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いろいろ得てしまった

「こ、これはヒューリ様……、こんな危険なところに顔をおだしになられてはいけません」


「いいんだよ、サンタマリアの国民がピンチだったんだ。私の魔法なら、多少は泥魔にも効くし、住民の避難に役立つと思ってきたのだが……。君、名前は?」


「シュウジ……、タジマシュウジです」


「タジマ=シュウジ殿か。私は、サンタマリア帝国第一皇位継承者、ヒューリ=サンタマリアだ。サンタマリアの国民に代わってお礼をいう。」


右手を前にして俺に向かっておじぎをしてくる。偉い大物だ。第一皇位継承者ってことは、次のこの国のトップかよ。そんなヒトが、わざわざ国民のピンチだからってこんな最前線まで来たというのか。めちゃいい日とじゃん。


ここめちゃ臭い場所なのに、なんというかそれを感じさせない気品がある。でっぱりなんか口押さえたまま、涙目だし、ライオネルさんも声がうまく出せなくてこもってるのに。


「だが、君は目立ちたくないからお礼は受けてくれないようだね」


「はい、俺はただ自分のためにやっただけですから」


「となると、報奨金で礼を述べたいのだが、それも正式な手続きを踏んで、民衆の前で付与せねばならないから、それも嫌だろうね?」


「はい、本当にいいです」


「全く欲がないね……。だが、君のようなヒトがサンタマリアにいてくれることは、僕としてはありがたい。だから、こうしないかい? 君の右手に持っている泥魔の核を、僕に売ってくれるというのは?」


「これですか?」


俺は特に意識しないまま、倒した泥魔の核を持っていた。黒色の心臓みたいで、あまり触感はよくない。


「うん、泥魔はめったに出てこないし、暴れるのをやめると自然と核ごと消滅してしまう。勇者が倒しても、普通は剣とかでさしちゃうから、価値が低いんだ。君のように、手でつかんで、それだけしっかりとした形で手に入ることはまずないんだ。僕の魔法研究にも間違いなく生かせるし、僕が個人的に欲しい。それなら、僕と君の取引になるから、僕が君にお金を渡して終わりだ。これをお礼とさせてくれないかい?」


「はぁ、それでしたら」


「いい値を言ってくれ。それはとても貴重なものだから、糸目はつけない。もとより、君はこの国のピンチを救ってくれているから、いくらでも高いとは思わないよ」


さわやかヒューリさんが俺ににこやかな笑顔を向けてくる。


さて、いくらなら大丈夫なんだ。


この国の通貨の大体の額は分かった。だが、それがそのまま収入とかにつながるわけではない。もしかしたら、超インフレとかデフレとかしてたら、俺の思ってる金額より高いかもしれない。


今回は別に自分のためにやっただけし……、あ、そういえばでっぱりがネックレス欲しがってたな。それを、お世話になったふろやがらくたさん、わるものさんに買ってってあげよう。確かあのネックレスが600リアだったから、4倍で2400リア。これだともし俺の推定どおりだと日本円で24万円くらいか……。

何かこれくらいだと、低すぎると言われる可能性がありそうだな。

いくらでもって言ってるのに、あまりリアルな額はよくないな。帰って気を使われそう。

とは言っても、ヒューリさんはまだ若そうだしな……、100万円くらいなら、まぁいい感じかな。


「それじゃあ100万……」


あ、間違えた。日本円で計算してたから、間違ってしまった。いかんいかん。


「うん、それくらいが妥当だろう。よし、じゃあすぐに準備させよう『100万リア』を」


「へ?」


聞き違いか? 今このヒト、100万リアって言ったよな? 100万リアって、1億だぞ。いや、これが正しいか知らないけど。


「じゃあこれで取引成立だ。ついでにこれはおまけだよ。『リフレッシュ!』」


ヒューリさんがそう唱えると、俺の服装が綺麗になり、汚れも取れる。


「君は毒になってないみたいだけど、服が汚れたままじゃ周りのヒトが危ないからね。一応ね」


「それじゃあこのヒトやヒトガタも治せるんですか?」


「いいや……、僕はまだできない。泥魔の毒は空気感染こそしないが、1度体内に入ったら、助かることは無い」


「そうですか……」


だから、ヒューリさんはここに来れたのか。実際に体内に取り込まない限り毒にならないから、近くにいること事態は大丈夫なわけか。


「さぁ、ここから離れよう。君にお金を渡さないと」


「あのー俺の聞き違いというわけじゃないですよね? 額がえらい高かったんですけど?」


「うん? 大丈夫だと思うよ。私なら簡単に払える額だ」


やっぱ聞き違いか……。よかった。


「シュウジ……、すごいにゃん♪」


すると、でっぱりが俺の腕にくっついてくる。


「ど、どうしたでっぱり?」


「相手は有名なヒトにゃ。こうして近くにいにゃいと、疑われるかもにゃん」


「ああ、そういうこと」


びっくりした。そんなフラグは立ててないぞ。


「おや、これは可愛らしいヒトガタですね。君の連れかい?」


「ああ、はい。でっぱりっていう猫のヒトガタです」


「どうもですにゃん」


「それは奴隷の首輪か……、ということは、君達はサンタマリアの住人ではないんだね」


「そうですね」


「サンタマリア以外でもヒトとヒトガタの仲がいい場所はあるのだが、そのためには、どちらかが奴隷の扱いをしないと、住みにくいからな。ここでは奴隷制度などない……が。君はそのような扱いはしていないようだから、問題ないな。その信頼の寄せ方は、明らかに大事にされているようだ。待っててくれたまえ、でっぱりさん。私がここの皇帝になったら、もっとヒトとヒトガタが共存できて、ヒトデナシも普通に住める国にしてみせるからな」


