐんだろうな?」


「そりゃ働くしかにゃいにゃ」


まぁそうだろうな。でも俺もでっぱりも正体バレすると都合が悪いから、どっかに雇われるわけにもいかない。


この世界にはよく異世界である、冒険者という職業が無いので、ギルドやミッションが無い。


戦闘をする仕事は、兵士として国がちゃんと雇っていて、強いて言うなら傭兵がいる程度。


さすらいの冒険者は存在しない。つまり、金が欲しけりゃ、ちゃんとどこかに所属しなければいけない。


「まぁ、今日は見れるだけで満足にゃ。そんな顔はしにゃくていいにゃ」


俺甲斐性ないな……。今度1人になったときに、こっそりアルバイトでもしようかな? 良く見ると、日雇いで日当80リアとか意外とあるし。


「た、大変だ! 泥魔が南のほうに出現したそうだ! やばいぞ!」


そんな平温な空気が一瞬で乱れた。


『な、なんだって!』

『やばい! 家が、店が!』

『そんなこといってる場合か! 早く逃れないとここもやばい!』


その指令から阿鼻叫喚となり、ヒトもヒトガタも全て逃げ出していってしまった。


「い、いったいなんだ?」

「泥魔……、大変にゃ……」


「でっぱりは知ってるのか?」


「魔王が生み出す中でも最悪に近い魔物にゃ。全身全てが毒まみれで、触れたものはヒトでもものでもにゃんでも毒に犯されてしまうにゃ……」


「まじかよ……」


そりゃ逃げるわ。俺だってこえーもん。


「じゃあ早く俺達も逃げないといけないな」


「そうにゃ。魔法は全くきかにゃいし、飛び道具もきかにゃいにゃ」


「出てきたらどうすんだよ?」


「物理防御耐性だけはにゃいらしいにゃ。でも、周りを厚い毒の膜で防いでるから、かなり難しいにゃ。勇者様が、泥魔の中心の核をついて倒したことがあるそうにゃ。でも、それ以外では、暴れるのが勝手に止まるまでは、魔王でもとめられにゃいにょにゃ」


「おー怖い怖い。じゃあ、サンタマリアの国はどうなるんだ?」


「泥魔が出た国は、文明の進化が30年遅れると言われるにゃ。またサンタマリアの力が落ちてしまうにゃ……」


「でっぱり……」


でっぱりは目に見えて落ち込んでいる。


サンタマリアの力が落ちるということは、再びでっぱり達のヒトデナシが普通に過ごせる日常が遠のくということだ。


だが、こればっかりはどうしようもない。命あってのものだねだ。さっさと逃げよう。


『うわー!』

『キャー! 助けて!』


「な、何で前から悲鳴が……」


逃げ惑うヒトとヒトガタの波に乗って一緒に逃げていると、なんと前からその泥魔といわれる生き物が現れた。


それは生き物という感じはしなかった。たとえるならば、紫色にどすぐろい津波のようで、6メートルくらいの大きさがある。


その速度は今から走っても逃げられるものではなかった。


「うわぁぁぁ!」


しかし逃げないわけにはいかない。ただ、見ていると、ヒトがやや遅れている。


ヒトガタは元々身体能力が高いので、走る速度も速い。しかしヒトはそうではない。どんどん飲み込まれていく。


そのヒトを助けようとして、ヒトガタも犠牲になりかけていて、この国が本当にヒトとヒトガタを差別していないことが伺えた。


「にゃ! 行き止まりにゃ!」


俺とでっぱりは、でっぱりのすばやさで逃げられていたが、2人ともこの町の地の利が無かった。


そのため、行き止まりになってしまった。


「にゃー、にゃー……」


俺も引っ張って逃げてきたでっぱりは、肩で息をしていて、明らかに疲れていた。


「でっぱり……、大丈夫か?」


「あ、あんまり大丈夫じゃないにゃ……。いつも1人で走ってたからにゃ……」


でっぱりは俺の手を引いて逃げてくれていた。俺の脚もがくがくだ。


「……1人なら逃げれるか?」


「にゃ? それは1人なら、これくらいの行き止まり大丈夫にゃけど……、まさかにゃ……」


「2人とも死ぬよりは……、1人でも助かったほうがいいよな」


「駄目にゃ! でっぱりが無理を言って連れて来たにゃ!」


「だが、俺だけが助かる方法がないだろ? ならいいからさ」


「だめにゃ、にゅー」


首を振って猫声でなくでっぱりの顔は見ていられなかったが、選択の余地は無い。


「早くいけ! 俺に構うな!」


「……にゃー!」


でっぱりはずっと賢かった。感情的でなく、理性的にちゃんと行動できるいい子である。


さてと、今回の場合は全開のドラゴンとは状況が違う。


前は俺が一応能動的に動いた。あんなことはしたくない。


ただ、今回の場合は、もう自分で何とかしないと自分がまずい。


でっぱりがいい子でよかった。これは仮に成功してもでっぱりにはあまいいい結果にならないからな。


「グゴァァァァ!」


津波のような勢いで、おぞましい声を上げながら、俺に泥魔が迫ってくる。


「さて……、またぶっつけ本番か。こいや。俺のこの最低能力とにかくくさいでどうにかしてりゃるさ! インフェクトラ1!」


俺は全速力で走ったので、汗まみれであった。その汗を両手で思い切り手につけて、前に構える。


ザパァァァァァ!


