マイホーム
「よし、家を手に入れた。17歳にしてマイホーム!」
とまぁ俺が1人で叫んでいるのだが、別に妄言でもない。本当に家を手に入れてしまった。
さて、こうなった理由はいくつかある。
まず、俺が本当に暇でいたたまれなくなったこと。
でっぱり達の村は居心地がいいが、俺に何1つさせてもらえないので(何かした結果ろくなことにならなかった。話すのも嫌なくらいである)暇すぎたので自立の意味もこめて、刺激を求めての1人暮らしである。
また、急に100万リアという大金を手に入れたが、別に何か贅沢をしたいとは思わない。別に永住するわけでもないのに、貯金するのもちょっとおかしい。かといって、せっかくヒューリさんの好意なのに、全額寄付するのも、いまいちよくない。
と、いうわけで、このサンタマリアにお金を落として、流通をよくすればいいという結論にいたり、不動産屋さんらしきところに行って、この家を購入した。
とはいっても、でっぱり達とは普通に会いたいので、サンタマリアでもかなり郊外の山寄りに家を購入したら、3階建てくらいの大きな家なのに、破格……、いや、家の相場とか知らないけど、8万リアで家を手に入れてしまったのである。俺、30万リアくらい使うつもりだったんだけどな。
この相談を、ヒューリさんについしてしまったから、そこらへん割り引かれしたんじゃないかと、不安になった。
かなり郊外で、近所に家が少ないので、ヒューリさんも、これで来やすいな! と喜んでいた。あなたから来るんかい。
そして、何よりの理由は、サンタマリアに頻繁に顔を出すようになってから、噂を耳にしたからだ。
『召還されたヒトたちは、ライニングで、戦闘訓練を順調に続けているらしい、いずれ実戦にいけるだろう』
という噂をかなり聞いた。
カレンダーとかないし、日を数えるのもいつからか止めたから正確にはわからんが、体感でいうと、1、2ヶ月は経っていると思う。
それなのに、俺と一緒に召還された皆が、まだ実戦に出てないと聞いて、驚いた。
いや、別に文句を言いたいわけではない。俺はワニの魔物ダイル、そいつの大きいやつ、ドラゴン、泥魔とぶっつけ本番で戦ってるし、これ以外にも、ちょこちょこ自分の技チェックのために戦っているから、ちゃんと手順を踏んでるのがうらやましいだけ。
2ヶ月経って、その段階だとすると、実際に戦いに出て、魔王を倒すまでには、1年くらいかかってもおかしくはない。
となれば、サンタマリアでのんびりしながら、あのヒューリさんの政策でも見ているのが面白いかと思って、サンタマリアに住むことを決めた。
なんでも、18歳になったら、継承するらしく、その日は結構近いらしい。
ちょっとくらいなら手を貸してもいいかな。
「にゃ~、ふかふかにゃ~」
「くー、くー」
この3階建ての家に1人暮らしとか、俺はどこの甘やかされお坊ちゃまだよ! って思ったが、住み始めて1週間ほど経って、なぜか同居人が2人いる。でっぱりとわるものさんである。
はじめのころは、でっぱり達4人が全員遊びに来てはいた。
最上階からだと、周りにあまり家がないので、サンタマリアの町が割としっかりと見えて、ヒトとヒトガタが仲良くしている光景が見れるのが、興味深かったようだ。
その中でも、ヒトに対して興味の深い2人が、頻繁に来ていて、ほぼ通い状態になっていた。
「2人とも、家に戻らなくていいのか?」
「いいのにゃ~。村からも近いし、ここはヒトもヒトガタも優しいにゃ……。もっと早くサンタマリアに来ればよかったにゃ」
俺の同伴というしばりはあるものの、奴隷の首輪さえついていれば、まずこのサンタマリアではヒトデナシを疑われない。
なので、かなり舞い上がっていたのである。
「私はでっぱりさんが心配なだけぴょん。あなたのようなけだものと、2人でいたらどうなるか分からないぴょん」
「でっぱりに俺が何かするわけないじゃないですか」
「わ、私にするつもりだぴょん! 髪フェチロリスキーだぴょん」
「とは言っても、ヘアアクセサリーは毎日つけてくれてますし、髪形も毎日変えてくれてますね、ニヤニヤ」
「ア、アクセサリーに罪はないぴょん。せっかくつけるなら、毎日同じようにつけるより、ちゃんとこだわったほうが、いいぴょん」
わるものさんは、いつも文句を言いながら、俺のあげたアクセサリーを誰よりも頻繁に使っている。
ヘアアクセサリーという使いやすさはもちろんあるだろうが、髪型を、ポニー、サイド、ハーフアップ、サイドアップ、オールアップ、ゆるふわ、斜め前髪など、多種多様にしてくれて、めちゃくちゃ可愛い。そして、髪のことを褒めると、明らかにウサ耳がはねるので、機嫌がいいことが分かる、ちなみに俺は髪フェチである。あのサラサラヘアーをナデナデしたくて仕方ない。そんなことをした日にはどうなるか分からないから、もちろんやらないが。
「だが、わるものさんはヒト嫌いなはずだろ? ふろかがらくたさんに任せればいいじゃないか」
わるものさんがなんだかんだで俺のところにいてくれるのは、うれしいのだが、ついつい意地悪を言ってしまう。
「ふろさんとがらくたさんは、私達の中では1番仕事が多いぴょん。比較的暇な私達が来るのはそんなに変ではないぴょん」
明らかに拗ねてしまった。いかんいかん、言い過ぎたか。
「すいませんすいません。俺はこの世界のこと知りませんし、年長者のわるものさんがいてくれるのは、とてもうれしいです」
「ふん、愛らしい私が寝てる姿をいつも視姦できて喜んでいるんだぴょん」
あ、やばいばれてたのか。あまりにも可愛らしいから、たまに確かに眺めていた。
「……、どうして黙るんだぴょん……。まさか本当に見てるんだぴょん!?」
「すいません……」
めちゃくちゃ怒られるな。まぁ可愛らしいからいいけど。
「…………//」
ん?
顔が真っ赤になって、俯いてしまった。明らかに照れてるな……。
「ま、まさか本当に私を視姦していたなんて、げだものだぴょん! いったいタジマくんは私を妄想でどうしていたんだぴょん!」
「そ、そこまではしてません!」
「ある程度はしていたぴょん?」
あ、まずい、言えばいうほどだ。こういうのを墓穴を掘るって言うんだな。
「むー。ほどほどにするぴょん。そんな目を向けたら、私は寛容だから、いいけど、普通に考えたら犯罪だぴょん」
「え? 駄目って言わないんですか?」
「私は可愛らしいですから、タジマくんが目を向けてしまうのは仕方ないぴょん。それを無理に抑えたりしたら、襲われてしまうかもしれないぴょん。だから、ほどほどにしなさいと言ったぴょん。それくらい理解しなさいぴょん」
すごく遠まわしに毒を吐かれたが、要はこれ、多少視ててもいいってことだよな。
「何をにやにやしてるんだぴょん! やっぱり危険だぴょん!」
ちなみに、2週間くらい平和でダラダラ過ごしていたのだが、地味に家に来る率は、わるものさんが1番だった。