「そ、それは本当ですかにゃん?」


そのヒューリさんの言葉に、でっぱりがかなり食いつく。


「ああ、もちろんだとも。父上は優秀だが、頭の固い部下に囲まれて、なかなか自分の政策が行えておらぬからな。父上が退任されるときには、その部下も一緒に退任させて、私が改革をする予定なのだ」


「……、それは実現可能なのですかにゃ?」


「やってみないと分からん。だが、やってみないと、そもそもできることもできない。元々私の先祖は、1度とは言え、この全土を統一して、一度は共存をさせたのだ。ならば不可能ではないはずだ」


すごいなこのヒト。見た目俺とそんなに変わらないのに、すごい考え方だ。


「おっとと、ついたようだね。ここは、私の魔法研究所だ。今回の報酬は私の個人資産から出させていただくから、ちょっと部屋で待っててくれ」


案内された部屋は、到底王族の部屋とは思えない、本と実験道具ばかりの部屋。ヒューリさんの研究熱心さがうかがえる。


「お待たせ」


そして俺の前におかれたのは、数え切れないほどの金貨である。


「これ……、何すか?」


「うん? 約束どおりの報酬だよ。100リア金貨が1万枚で100万リアだよ。さぁ、持っていってくれ」


「いや、これだけの金貨は持ち歩けないです……」


価値は分からんけど、金貨が1万枚もあれば、明らかに高額なのは分かった。


「なんと! これは失礼した。では、これも……」


すると、ヒューリさんは、小さな袋を取り出した。どう考えても金貨が20枚くらいしか入りそうに内容に見えるが。


「……ぶつぶつ……」


ところがヒューリさんが何かを唱えると、その1万枚の金貨は全てその袋に吸い込まれてしまう。


何だ、ドラ○もんの4次元ポケットか?」


「よし、じゃあシュウジくん。この袋に手を入れてくれ」


「あ、はい」


言われるがままに手を入れる。


『認証しました……』


何かしゃべったな。


「よし、これでOKだ。これで、この袋は君しか手を入れることはできなくなった。


「なんですかこれ?」


「これは、サンタマリアで作られているマジックアイテムの、金袋ゴールドキーパーというものだ。


今は改良を重ねて、50万枚まで金貨や銀貨が入る上に、使用者を覚えてくれるすぐれものさ。まだあまり実用化はされてないんだけどね」


「すごいじゃないですか」


「これを使うほど、全ての国民はお金があるわけじゃないからね……。ひどい場合はまずこの袋を買うお金もない……」


「ああ……」


「いつかこの袋を皆が使える国にしていきたいよ」


「そうですね、しかしヒューリ皇太子は……」


「ヒューリで構わない。君とはそこまで年は変わらないだろう。僕と同じ考えを持てる友人は大事にしたい」


「じゃあヒューリさんでいいですかね?」


「うむ、それでいい」


「ヒューリさんは、1億……、100万リアを簡単に出せるのが驚きでした。ここはそんなに裕福なんですか?」


「いや……、正直貧富の差はある。そこまでだ。税もかなり抑えているが、国民は多いから大変だ。私と私のおじが、魔法道具を開発して、それでかなり資産に余裕はある。それを自主的に国保や国民のためにあててはいるがね」


「すばらしいですね。そんなお金を俺がもらって大丈夫なんですか?」


「大丈夫だ。私の今後の政策を考えれば、国の発展を妨げる泥魔を倒してくれたことには、これくらいでも安いくらいだ。本当に感謝している。私は頻繁にここにいるから、またよければ会いに来てくれたまえ」




そんな感じで、ヒューリさんの家? から退出した。いいヒトだったな。


「す、すごいにゃ……、シュウジ一気にお金持ちにゃ……」


そういえば普通にもらっちゃったけど、仮に俺の計算があってるとすると、日本円にして1億円くらいもらっちゃってんだよな……。この国が恐ろしいほどインフレだとしても、多分大金であることには変わりない。


「と、とりあえず……、さっきのネックレス買ってやるよ」


「え? なんでにゃ?」


「だって、欲しかったんだろ? 別に俺今金があっても欲しいもんないし、でっぱりには世話になってるしな。そうだ。皆の分買っていってやろう。


最後まででっぱりは遠慮していたが、最終的に店で買い物をすることで、サンタマリアの流通が潤うという、偉い遠まわしな意見に納得してくれて、受け取ってくれた。


「ありがとにゃ。大切にするにゃ♪」


最後まで遠慮してたので、帰って迷惑かと思ったが、明らかに喜んでくれていたので、別に良かった。


ついでに、ふろにでっぱりと型違いのネックレス、がらくたさんにはブレスレット、わるものさんにはヘアアクセサリーをあげた。


最初遠慮された後に、皆笑顔で受けとってくれた。


ふろはでっぱりと仲がいいのでおそろい。がらくたさんは、ちょっとかっこいい系のブレスレット、わるものさんは、唯一かなり髪が長いので、髪をまとめられるヘアアクセサリーをあげた。名前をわすれたが、なんだっけ。ああいうのってクリップっていうんだっけ?


わるものさんには、髪フェチ野郎とかいろいろ言われたけど、なんだかんだ毎日つけてくれていた。

これは俺にもツンデレと分かった。

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