俺の目の前は真っ暗になり、激しい衝撃を受ける。


「シュウジ――!」


でっぱりの叫び声が聞こえた。だが、叫び声が聞こえるということは、俺は生きているということ。そして、苦しくもなんともない。視覚もちゃんとある。


「うぉらああああああああ!」


そして、思い切り叫びながら、全身液体の泥魔の中で、唯一固体であったものをつかむ。


それは、こいつの核、つまり心臓的なもの。でっぱりに説明を受けたときから、それは周りの色よりも明るくて見えていた。


「ぐぎぁぁぁぁぁぁ!?」


耳を劈くような叫び声が聞こえると、俺の視界はどんどんしっかりしてくる。


「うぁぁ。気持ちわる……」


あたりも自分も全身紫色のねばねばした液体に絡まれて非常に気持ちが悪い。


だが、どうやら倒せたようだ。


『泥魔を倒しました! レベルが75になりました!』


倒せたことが間違いなく分かるいつものアナウンス。


「うう……」


「はぁはぁ……」


俺の周りには、苦しそうにうごめいているヒトやヒトガタがたくさんいる。だが、これはどうしようもない。


「悪いな……。でも俺は勇者じゃないから……。治癒魔法もないし……」


「シュウジ! にゃん?」


俺が呆然と立っていると、でっぱりが高いところから降りてきた。


「うぐっ、無事でよかっだにゃん……」


「どうした?」


でっぱりが口を押さえて、今にも吐き出しそうである。


「す、すごい異臭だにゃ……。泥魔のせいかにゃ……」


匂いがあるのは、泥魔のせいだけど、匂いの原因は俺の能力です。自分の匂いだから良くわかんなかったけど、泥魔のせいにしとこ。



辺りが民家の無いところでよかった。


「あ、ああ、ひどい匂いだな……。でも無事に倒せて……。よかった」


本当によかった。めちゃくちゃ怖かったもん。


相手が全身液体だから、インフェクトラ1を使って、相手の成分を全て俺と同じにすればなんとかなるという、またもや分の悪いかけをしてしまった。


自分と同じ成分ってことは、自分の血とか汗とかを被るみたいなもんだから、それならいい気持ちはしないが、別に何の問題もないと思ったが、何の根拠もなかったんだ。


今回はやらないと死ぬ結果だからやったけど、もし違うところにいて能動的にこいつを倒せといわれてもこの作戦は実行できなかった。怖い怖い。


「お、お見事です。まさか泥魔を倒せる方がいらっしゃるとは……」


「誰だ?」


俺はふと警戒をする。まだインフェクトラは解除していない。完全に体を洗うまでは解除しないほうがいい。一応はもともと毒性のあるものを今は体につけているのだから。


現れたのは完全武装をした、ひげのたくましい男だった。


「そ、そんなに警戒しないでくれ。私は、サンタマリア帝国の第3兵団魔法隊隊長のライオネルだ。今回私達が泥魔が来たと言う事で、この先のヒトやヒトガタを守るために、待機していたのだが、叫び声が聞こえて来て見れば、泥魔が倒されているではないか……。君はいったい……」


「いえいえ、俺はたまたま能力の相性がこいつと良かっただけです。俺は対したことはしてません」


「いや、君は英雄だ。是非王室に案内して、丁重にもてなしたい……」


「あ、それはいいです。俺とある事情で、あまり目立ちたくないんです」


いろいろいい評価をされてはいるが、結局は臭いだけの能力であり、あまり過大評価をされて、面倒なことにしたくないのと、ライニングにおいては、やっかいもの扱いを受けているので、やっかいごとになりかねかいので、断った。。


サンタマリアがどういうところかはよく分かっていないが、このヒトの対応を見る限りは、いい感じに思える。


ならば手間をかけさせるような真似はしたくない。


「そうですか……、しかしそれでは恩に報いることが……」


「どうしたんだい? ライオネル」


ライオネルの後ろから現れたのは、簡単にいうとイケメンであった。金髪に余裕のある笑顔、優雅で気品のある歩き方だった。

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