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とんとん拍子がすぎる

「う、うう……」


「頑張りますね」


3日間、ほぼずっと異臭の中に居ながら、今だにリアンは口を割らなかった。


異臭のせいで、何かを飲んでも食べても吐いてしまうので、事実上飲まず食わずなので、かなりリアンは弱っていた。これ以上の拷問があるのかというレベルだ。


「は、は、話す……。話すから……、助けてくれ……」


「話してくれたら助けますよ」


「み、水を一杯だけ……、それで話す……」


「はいはい、じゃあ5秒だけときます。はい。水どうぞ」


俺の持ってた水を渡して、それを飲む間だけ、オリジナルフェチを解く。



「はぁはぁ……」


「じゃあもう1回と、ランク2!」


「うぐ!? ん?」


「少し緩めの異臭です。これくらいなら話せますかね?」


オリジナルフェチではなく、周りに匂いを振りまくランク2を選んだ。我慢できるレベルだし、口を抑えることはできる。


だが匂いの性質は同じなので、かなり警戒されているようだ。


「じゃあお願いします」


「ヘスで協力をしてくれているのは、ヘス王国第1王子、マイル=ヘスと、ヘスで1番の資産家、リッキー殿だ。権力と資金力の2つの両方を得て、私はヘスの最北端に、こっそり研究所を作って……、奴隷を多く手に入れ……、実験をしていた……」


「そうなんですか。それで、何であなたを助けに来るんです? 実験ができなくなるからですか?」


「違う……、私がいなくなっても、もう実験はできる……、私の名前はリアン=バリ……。ヘス王家の分家……だからだ」


「!? ヘスの王族?」


「私に話せるのはここまでだ……。後は好きにしてくれ……。私は休みたい」


「まぁ、話してくれましたから、いいっすよ、この後の処遇は俺の知らない話ですから」


俺は匂いを解除して、リアンが意識が無くなるのを確認してから、牢屋を後にした。


「でっぱり、お疲れさん。食料とか水とかもありがとな」


「うんにゃ。話は聞けたかにゃ?」


「ああ、面白い話が聞けた。ヒューリさんに報告に行こう」


そして、俺はヒューリさんのところに向かった。


「ヒューリさん、報告にあがりました」


ヒューリさんは1人で王室にいたので、俺とでっぱりとヒューリさんの3人だけしかここにはいない。


「シュウジくん、ご苦労様。その表情を見る限り、いい知らせのようだね」


「ええ、ちゃんと聞きだせましたよ」


「さすがだ。それで、どうだったのかな?」


「はい、実は」


俺は聞いた話をそのままヒューリさんに話す。


「……、にわかには信じがたいが、本当なのだろう」


「ええ、間違いないと」


「これで、正式にヘスに抗議文を出すことができる。おそらくあの我がままな王子も失脚するだろう。これならば、ヘスの今の現状を変えられるかもしれない」


「ヘスの王子をご存知なんですか」


「ああ、交流はある。特に第2王子のクリス王子は、あの国には珍しいヒトガタへの差別感情がないヒトで、ヘスで居場所がないようだったら、サンタマリアに呼んでもいいと思っているほどの賢人だ」


「へー、やっぱ全員が悪いわけじゃないんですね」


「だが、ヘスはどこまで行っても、ヒトガタへの差別の強い国だ。だから、支持は圧倒的にマイル王子の方があった。そのせいか、わがままに育ってしまい、いろいろやりたい放題だ。だが、今回のことは、サンタマリアへの明らかな介入。失脚のきっかけにはなる。彼が失脚すれば、現状王家の跡継ぎはクリス王子しかいないから、必然的に彼が継ぐことになる。そうなれば、今のヘスの現状を変えられるかもしれない」


「それはいいですね」


「本当にありがとう。君のおかげで、私の理想は近づいた。だから、是非これを受け取ってくれ」


俺は何か紙切れをもらう。


えーと何々? 『この度の功績を称え、シュウジ=タジマ殿に、カヴァリエ領を与える。同人は、シュウジ=カヴァリエ=タジマと名乗ることになります』かな? ん? 領?


「えーと、これは何ですか?」


「簡単な話だ。君は貴族の地位を得ることになった」


「へー、貴族ですかって、えぇぇっぇぇっぇ!?」


「シュウジ、貴族になるにゃん?」


「いえいえいえいえいえいえいえ、知ってますよね。俺の立場」


「ああ、もちろん知っているのだが……、前のときとは事情が違うんだ……。君は目立ちすぎた」


「俺がですか?」


「泥魔の功績のときは、目撃者もいなかったし、私がこっそり隠蔽することもできた。だが、今回は、多くの兵士や、一部の貴族にも、君の活躍が見られてしまった。それで、君の顔が売れて、どうやら最近の君は、可愛いヒトガタを連れていたことで、町でも知名度が上がっていて、泥魔の一件も君の功績であることが、知れ渡ってしまった。だから、君に何も与えないことは、どうしてもできなくなってしまったのだ」


あ、これは俺が悪いところもある。確かに目立ちすぎた。頭に血も登ってたしな。


「もちろん、君がいずれ帰ることは承知している。だから、領地もほとんど統治の必要が無い場所を選んでいるし、戦いに無理に駆り出すことも無い。代わりに、この地位は永久のものではなく、一定の時期ごとに更新が必要なものになっているが、君には都合がいいだろう」


なるほど。永久に地位が保証されない代わりに責任も低くなるものか。それなら確かに都合は悪くない。


「加えて、統治する場所は、君の家がある場所と、ロロロレの北部の一部分だ」


「え、ロロロレの北部の一部を何でサンタマリアが統治するんですか?」


「ここだけの話だが、でっぱりさん達がそこに住んでいるという話を聞いてから、ロロロレと交渉をしていた。北部はほぼロロロレの管理を離れていたこともあって、割と安く手に入れることができたんだ。それが、つい先日のことで、今回の話にちょうどいいと思ってね。君が管理すれば、でっぱりさん達も安全だからね」


「そこまで考えていたんですか?」


「いや、偶然が重なっただけさ。いずれ君が帰ったら、僕の直轄地にしてしまえば、それでもう安全だからね」


「ありがとうございますにゃ……、これで、ロロロレにいても安全ににゃりますにゃ」


彼女達の住んでいるところは、ほとんどヒトもヒトガタも来なかったが、それでも0ではない。だが、これでかなり安全になる。


「分かりました。それなら、俺が一時的にこの話を受けましょう」


そして、俺は貴族になった。なんですかこれは。


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