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また追い出されてうろうろしているうちに何とかなる

「なんて思っていた時期が俺にもありました」


結果。匂いはしてないが追い出された。


異臭騒ぎをおこしたせいで、指名手配されてて、無駄に顔が売れてた。


まぁ冷静に考えれば日本でも異臭騒ぎを起こすと逮捕されるし、基本黒髪のいないこの世界じゃ日本では地味だった黒髪も無駄に目立つ。


1回不審に思われた以上は、簡単にはいかないというわけだ。


「となると、違う土地に行くのがベストだろうが、地の利が全くないしな」


しかも追い出す側の最低限の礼儀である食料とか金銭的なものも全くもらっていない。これでは仮に地の利があっても途中でアウトである。


「めんどうくさいが、嘆いても仕方ない。こういうときは水と食料と寝床の確保が大事か。まぁ寝床については問題ないだろう」


自分には異臭が発される能力がある。多分どこで寝ても襲われはしないだろう。そこらへんはこの後暗くなる前に試すことになるが。


問題は水と食料である。水はここが森の中である以上どっかに川くらいあるだろう。ただ、食料は食べていい物が分からん。さっきから木の実やキノコとか草っぽいものが見当たるのだが、どれが食えるかは分からん。


「うーん、どうすればいいのやら……。お、川っぽいの発見」


いろいろ考えながら歩いていると、水の流れる音がして、川を発見した。


流れが急で幅が短いところを見ると、かなり上流だと思われる。そんなことは別にいいが。


「……大丈夫だよな?」


水は本当に綺麗で、浅いとは言え底が見えるほど透けている。これに問題があれば、この世界で水を飲むのは不可能と言ってもいいくらいで、日本で見たどの水よりも綺麗である。普通に売れそうである。


ただどうも、食料安全国の日本で育った自分としては、生水に不安はどうしても感じる。


「どうするか……、ゴクゴク、大丈夫だろうか……、ゴクゴク、あ、普通に飲んじまった」


いろいろバタバタしていて、緊張感もあったので、本能的に水を飲むことを抑えられずほぼ無意識に飲んでしまった。だがこれはうまい。


「……うん、大丈夫そうだな」


その場で30分ほど待ってみたが、腹が痛くなる様子は無い。問題は無かったようだ。


「そういえばこういうとき川を上に上がっていくといいんだっけな」


適当に開放されたので、ここは森だと思っていたが、川の流れを見るに一応ゆるやかな山のようだ。


となると、とりあえず上流に進んで景色を見るのがいいだろう。


川に沿って下ると、崖とかに当たって立ち往生しやすいと聞く。とりあえず山の頂上を目指せば方向性も見当たるかもしれん。



「あー疲れた。水水、うまい」


多少疲れても、水を飲むと回復していく。自然の水ってすごいんだな。あまり空腹感もわかないし、希望が見えてきた。


「滝……、これはここまでか」


のぼりが急になってきたのでいやな予感はしていたが、20メートルはあろう崖の上から水が落ちてきて、川に水が流れている。


せっかくいい感じだったのに、行き止まりになってしまった。


「だが、幸運ではある。寝床は確保できそうだ」


滝の裏には洞窟らしきものがあるのが見受けられた。いわゆる裏見の滝というやつだ。


「失礼しまーす。とは言っても誰もいるわけがない……」


『グルルル?』


思いっきり何かいた。めちゃくちゃでかいワニみたいなのがいた。すごく目が合った。しかも3匹もいた。


「し、失礼しました~」


逃げた。とりあえず。ワニは水では早いだろうが、地上ではそこまで、って速い?


