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暇すぎて出歩きそして出会い

「これも大丈夫っと、かなり食べれるものが増えたな」


俺がこの洞窟を根城にしてから、3日間。この世界で1日という概念があるかは知らないが、一応地球と同じように、日が昇って沈む流れがあり、それが3回あったので、3日とした。


特段することもないので、好きなだけ睡眠をとった後、暇つぶしに辺りをうろうろする。


すると、人間の猟師らしき人をちらほら見かけ、その人間が木の実だけでなく、草やキノコや魚、そして、獲物を襲っている姿を見て、安全なものを確認した。


ただ、火をおこす手段がないので、魚や肉は食べられなかったが。包丁もないし。


そこらへんのサバイバル術は学んどけばよかったな。たんぱく質が足りなくなりそう。


同じ理由でキノコとかも無理。草はもともとサラダで生で食べるのだから、洗えば食えると思って食べた。


普通に食えたが、味がないのが問題である。さっぱりしてていいんだけど、味に飽きる。木の実と違ってどの草も味あんま変わんないし。


「しっかし暇だな~。寝るのは好きだけど、食べ物も水も問題ないとなると、することがありゃしない。頑張って火でも起こしてみるか?」


原始的にやるなら、木と木でもこすればいいんだろうが、あれ割りと難しいらしいし。


「ここ異世界だろ? 魔法があるんだよな? ということは火は科学的にじゃなくて、魔法とかで起こすんだよな。そのやり方だけでも分からないかな?」


と、ふとひらめいた俺は、また好きなだけ寝た後、道が分からなくならない程度にうろうろした。


1時間ほど歩くと、急に森を抜けて道に抜けてしまった。


「やべっ。人に見つかったらまた追われる」


別に今となっては撃退できるが、撃退すると、より問題が深刻化しそうな気がするので、余りかかわりたくない。


「た、たすけてにゃ~」


そんなことを考えていると、右のほうから、女の子の声が聞こえてきた。


「あ、やばい見つかる、隠れ……、猫耳だと?」


俺は誰か人が来るのかと思い、茂みに身を隠そうとしたのだが、その少女の見た目に一瞬目を奪われた。


見た目がかなり可愛らしいとか、かなりスタイルのよい体をしているとか、かわいらしい服装をしているとか、それくらいなら、俺はすぐに逃げた。


だが、その少女の頭には猫耳がついていたのである。これは抵抗できなかった。


しかもぴくぴくと動いているのを見る限り、間違いなくナチュラル猫耳。ついているのではなく、はえていると言っても過言ではないだろう。まさに異世界。俺好み。


彼女を追いかけているのは、俺をちょっと前に襲ったワニみたいなやつを更におおきくしたやつで、見た目は恐竜に近い。大きさも3メートルくらいあるし。


「うにゃあ!」


その猫耳少女が転んでしまう。足は猫耳少女がかなり速かったので、逃げ切れるとも思われたが、それでどんどん距離を縮められる。


「これを見逃したら後味悪いな。助けよう」


ここら辺で人を助けたという美談があれば、今後町に戻れるかもしれない。

何より、猫耳を見捨てられなかった。こっちが本音だ。


恐竜っぽいやつに向けて、攻撃態勢に入る。


「唾液でもいけんだよな。あまり見栄えはよくないが」


血とか汗は自分の意思では出しづらい。だが、唾液は簡単に出すことができる。


俺は指を舐めて、指パッチンを行った。


『グガァ!?』


俺の攻撃を受けて、そいつはバランスを崩して思い切り右に転ぶ。


「図体の割りに足が細いから転ばせればこっちのもんだ。食らえ!」


俺は両手で指パッチンを連発した。この3日間、何もしてなかったわけじゃない。


レベルが60になったので、複数の技を使えるようになり、それを実験していた。


ランク2くらいでも結構匂いがするようで、それを発動させておくと、洞窟に虫1匹としてよってこないので、めちゃくちゃ楽だった。


そして、俺のメインウエポン? のセパレートランク2であるが、どの程度の命中精度があるとか、距離があるとか、どんな相手に聞くかをいろいろ実験してみた。


命中精度はかなりいい。距離は相手が見える程度ならほぼOK。威力は大抵の相手が戦闘態勢に入れなくなる。


そして、血液>涙>汗>唾液の順番で威力も微妙に違った。


ワニっぽい、あああいつはダイルって名前だったけど、血のついて左手と汗のついた右手で、相手のリアクションが微妙に違ったので、実験したところ、この結果が伺えた。


ちなみに、この後説明書を読んだところ、出すのが難しいものほど、威力が高くなるとの記載があった。


血のほうが、涙より出すの簡単な気がするけどな。となると、他の液体も試してみたくなる。鼻○とか、排泄物の小さいほうとか試して見たくなる。汚いからやらないけど。唾液まででギリだろ。


そして、俺の匂いにたまらず、逃げて行った。いやーうまく行き過ぎである。


「あの~、助けてくれてありとにゃ……」


俺がいろいろ分析していると、後ろから声をかけられる。


「あ、ああ、ぶ、無事で何より」


俺はついどもってしまった。だってしょうがないだろ。やっぱりめちゃ可愛いもん、普通に好みだもん、しかも猫耳、良く見ると猫尻尾もついてるし。でも顔は完全に人間で、ひげとかそういうものもついてないから、普通に可愛い女の子に、猫耳と猫尻尾がついてるようにしか見えない。ストライク3つで三振です。


「あなたは『ヒト』で間違いないにゃ? なぜ『ヒトデナシ』の私を助けてくれたのにゃ?」


何か知らん用語が出てきた。ヒトデナシというのは、俺の知っている意味とはまた違う気がする。


「えーと……、あ、実は俺はここら辺の育ちじゃないんだけど、とある事情でここに置いていかれて、3日くらい山の中で生活してたんだ。だから、この辺りの事情を知らないんだ」


「なんとにゃ! それは大変だにゃ。助けてくれたお礼もしたいし、私のうちに来て欲しいにゃ。そこでお話もできるにゃ」


「あ、ああ、よろしく頼むよ」


良く考えると、この世界に来てある程度会話が成立するのははじめてだ。神は除く。誰かと接するのってあったかいな。


「ちなみにあなたのお名前はなんていうにゃ?」


「ああ、悪い悪い、自己紹介してなかったな。俺は田島修二っていうんだ」


「タジマシュウジ? 長いお名前にゃ。どこからが名前にゃ?」


「俺はタジマが苗字なんだが、タジマでもシュウジでも構わんけど」


「じゃあシュウジでいいにゃ?」


「ああ、それでいい」


可愛い女の子から下の名前で呼ばれるのは妙にドキドキするな。


「君の名前はなんていうのかな?」


「でっぱりと呼んでにゃ」


「で、でっぱり?」


「でっぱりの名前はでっぱりにゃ」


「あ、ああよろしくでっぱり」


「うん、シュウジよろしくにゃ」


俺の前途多難にもほどがある異世界生活に、ちょっとばかし彩りができた気がした。可愛い女の子と仲良くなれるのは、やっぱりお約束だよな。


でも名前は気になるな。この世界におけるでっぱりが、俺の知ってるでっぱりと同じ意味とは限らないが。

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