3匹のワニらしき生き物は4本足を動かして、普通に追いかけてきた。


「こ、これで終わりかよ……」


帰宅部の自分には速度も体力も足りない。足が動かず、もつれていく。


『ガァァァァ!』


「うぐっ! 痛い……」


足がもつれたのが幸いし、ワニらしき生物の攻撃は本来腕を引きちぎる狙いだったのが、外れてかする程度になった。


だがそれでも、その生物の牙が腕に当たり、出血をおこした。手首の近くが切れて、指から血が滴り落ちる。


『グ? グガァァァ?』


ところが、俺に止めをさそうと近づいてきた3匹が全員急にもだえはじめた。


「? な、なんだ?」


俺は何が起こったのか分からなかったが、相手が離れたことで一瞬で汗が噴出し、それを無意識に指でぬぐって飛ばす。


『ぐ、グァァ!?』


するとまた3匹がもだえ苦しむ。


「いったい何なんだ……、あ、そうか。これが俺の今の能力か」


すっかり忘れていた。俺の能力は神からもらった、とりあえず臭い能力。


今はセパレートランク2になっているはず、出血して指から血が流れたこと、汗を俺がぬぐったことで、指から飛んだ汗。ここから異臭が起こっているのだ。


町に拒絶されてから、生きるか死ぬかの問題を気にしてたから、うっかりしてた。だって自分じゃ臭いかどうかよく分からないんだもん。実験してもよく分からんかったし。


「しかし、こいつはこんなにやばいのか」


レベル1の場合は、異臭騒ぎ程度の問題で、周りの人間も軽く鼻を押さえる程度だった。


今の能力はランク3と同等の匂いのはずだが、自分で自分の匂いを確認できないので、度合いは分からないが、かなりやばいのは相手の動作を見れば分かる。ワキガと一緒で自分の匂いは自分ではわからないものなのだろう。ちなみに俺はワキガではない。


1匹はひっくり返り、1匹は木に頭を打ちつけ、1匹は何か口から出てしまっている。


「ちょうどいいや、実験に参加してもらおう」


俺は汗を右手の親指につけて、中指と親指をくっつけて指を鳴らしてみる。


パッチン!


『グガァァァ!?』


効果は抜群のようだ。


次に左手に血をつけて鳴らしてみる。


パッチン!


『グギャァァァァァ!?』


こちらのほうが強いようだ。もだえ苦しみ方がこっちのほうが激しい。ここら辺も後で説明書を読んでおこう。


「はっはっは、これならお前らは怖くない! 苦しめ苦しめ!」


俺は連続で両手で指パッチンを連発する。



「……、え~。倒せちゃうのか……」


数分ほど打ちまくっていたら、3匹とも絶命してしまった。


匂い自体に殺傷能力は無いのだが、1匹はのたうちまわっているうちに、近くにあった岩に頭をぶつけて死亡。

残りの2匹は、自らの嘔吐物と、異臭によって呼吸困難に陥り窒息死。


なぜ死んだかが分かるかというと、レベルが上がったからである。


『パッパラ~。ダイルを3匹倒しました! レベルが上がりました!』


というのが俺の頭に流れてきたからである。仕様がわからん。


『レベルが60になりました!』


「!? めちゃ上がってる?」


一気に59レベル上昇である。どんだけインフレしてんだ。


「バグか? 良く考えると俺レベル1だもんな。こいつらのレベルは分からんが、見た感じ、初心者が相手できる敵ではなさそうだし、かなりのレベル差を覆したから、経験地がめちゃくちゃ入ったのかもしれんし、本来レベル60にならないと覚えられない技をなぜか覚えてるから、その辺も関係してるのかもしれん」


ポケ〇ンとかでも一気にレベル上げできるもんな。顔出しだけして。


「とにかく、生き延びれて良かった。死んだらどうにもならんし」


この臭い能力もレベルが高いから助かったのだろう。レベル1は人が我慢できるレベルだから、押し切られたかもしれない。神に会ってなかったら死んでたな。


「さて、じゃああの洞窟をもらっとくか」


さきほどの滝のところまで戻り、洞窟に入る。


「割と狭いな。まぁ逆にそれなら3匹以上は多分いないんだろう。おっ、木の実がたくさんある」


洞窟の中には、あの3匹が食料にしていたであろう木の実があった。この辺にあった木に生っていたものだ。


「と、いうことは、これは一応毒はないってことかな? ちょっとだけ洗って試して見るか」


木の実を1つとって、水洗いを入念にして、一口かじってみる。


「お、うまい。マンゴー? いや、パイナップルっぽいかな? とにかくトロピカルっぽい」


また水のときと同じく、30分ほど待ってみたが、体に変調は無い。やはり大丈夫なようだ。


「この辺りの木は全部これが生ってるな。これで、食料、水、寝床の心配がなくなったし、襲われてもこの能力があれば勝てる! よし、この世界で生きれる目処が立った!」


しばらくは、この木の実と水でしのぎつつ、周りを探索して、情報を得ていけば、死ぬことは無いだろう。


あとは、他の誰かが魔王的な何かを倒してくれれば帰れるわけだし、安心できる。ああ、よかったよかった。


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